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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
適応者編
33/112

33 【純白の杯】


 あれは1年くらい前だったろうか。まだ、私が1人で事務所を経営していて、偶然ホルダーになったとき、【巨人(ジャイアント)】、小島 鉄郎に出会ったのは。


 その時は、単純な勧誘と褒賞の交渉だった。しかし、それが徐々にエスカレートし最終的にはレリウス国の端に追い込まれるまでになったのだ。まあ、そのおかげで今の私があるわけだが……。


 そんな経験があって、私の小島への評価は最低といえるだろう。




小島「おやおや、これは珍しい組み合わせですね。どうして【解析者(アナリスト)】がこちらにいらっしゃるのですかね。しかも、背中におぶっているのは――」


由美「政明!! 酷いけがしてる」


 小島の声を切ったのは【聖女】の由美だ。彼女はサイのもとへすぐに向かうと政明の容態を確認する。


由美「なんでこんな怪我を……。あなたがやったの?」


 ひどく低い声でサイを睨む由美。


サイ「まさか、アタシじゃない。それより、早くこいつを病院に連れていかねぇと」


 とにかく目の前の二人には敵意はない。それだけ分かれば十分だ。なんでここにいるのか、1人も護衛をつけず森の中にいたのか、考えるのは後でいい。


由美「そっか。大丈夫、ちゃんと宝具を持ってきたから!」


 由美はそういうと、小島に『出せ』と言わんばかりに手を差し出す。


小島「申し訳ありませんが、私の一存で宝具の使用許可はでません。まずは国王様に連絡を―――」


由美「そんなことして政明が死んじゃったらどうするの!!」


 小島は少し考え込んでから、私に向き合う。


小島「今、この場で1番強いのは私です。サイ殿、私はその少年を治療できる宝具を持っています。どうでしょう、少年をたすける代わりに我々の軍に来ませんか? もちろん、手厚く歓迎いたします」


サイ「ホントに助けられんだろうな?」


由美「本当です!! 信じてください!」


サイ「なら頼む!」


 気絶している政明を丁寧に降ろし地面に寝かせる。


小島「取引成立ですね。では、こちらの宝具を」


 小島が懐から取り出したのは真っ白な杯だった。


 解析者の力を使い、宝具を解析する。


 

純白の杯(ホワイトグラス)

効果 対象者の怪我、病気を瞬時に完治。

専用効果 宝具の再使用時間(リキャストタイム)の短縮。



 今の所有者は小島なのだろう。彼は、ナイフを取り出し腕に傷をつけ、血液を杯に入れた。そしてしばらく中身を回すとそれを政明にかけ始める。


サイ(赤黒い血が、純白に変色した?)


 白い液体が政明に向けて注がれる。


 すると、先ほどまで全身に広がっていた火傷が、かかった部分から徐々に治っていく。数分もすれば、政明に体からは傷が完全に消えていた。


 浅い呼吸から深く安堵したような息遣いを聞き、ようやくサイは緊張から解き放たれた。


由美「よかった~」


 由美は地面に寝かされた政明に抱き着き頬擦りをする。政明の顔が少し曇った。


小島「では約束通り、我々と来てもらいますよ。今、迎えの者を呼びましたので、少々お待ちください」


サイ「あんたはどこにいくんだい?」


 私たちを置いて、小島は森の奥へと歩みを進める。


小島「もともと、我々が来た理由は村の火事があったと通報があったからです。【聖女】を引き抜いたあと、村の近くに監視の者をつけていました。その者から不自然に火の回りが早い火事が起こったと報告を受け急ぎ駆け付け、今に至ります。由美殿がいるのは犯人を捕まえた際に都合がいいからです」


サイ「……ハッ! まるでホルダーの仕業であることを確信してるような行動だな」


 つい最近まで遠征に出ていた小島がここまで早く来るのは異常なことだ。それに、国のVIPである【聖女】を単身で連れ出すのも違和感が残る。


 まるで、ホルダーがいることを確信していて、そのために少数精鋭で迅速に来たかのようだ。


小島「詮索は遠慮願います。では由美殿、私は村の方を見てくるのであなたはその少年と帰ってください」


由美「…………?? なんで、私も行く! お母さんとお父さんにも会いたいし」


 サイは少し息が乱れた。だが、悟らせまいと平静を装う。


小島「……いえ、正直に言って足手まといです。まだ、どこかに敵が潜伏している可能性もありますし、そうでなくても由美殿の歩幅に合わせるのは面倒です」


 由美は食い下がろうとしたが、そのタイミングで迎えの車が到着した。


小島「ちょうどいいですね。では先にお戻りください」


 運転手と少し話した後、小島は森の奥へと消えていく。


 こうして私たちは激動の一夜を終えたのだった。


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