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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
剣聖編
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41 二世の力


信矢「……なんの真似だクソアマ」


深玖「なんだ、女の子相手に照れて喋れなかったわけじゃないんだ。…………アマ!?」


 衝撃的な口の悪さに、思わずツッコミをしてしまうがとりあえず手を放す。


 改めて彼の体をよく見てみる。鍛え抜かれた肉体に、鋭い眼光。手には無数のマメができており、努力の跡が垣間見える。


深玖「改めて初めまして。ボクは【日海 深玖】。北羊中学3年だよ」


信矢「そうか、初めまして。とっとと手を放せ」


深玖「そういうなら、無理やりどければいいんじゃない?」


 信矢は手をどかそうと木刀に力を入れる。だが、動かない。まるで万力で固定されているかのようにピクリとも。


深玖「どうしたの? 体調でも悪い?」


 片手で信矢の木刀を抑える深玖は、勝ち誇った顔を作る。


信矢「なめんな」


 信矢は木刀から手を放し、深玖に向かってためらいもなく拳を振るう。見事に脇腹に入ったはずだが、彼女は微動だにしない。


信矢「……なッ!?」


深玖「あれ? 蚊でも止まってたかな」


信矢「お前、何もんだよ」


深玖「だから言ってるでしょ。ボクは【日海 深玖】。ただの中学生だよ」


 ようやく話を聞いてくれそうだったので、ボクは彼の木刀から手を放す。


信矢「チっ……! 俺は【染野 信矢】だ」


 うんうんと頷きながら、とりあえず日陰に入る。


深玖「知ってるよ。確か、中1の時に表彰されてたよね」


信矢「そん時だけな。今じゃ部員が少なすぎて大会にすら出れてねぇ。ってか、お前は何なんだよ」


 ボクは少しだけ答えに迷ってから、近くの木の棒を拾ってから信矢に向かって構える。


深玖「君――いやシン君相手なら、こっちの方が分かりやすいでしょ」


 理解を得たのか、シン君は木刀を構えて私に向き合う。


 対面しただけで分かる。彼の強さや努力の歴史が。【巫女】? の称号がなければボクなど手も足もでない。


深玖「君から来なよ」


 シン君の初動は早かった。静かで美しいすり足と共に私の顔面に向かってなんのためらいもなく木刀が振り下ろされる。私は余裕をもって回避し、それと同時にシン君の手の甲に木の枝を軽く叩きつける。


深玖「一本だね」


 シン君は一度距離を取ってから、再度私に突撃する。今度は突きだ。的確に迅速に確実に私の喉を潰す一撃。


 ボクはそれを受け入れた。


 強烈な刺突が喉に直撃する。


 少し呼吸がしぬくくなったが、ダメージはほぼ0だ。そして、攻撃直後の無防備なシン君の顔面に木の枝をぺしりとぶつける。


深玖「ごめんねぇ。これでボクの勝ちだよ」


 シン君は大きく後ろに後退して、冷静に言葉を発する。


信矢「……動きも技も全てが素人。強いのはただのフィジカルだけ。子供が銃もってるみたいだ」


 まあ、特に間違っているわけでもない。ボクはただ体が強いだけ。そこに信念や技や歴史はどこにもない。


 彼は驚愕の表情を浮かべるが、次の瞬間には軽く笑みをこぼした。


深玖「……なんで笑ってるの?」


信矢「気にするな。ただ、俺の目標とする人と境遇が似てただけだ」


深玖「どういうこと?」


 質問を受け、シン君はタブレットを取り出し一つの動画を見せる。



 それは、白髪の混じった老女が刀を鞘に納めたまま正座をしている動画だった。


 なにもないだだっ広い畳の部屋で微動だにしない。


 静かに座っているかと思えば、次の瞬間にバットを持った覆面の不審者が障子を破壊しながら現れた。


 そいつは近くにいる老女に向けて、躊躇いなくバットを振り下ろす。


 咄嗟に危ないと心臓が跳ね上がる。


 それに対し彼女は、片手に持った刀の鞘から、親指で少しだけ刀身を出しバットを受け止める。


 そして神速の抜刀術で不審者の後頭部を鞘でぶっ叩いた。


 そして最後に、笑顔でピースサインをするところで動画が終わった。



深玖「確かに強そうだね。この人を尊敬するのも分か――」


信矢「いや、このクソババアには微塵も興味がない」


深玖「バッ……バ!?」


 いや、口が悪いにもほどがなかろうか。


信矢「大事なのはこっちの不審者だ。見ろ、障子を破壊して襲い掛かるまで一切無駄な動きがない。このババアに倒されるための洗練された動きがある。それに手加減も上手い」


 ……何度見ても、ただ無様にやられてるだけの犯罪者にしか見えないのだが。


信矢「……まあ、細かい話はどうでもいい。おい女、お前明日もここに来い。俺が気絶するまで稽古の相手になれ」


 何様のつもりだコラ。


 思わず出かかりそうになる言葉を必死に押しとどめる。


深玖「悪いけど、家の手伝いがあるから無理かな。それよりも、大人の人や先生と稽古すればいいんじゃない?」


信矢「そいつらとはもうやってる。全員、手ごたえがなさ過ぎるからここで鍛錬してんだよ。今の時代、電子端末1個あればどこでも達人の技を学べる。だが、相手だけは自分で調達しなきゃならない。そんくらい分かれ無能」


深玖(おいおいおい、試合に勝ったのボクですよ? なのになんでそんな上から目線で命令されなきゃいけないだよ!?)


 こめかみがプルプルと震えるが、なんとか笑顔を取り繕う。


深玖「ね、ねえシン君。君、もう少し丁寧な言葉遣いをしたらどうなの? ほら、剣道って礼儀で始まって礼儀で終わる……みたいな感じでしょ」


 シン君は、「何を言ってんだこいつ」みたいな渋い顔を作る。



信矢「なぜ俺が自分よりも弱い奴にペコペコしなきゃならん」


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