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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
剣聖編
40/112

40 二世


 物心ついたときから、ボク、【日海(ヒウミ) 深玖(ミク)】には両親がいなかった。


 事情を知っているらしい叔母は二人とも交通事故で死んだといっているが、詳しいことはなにも教えてくれない。


 二人の顔も今じゃ朧気にしか思い出せない。


深玖(じゃあお母さん、お父さん行ってきます)


 家の仏壇の前で手を合わせてから、ボクは学校のバッグを持って玄関へと向かう。


叔母「じゃあみっちゃん、テスト頑張ってね!」


深玖「うん!」


 ボクは元気に返事をしながら、寺を後にする。ボクはここに養子として引き取られているので、ここはもう我が家みたいなものだ。

 今日もいつも通り中学校へと通学する。


 今年で3年生になるので、受験勉強は大変だ。


 海風が靡く小さな町だが人口は多く、ボクの通う【北羊中学】には1学年に200人ほどいる。



深玖「おはよー!」


「おっはー、深玖。どう? テスト勉強してきた?」


深玖「そう聞いて、昨日の夜徹夜しようと思ったんだけど気づいたら寝ちゃってて起きたら朝になってた」


「やっばー。まあ私も全然勉強してないんだけど」


 友人と噓の報告会をしながら教科書を開く。今日で1学期期末テストは終わりだ。科目は数学と理科と美術……まあなんとかなる。



――



教師「試験終了だ。問題用紙を集める」


深玖(ふぅ……まあまあの出来かな)


 たぶん全教科8割くらいあるだろう。これなら目標の高校も目指せる。


「いやー終わったねー」


深玖「うん、お疲れ~」


「じゃ、私この後彼氏とデートだから。深玖はどうすんの?」


深玖「え~、ボクはとりあえず寝るかな。眠いし」


「オッケー、じゃまた学校で!」


 嵐のように去っていった友人を見送り、ボクも身支度を整える。



深玖(とりあえず帰ったら、境内の掃除と帳簿の見直し……時間があればホームページの更新もしとかないと)


 眠い目をこすりながら帰路を辿る。ボクの家はさっきも述べた通り神社だ。当然、参拝客や観光の人が来る。それを独身の叔母に全てを任せるなど出来ない。


 叔母はまだ若いのにボクのせいで昔から遊ぶこともできず、ずっと働きづめだったのだ。今年で28、結婚適齢期を過ぎようとしている。


深玖(ボクが支えていかないと……)


 強い使命感に燃えながら玄関の戸を開ける。


深玖「ただいまー」


「おかえりなさいー。テストお疲れ様! 今日くらいゆっくり休んでね」


 叔母さん――いや【日海 絵里(エリ)】さんはおみくじの札やお守りを作っていた。神様にお祈りをして特別な力が宿るようする、大切な儀式だ。


深玖「大丈夫だよ。それより、境内の掃除してくるね」


 制服姿のまま、箒を手にする。


絵里「ごめんね。みっちゃんも遊びたいでしょ」


深玖「だから大丈夫だって。それに、少しは絵里ねぇちゃんの力になりたいし」


 もう~、と顔を赤くしながら叔母は笑顔になる。


絵里「じゃあ、ちょっと頼み事いい?」


深玖「やるやる! 何すればいい?」


絵里「もうすぐ夏祭りがあるでしょ。その時、【立花の丘】で屋台を出すから、小屋の中にある屋台や神輿の状態を確認しておいてくれる?」


深玖「任せて!」


 威勢よく返事を返し、ボクは森の方へと歩みを進める。いや、というより飛んでいく、というのが正しい表現だろう。


 外に出て手ごろな電柱を発見し、ボクは思い切り飛び上がる。10メートルほど垂直に飛び、電柱の頂上に立つと、そのままいくつかの屋根を飛び越えて森へと向かう。


深玖(なんかよく分かんないけど、昔から運動神経いいんだよねボク)


 なんか【巫女】とか【クラウンゲーム】とか脳内に表示されているが、どれも興味はない。


 この力が家族の役に立つのが1番の幸福だ。



 車で1時間の森にわずか10分でついた私は、小屋の鍵を確認しながら小屋のドアノブに手をかける。


 その時、私の超人的な耳に「カコォーン」という音が聞こえた。誰かが木を叩いているのか断続的に聞こえる。


深玖(こんな時間に……誰?)


 今は昼時なので社会人ではないだろうし――木こりの方かな? 珍しい。


 深玖は手早く小屋の確認を終え、音の方へと向かう。


 その人は、森の頂上で木刀を振っていた。近くに立つ木々に向かって一心不乱に木刀を打ち付けている。いわゆる打ち込み稽古、というやつだろうか。


 興味本位でさらに近づく。


深玖(あれは――ボクの中学の制服だ。というか、どっかで見たことがあるような……)


 もっと前へ行こうとした時、不意に彼がこちらを見た。


 数秒、目が合う。



深玖「………………」


「………………」



 彼は何事もなかったように木刀を振りなおし始める。


深玖「……え、無視?」


 自分で言うのもなんだが、私はこれでも美少女に入るタイプだと思う。告白されたことも何回かあるし、絵里ねぇちゃんからも「将来はベッピンさんだね」と言われている。


 そもそも、人と会ったら挨拶をするのがマナーではなかろうか。


 ちょっとむかつくので、ボクは堂々と彼に近づく。だが、彼は一心不乱に木刀を振るだけだ。


 近くに置かれたカバンを確認すると、名前は【染野(ソメノ) 信矢(シンヤ)】というらしい。同い年だった。


 ちょっと記憶を掘り返してみる。


深玖(……ああ! 確か一年の時に、全国中学校大会の剣道部門で入賞して表彰してもらってた人だ。うちの高校は体育系はめっぽうで珍しいから覚えてた)


深玖「こんにちわー」


信矢「………………」


 まるでこちらが見えていないかのように、木刀を振り続ける。


深玖「…………あのー、うちの中学で表彰されてた人ですよね?」


信矢「………………」


深玖「……あっ。ボク、同学年の【日海 深玖】って言います。


信矢「………………」


深玖「えっと……期末テスト難しかったね~」


 若干木刀の速度が落ちたが、やはり何事もなかったように彼は木刀を振る。



深玖「………………」



 気づいたらボクは信矢君の木刀を素手で掴んでいた。


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