45 受験への初陣
絵里「が、頑張ってみっちゃん! とにかく落ち着いて、集中していって!」
二月中旬。
朝早く、家の玄関前で必死に笑顔を作る絵里ねぇちゃんだが、緊張の為か全然上手く作れていない。
絵里「これ、私が1年前から受験に受れるようにとっても思いを込めたお守りだから」
そう言って絵里ねぇちゃんは【学業成就】と刺繍されたお守りを渡してくれる。
始発に乗らないと間に合わないので、辺りはまだ暗い。だが、その4文字はそんな中でもよく見えた。
深玖「ありがとう! じゃあ、行ってきます!」
笑顔で手を振りながら、家を離れ駅へと向かう。
電車を待つ中、「カコォーン」という音が聞こえた。一度聞いただけで分かる。これはシン君のものだ。
だがおかしい、彼が鍛錬を始めるのは朝の5時からだ。今は4時40分、少し早い。
心なしか、いつもよりも力強く聞こえる。まるで大丈夫だとでも言うかのように。
由基人『はぁ……、あの野郎。鍛錬する暇があんなら見送りにくらい来いよ』
深玖(違うよお父さん。……これがシン君だからね)
どこまでもストイックに自分を追い込む。逆に鍛錬をサボって、駅まで見送りに来たらそっちの方が心配になるだろう。
深玖「先に行ってきます」
山の方を向いて小さく呟く。
心強い仲間からの鼓舞を受け、私は電車に乗り込むのだった。
―――
翌日
信矢 (……ここか)
事前に下調べした紙を頼りに、俺は電車を降りる。
レリウス国、推薦試験会場の最寄り駅に着いたのだ。
少し歩けば、3000段はあろうかという巨大な山がそびえていた。都会にも田舎はあるのかと、感心しながら登る。
信矢「1段1段が大きくて急だな」
会場に着くまでにかなりの体力を消耗してしまうだろう。
毎日山登りをしている俺からすればなんでもないが、戦いばかりを想定していた他の受験者には少し辛いか。
そして、10分ほどで登り切った俺は案内に従い、更衣室で着替え、広い畳の上で待たされる。
……というかここは、
信矢(あの動画を撮ったところか)
ということは、あの壁は障子があったところか。試験用にいくつか改築をしたのだろう。
まあ、だからなんだという話だ。座禅を組み、静かに深呼吸する。
そして、受験者によって部屋の半分ほどが埋まったところで、試験管【佐藤 極】が現れた。
老いを感じさせない堂々とした態度。長い髪は真っ白に染まってはいるが、肉体にはエネルギーが満ち溢れており、一目で強いと感じさせる。
手には鞘に収まった刀を持っていた。黒い剣道着を着た彼女は鋭い声で発声する。
極「よく来たな諸君。これより、刀時高校、推薦試験を始める!」
ピリッと空気が凍る。この場にいる100人全員が本能的に察する。自分以外、確実に敵なのだと。
極「試験内容はシンプルだ。これから私に呼ばれた受験番号の者は隣の道場へ行き、一人ずつ私と戦ってもらう。公平を期すため、中には呼ばれたもの以外は入ることも見ることも禁ずる。
では、1番の者私と来なさい」
大人と見まがうかのような巨漢の受験生が、大きな返事をして道場へと消える。
そして数分後、壁に激突した音が響き次の受験番号の者が呼ばれた。
信矢(時間にして、およそ10秒……)
いや、人によってはもっとかかっているので一概に判断はできないが、かなり早くに決着がついている。
呼ばれるまで少しの時間があったので、軽く運動をして体を温めながら俺はその時を待つのだった。




