48 【浮遊者】
湊「……とりあえず、話を整理しましょう」
部屋を移し、湊は3人を机に座らせる。
そして、紅茶を出してから話を切り出した。
湊「まず極さん。あなたが信矢君と実技試験を行い、彼は合格。実力を認めた」
極「はい」
湊「すると、【剣聖】の称号が彼に移り途方に暮れていた……と」
信矢「そうだ。なんとかしろジジイ。俺はこんな称号はいらん」
深玖「いや敬語! この人大分偉い人だよ!?」
紅茶をぐびぐびと飲みながら、信矢は話を進める。
湊さんは見るからに困った顔をし、考え込んでしまう。
湊「話は……分かりました。とりあえず信矢君、深玖さん、君らの処遇は後で考えるのでここでお待ちください。すぐに迎えの者が来ます」
信矢「そうだな……一つ答えろ。お前、動画で不審者役を演じたことはあるか?」
湊は少し目を見開き、じっと信矢を見つめる。
湊「……なるほど。極さんが認めるのも納得の人材ですね。ええ、あれは私ですよ。家内がどうしてもというのでね」
極「ち、ちょっと湊君!?」
年甲斐もなく顔を赤くしてしまう極に、湊は思わずにやけてしまう。
信矢「そうかよ、なら待ってやる」
湊「では、私はとりあえず待たせている受験者へ解散の説明をしてきます」
―――
深玖「ね、ねぇシン君。さっき認められたって言われてたけど……もしかして試験って……」
信矢「ああ、合格した」
なんでもないかのように鼻を鳴らすが、ボクは飛び切りの笑顔を作ってシン君に抱き着いた。
深玖「おめでとう! おめでとう、シン君!!」
信矢「離れろ、鬱陶しい」
極さんが微笑ましそうに見ている。
信矢「おい、いい加減に――ッ!
私とシン君が上を見たのはほとんど同時だった。
深玖「上に、なにかいる?」
結奈『位置的には上空だね』
由基人『つまり空を飛んでると……。あと、深玖そろそろあの男と離れてもいいんじゃないか?』
それは、少し上空を旋回したあと、部屋の窓から中に入ってきた。
入ってきたのは華奢な女性だった。20代後半くらいだろうか、絵里ねぇちゃんと同じくらいだ。
ゴーグルを首にかけロープを肩にかけながらしげしげと頭を下げてきた。
「……初めまして、深玖さま、信矢さま。私、エンド所属の【瀬戸 理香】と申します。湊様の命令でお二方を迎えに上がりました」
随分と抑揚のない声で理香さんは話す。
信矢「そうか、早くしろアマ」
深玖「だから敬語! ていうか、女性相手によくそんな口きけるね!?」
結奈『それより、深玖。あのロープを見て』
理香さんの肩にかかっているロープだろう。それは、私も気になっていた。
深玖 (あれってもしかして……)
由基人『宝具だな。日海家が管理してたもんじゃないが』
理香「では、今から空を飛びますのでお二人はこのロープを掴んでいてください。万が一離して墜落しますと、ホルダーでも骨の何本かは逝きますのでお気を付けください」
しれっととんでもないことを言い放つ理香だが、それよりも躊躇いなくそのロープを掴む信矢に開いた口が塞がらなくなる。
深玖(いや少しは躊躇おうよ)
極「信矢君、これを差し上げます。もともと称号を譲った人に送ろうと思っていたものです」
極は、試験で使っていた刃の潰れた刀を信矢に握らせる。
【深紅の刀】
効果 よく切れる。
専用効果 めっちゃ切れる。
極「とてもよく切れる刀ですが、効果をオフにすればなにも切れない剣にもなります」
信矢「いらな……むぐっ!?」
シン君が何かを言う前に、私は彼の口をふさぐ。
深玖「貰っておきなよ。それ、かなり貴重な奴だよ」
シン君は胡散臭そうな雰囲気を隠そうともしない。
だが、根負けしたのか、とりあえず刀を鞘に納め腰に提げた。
理香「では、向かいましょう」
理香さんが空中に浮かんだと同時に、ロープを掴むボクたちも足が地面から離れる。
窓を潜り抜け、気づけば道場の遥か上空にいた。
理香「およそ30分ほどで着きます。可能な限り鳥は撃ち落としますがバードストライクがないとは言い切れません。ご容赦ください」
あなたは【浮遊者】のホルダーになりました。
称号取得条件
宇宙へ行くこと。
特殊能力
空を自在に飛ぶことが可能になります。
専用宝具
丹のロープ




