42 二世の出会い
深玖「なんなのあいつ!?」
家の自室に入ったと同時に、そんな愚痴が思わず出てしまう。
深玖「ボク、一応君に勝ったよね。え、見間違いだった?」
とりあえず落ち着くために勉強机に座り、考えを巡らせる。
結局、あのまま流れで少しだけなら稽古に付き合ってあげると約束してしまったが、今更ながらに後悔し始めている。
そもそも、あんなところで稽古する意味も分かんない。家の庭でいいじゃん。
まあ、受験のストレス発散のため、たまに行ってボコして帰るのも悪くないかもしれない。
深玖(……………そういえば、男の子についてここまで真剣に考えたのは久しぶりだな)
生まれてこのかた、あまり男子と接点のなかったボクは少しだけ感慨深い気持ちになる。
??『ダメだろ!? あんなん言ってたら完全にフラグ立っちゃてるじゃん!』
結奈『ちょ、ちょっと落ち着いて! というか静かにして、今、交信状態がオンになってるから』
深玖「……え?」
今、なんかボクの頭の中に変な声が聞こえたんだけど……え、怖い。
深玖「あ、あのー……誰かいるんですか?」
おそるおそる聞いてみるが、誰からも返事はない。ただ、部屋の中に声が響くだけだ。
ぶわっと嫌な汗が出てくる。
深玖(な、なに今の!? もしかして幻聴?)
いそいでスマホを取り出し、似たような症状を検索する。
深玖(えっと……PTSD 、統合失調症、認知症にアルコール依存症?!)
他にも多重人格や薬物依存など、様々な症例が検索に引っかかる。
深玖(ど、どうしよう。大事な受験期に……)
治療にもなったら少なからず絵里ねぇちゃんにも迷惑がかかってしまう。
深玖(なんとか原因と治療法を……)
原因と聞いて、私はふと【クラウンゲーム】について考えてしまう。
あなたは【巫女】のホルダーになりました。
称号取得条件
巫女の血縁者かつ女性であること。
特殊能力
条件を満たした故人を憑依させることができます。
専用宝具
深緑の錠剤
深玖 (いやでもまさかそんなわけ……)
物心ついたあたりから絶えず脳内に表示されていた情報を引っ張り出す。
今まで、あえて見ないようにしてきたこれだが、もうそろそろ向き合う時期なのかもしれない。
深玖(故人の憑依……こんな感じ?)
試しに手を合わせて祈ってみる。
気づいたら、暗闇にいた。
なにも感じない闇で、二人の会話が聞こえる。
??「いやだからホントに悪かったって」
結奈「反省してないからいってるんだよ! 今までも勝手に出て行ってやんちゃするし、深玖は乗り物じゃないんだよ!」
深玖「あのー、すいません。えっと二人はどなたですか?」
そこには1組の男女がいた。
一人は、大学生くらいの女性。短いショートの黒髪に、中世的な顔立ち。スラっと伸びた足は同性の私でも見とれてしまいそうで、かなりスタイルがよかった。
男性の方も同年代くらいだろう。随分とアクティブに躊躇いなく土下座をしている。はっと目を奪われそうなほど綺麗な瞳を持ち、随分と背丈が高い。
結奈「えっ? ちょ、なんでここに深玖が。ユキ君が声出すからー」
由基人「いやお前も出してただろ」
私は二人の顔や雰囲気をまじまじと見る。そして、なんとなく気づいた。
深玖「あの! ……二人はボクの、お母さんとお父さんですか?」
結奈・由基人「「……そうです」」
―――
結奈「つまりね、【巫女】が憑依させられる人っていうのは生きてる本人と強い縁がある人だけ。血の繋がりとかね」
深玖「へ、へぇー」
なぜか暗闇の中にちゃぶ台とお菓子が出現し、それらを食べながら母は話を続ける。
由基人「……はい、そうです。たまに勝手に外に出たり、脳内で喋ったりとかしてたのは全部俺のせいです」
父は涙目になりながらボクに謝罪してくる。
深玖「べ、別にいいよ。おかげで二人に会えたし」
結奈「いーや駄目だよみっちゃん。ユキ君は調子に乗りやすいからね、ガツンと言ってやらないと」
由基人「十分ねちねち言われたんだけど」
結奈「中学卒業して、落ち着いたら告白するって話だったよね? なんでこんな大事な時期に娘と話してるの?」
怖い笑顔を湛えながら母は父を見る。
由基人「それはマジでごめんなさい」
深玖「だ、大丈夫ですよ! ボクは二人と話せて嬉しいですし」
結奈「もーう、すっごい良い子」
母は私を抱きしめながら(といっても実際には触れられないのだが)笑顔をこぼす。
深玖「それより、聞かせてほしいんです。二人はどうしてここいるんですか? 絵里ねぇちゃんが言ってた、事故死っていうのは本当なんですか?」
母はしばし逡巡したのちに、口を開く。
結奈「それは言えないかな。いったら【クラウンゲーム】のことも話さなきゃいけなくなっちゃうし」
由基人「知らない方が身のためってこともある。俺たちの願いは深玖が幸せに生きてくれることだ」
二人とも、会ってから1番の真剣な表情で私に告げる。
深玖「ボクはどうしても知りたいの!」
由基人「……そうさなー」
結奈「じゃあ、アキ君に会えたら教えてあげよう!」
深玖「?? 誰?」
困惑する父をよそに、母は言葉を続ける。
結奈「ボクが信頼するホルダーだよ。確か、みっちゃんと同い年くらいだったかな。あの子を見つけられたら、教えてあげるよ」
由基人「いやそーとうキビぃだろ。話を聞いた限り、頭もよくて隠密系の称号だろ?」
結奈「だからこそだよ。彼を見つけられたら、みっちゃんもクラウンゲームで生き残れるくらい強くなったってことだからね」




