50 久方ぶりの聖女さん
刀時高校、1年生クラス。国の護衛に守られながら、私は教室へと歩いていく。
由美(ホントはこんな護衛なんていらないんだけど……)
【聖女】の称号を持つ私は、多分この学校で1番強いと言っても過言ではないだろうし……。
綺麗な教室に到着し、私は自分の席に座る。
対外的には、私は王族の養子として迎えられたことになっている。加えてかなりの美少女なので周囲からの視線を一気に集めているのだが、慣れたもんだ。
由美(暇だし、政明への愛の手紙を書こうかな)
政明の毛髪と血液で作った人形を触りながら、紙を取り出す。
その時、校門の方にホルダーの気配を感じた。
由美(反応は二人……誰?)
【巨人】と【女帝】が同時に来た……なんてことはないだろうし。
向こうも私の気配に気づいたのか、足を止める。しかし、予鈴のチャイムが鳴り響いたからか、片方の人間が少し警戒しながらも教室に入ってきた。
どうやらもう一人は別の教室らしい。
ショートの髪を靡かせ、元気な黒い瞳をした少女は恐る恐る私の席へと近づいてきた。
深玖「えっと……その、前の席失礼します」
由美「どうぞ。学友として、これからよろしくお願い致しします」
名簿を見れば、【日海 深玖】というらしい。私は【氷藤】なので席が近かったのだろう。
そのタイミングで担任の先生が来た。深玖さんは少しそわそわとしながらも、前を向くのだった。
深玖「あの~、すいません。この後時間って頂けるでしょうか」
オリエンテーションが終わり、昼休憩に入った時に深玖さんが話しかけてきた。
由美「そうですね、大丈夫ですよ。屋上で話しましょうか。もう一人も誘って」
マヴ友の【女帝】からもらったスペアキーを見せびらかしながら、私は席を立ちあがるのだった。
―――
深玖「――っていう感じです、なのでボクら別に全然敵意とかないんで、ここはお互い不干渉ということでいいですか?」
由美「いいよ、別に」
私があっさりと答えを出したのがおかしかったのか、深玖さんは隣の男、【染野 信矢】を見る。
だが、とうの信矢君は怪訝そうな顔を隠そうともしない。
信矢「随分と簡単に答えを出すな。貴様、低脳か敵の可能せ……」
深玖「オおぉぉぉーーい!?!??? すいません由美様、こいつちょっと日本語間違えちゃったみたいで、うん。すぐに黙らせるから!」
必死に口を覆い、冷や汗を流しながら深玖さんはペコペコする。
由美「大丈夫です、私、嘘が分かるんで」
結奈『そういえば、そんな称号があったね。確か【聖女】とか』
深玖「そうなんですか! よかったです」
何度も頭を下げながら、深玖はホッと安心する。
最悪、学校で戦闘になることも覚悟していたのだ。
由美「そんなかしこまらなくていいよ。国の方針で猫被ってるだけだし」
必死にシン君の頭を下げさせようとするボクを見かねてか、由美様は笑いながら許してくれる。
深玖「ありがとうございます由美様」
由美「人目がないときは由美でいいよ。私も深玖って呼ぶから」
菩薩のような笑顔を向けられ、深玖もようやく緊張が解ける。
信矢「どうだかな。俺たちには嘘を判断することはできん。警戒は続けさせてもらうぞ」
由美「別にいいよ。それより、なんか二人とも距離が近いよね。もしかして、恋人だったり――?」
深玖・信矢「「………………………」」
由美「……え、否定しないってことはつまり――」
私の能力で根掘り葉掘り聞かせてもらおうか。
信矢「もう時間だ。俺は行かせてもらう」
少し早足になりながら、信矢は屋上から去っていく。
由美「それで、彼とはどこまでいったんだい? ヤッた?」
逃がさないように、屋上の扉の前で立ち塞がりながら深玖に詰め寄る。
深玖は頬を赤らめながらも、こくりと頷く。
深玖「……っあ、でもちゃんと節度を持ってお付き合いさせてもらってるし。なんなら監視役みたいな人もいるし……」
由美(うんうん、隠したいことでも真偽が分かるんだよ。私の能力は)
由美「あんな堅物そうな奴を落とすなんてやるね深玖」
深玖「いや、なんというか。流れ……みたいな。と、とにかくもうすぐ時間だから教室行こ!」
ボクは無理やり由美を押しのけ教室へ行くのだった。




