46 【剣聖】
極「次、278番!」
信矢「失礼します!」
部屋の前で俺の番号が呼ばれ、部屋に入る。
そこは畳張りの部屋で30畳くらいだった。先ほどの部屋に比べれば随分と小さい。
極は部屋の中央で、先ほどの刀を持ったまま座していた。
極は、ゆっくりと俺を観察しながら口を開く。
極「最後の受験者だな。では、構えろ」
俺は竹刀を構える。それを受け、極はゆっくりと立ち上がる。
極「それでは――試験始めぇ!!」
その号令と共に俺は極の顔面に向けて竹刀を叩き込む。
だが、それは防がれた。あの動画で見た、親指で刀の鍔を少し押し上げ刀身で防御する技だ。
刃は潰してあるのか、竹刀が切れることはなかったが、極の反撃は早かった。
極「――ハアっ!」
神速の抜刀術で俺の首に刃を押し付ける。
だが、読んでいる。
半身になり、紙一重で避けつつ攻撃直後の極の右肩に竹刀を合わせる。
信矢(入った!)
だが、それは見事に空ぶった。そのでたらめなスピードによって極は回避したのだ。
まるで出会った当初の深玖と戦っているかのよう。今までの経験が覆るかのような、圧倒的身体能力の差。
信矢(問題ない)
こういった相手は先手を取らせると、攻撃が捌き切れなくなり押し敗ける。
つまり攻めるのみ。
奥へと回避した極にさらに追撃をかましにいくのだった。
極(上手いねこの子)
純粋な剣技の技量に極は感嘆していた。
右肩、腰、胸、関節――すべての急所をまるで舞のように無駄なく攻めてくる。
ここまでの逸材は数年前に戦ったタクト王子以来だろうか。まあ、彼はフィジカルで無理やり私と渡り合ってきたので少しニュアンスは違うのだが。
極(ここまでの猛攻、【剣聖】がなけりゃ確実にしのげなかったねぇ)
あなたは【剣聖】のホルダーになりました。
称号取得条件
剣聖に認められること。
特殊能力
歴代剣聖の技を使うことができます。
専用宝具
深紅の刀
どれだけ美しく、確実な攻撃であろうと、私の身体能力と目があれば後出しで避けるなど容易だ。
だが、そろそろ終わりにしよう。
極「二代目、連撃刺突」
目に見えないほどの速さで刺突を繰り出す、シンプルかつ確実な攻撃。
1秒で数十発の突きが信矢に迫る。
信矢(喉、両肩、心臓、目、脳幹――予測はできる)
信矢は竹刀を無駄なく動かし、全ての刺突を受け流し回避する。
極「化け物だねぇ」
信矢は動揺する極を見逃すことなく、追撃をかける。
全て刀を合わせられ、受け止められるが構わず攻め続ける。
信矢(攻め続けろ、それ以外に活路はない)
『すべて急所を狙え、相手に反撃の隙を与えるな』と由基人から教わっている。
極 (これは……まずいね)
どうにか反撃の糸を見出さなければ勝ちはない。
極は思い切り地面を蹴った。高さ5メートルはあろう道場の天井に飛び上がる。
信矢(高い……が落下地点を狙えば……)
そんな甘い考えを否定するかのように極は天井を思い切り蹴った。弾丸のように加速した彼女は信矢の頭を狙い刃を振るう。
だが避ける。信矢は予測していたのか素早く後退し直撃を免れる。
かに思えた、
極「三代目、燕返し」
上からの運動エネルギーなどなかったかのように、極は垂直に上へと、信矢の顎へと刃を振るう。
しかし、それも避ける。
信矢(腰と目線から追撃があると思ったぞ……)
だが、かなり無理な体勢で避けたため、大きく後ろに後退することになってしまった。
この距離はまずい。
すぐに追撃がかかると思い、構える。
しかし、極は追撃をしてこない。
代わりに彼女はその場で刀を振った。
信矢(……空ぶり? そんなわけがない!)
本能的に身をかがめる。その瞬間、位置エネルギーを保持した前髪が少し切れた。
極「初代、真空切り」
信矢「飛ぶ……斬撃?」
いくらなんでも盛りすぎではなかろうか。
極はそのまま刀を鞘に納め、俺に突進してくる。
かがんだこの状態ではあの抜刀術を受け流すのは不可能。
刹那、信矢は天啓が下りてきた。
信矢(そもそも、なんでババアは刀を鞘に納めた? わざわざそんなことしなくても最速で俺を潰せばいい話。……つまり、あの神速の抜刀術は刀を鞘に納めていないと十分な威力を出せない)
確かに普通の斬撃なら、この状態でもなんとか受け流せるがあれは無理。
あのババアにとっては、抜刀術で確実に俺を倒したいのだ。
信矢(もっと思い出せ! 抜刀術は早い。だが、それだけに予測もできる)
極「四代目、居合切り!」
信矢「………ッ!」
信矢はただ観察した。
極が刀を鞘から取り出し斬るという行為を。
するとどうだろう、今まで感じたことのない感覚に陥った。
時間が止まったかのように、極の刀がゆっくりと見える。
信矢は間合いをしっかりと意識し、すこしだけ体を逸らす。
極の刀は空を切る。
最小限の動きで回避行動をとった信矢の反撃は早かった。
一瞬のチャンスを見落とさず、信矢はかがんだ体勢を利用し、足の関節に竹刀を叩き込む。
深玖や由基人は確かに頑丈だが、それでも関節や眼球など脆い部分はあった。
極は試験開始後初めて膝をついた。
信矢「俺の、勝ちだ」
俺は極の顔面に思い切り竹刀を叩きつけたのだった。




