47 佐藤夫妻
深玖(まさか、見学できないなんて……)
刀時高校の実技試験が行われている、高い石段を前に深玖はがっくりと肩を落とす。
結奈『フィクションだと、よく他人の実技を見学出来たりするんだけどね』
由基人『ま、試験管は国お抱えの指南役だからね。むやみに情報を漏洩するのは危険でしょ』
恐らく、教員ではなく軍隊であろう人たちが、石段にずらりと並んでおり侵入を許さないように見張っていた。
深玖(でも、頑張れば入れるんじゃ……)
結奈『もしバレたら、退学になるかもよ。せっかくテストの手ごたえも良かったんだから、ここで冒険はしない方がいいかな』
仕方がないので、シン君が戻ってくるまで近くのカフェで待とうと辺りを見回す。
その時、背後に猛烈な気配を感じた。
結奈『まさか、ホルダー!?』
深玖(えっと……、ホルダーってあの称号持ってる人たちのこと?)
由基人『深玖、とりあえず走れ! 50メートル以上離れれば――』
そう言い切る前に、その気配の人間は深玖の肩を力強く掴んだ。
湊「おやおや、お嬢さん。こんなところで一体何をしているんです?」
結奈『早いッ』
由基人『だけじゃない。こいつかなり強いな』
掴まれた肩の先に視線を送れば、そこには初老の老人がいた。白髭をたくわえ、腰には剣がさしてある。
深玖「えっと……友達が今試験を受けてて、その人を待ってるんです」
湊「ほう、試験ですか。それは、ここの道場の者がホルダーと知っていて、ここで待ち伏せをしているわけではないと?」
深玖は高速で首を縦に振るが、老人の疑いの目は晴れない。
湊「……まあ、審議はどうでもいいのですよ。ホルダーをこんなところでみすみす見逃すほど、私は甘くないのでね」
結奈『ユキ君!』
由基人『無理だ、……深玖が主導権を渡してくれない』
深玖はがっちりと両腕を掴まれ、たくさんの兵士に見られながら石段の上へと連行されるのだった。
―――
部屋中に「バシィーン!」という音が響き渡り、しばしの静寂が訪れる。
信矢(俺は知っている。面に一発入れたくらいじゃとても倒すことはできない。次なる反撃に備えて――)
もう一発くらい打ち込んでおこうと竹刀を振り上げるが、その前に極が両手をあげた。
極「私の負けだ。まったく、老体に遠慮なく攻撃しおって」
しわだらけの顔で笑顔を作りながら、極は立ち上がる。
しっかり顔面に攻撃したはずが、軽い痣ができた程度のダメージしかない。
極「受験番号278番、合格だ」
信矢「……俺はあんたを倒せてはいないが?」
極「それは試験内容に関係ないわ。私が認めた。それだけで、試験は合格だ」
そう言われ、俺は柄にもなく握りこぶしを掲げ、ガッツポーズを作ってしまう。
極「では、最初の部屋に戻――??」
極は、自分の体に起こる違和感にすぐに反応した。
極(【剣聖】の称号が、なくなっている。まさか――)
すぐさま信矢の方へと視線を向ける。
彼は、少しふらつきながら歩いていた。そして、壁に背を預けてから自分の頭を抑える。
信矢「なんだこれは……。【クラウンゲーム】? 【剣聖】?」
極(まさか、移ったのか!? 称号が彼に)
頭にたくさんの疑問符が浮かび、途方に暮れそうになる。
その時、道場の壁が破壊された。
そこには、世界で1番頼りになる夫が立っている。
湊「……なんですかね、この状況は?」




