32 【虹のルーレット】
すでに満身創痍の政明では長時間戦闘は不可能。ゆえに、彼はすぐに理子へと接近する。
理子「おもしろい宝具っすねー。でも、避けられるっすか?」
燃えるロープが何本も政明に迫る。それを彼は走りながら避けていく。身体能力が格段に向上しているのだ。
そして簡単に理子の懐に潜り込んだ。
深く鋭い拳が理子のみぞおちに入る。
うめき声を上げながら吹っ飛ぶ理子は、ロープを蜘蛛の巣状にしトランポリンの要領で衝撃を殺した。
理子「痛いっすね」
生け捕りは諦め、理子はロープを鞭のようにしならせる。
ヒュンヒュンと空気を切り裂く鞭が何本も展開され、音だけで人を威嚇してしまいそうだ。
そして音速を超えるロープが政明に迫った。
彼は動かず矢を放って鞭を打ち抜く。だが、いくつかは取り逃がしそれが体に当たった。
痛みをこらえる声がわずかに聞こえる。
理子は間髪入れずに鞭を振るうが、政明はすぐに距離を取る。
理子(炎に囲まれた森であっても、今の姿なら逃げられちゃうっすね)
それでもいいかもと、少し慢心をしていると天から矢の雨が降り注いできた。
理子(矢の雨……こんなに大量の矢は持っていなかった……。宝具の影響っすかね)
いくつかは刺さってしまったが、とりあえず移動する。
理子(いい腕してるっすね。それとも、宝具の効果っすか?)
手ごろな木材を手で持ち、傘の代わりに使う。あちらの使ってくる弓は宝具の一部と考えていいだろう。矢切れは期待できない。
すでに50メートルよりも外にいるとは考えないが、奴の能力のせいで奴の場所が不明だ。仕方がないので、【丹のロープ】をオートに再設定する。これで私を守ってくれるはずだ。
政明「ようやく、オートに切り替えたな」
木々の奥から声が聞こえてきた。無数のロープは政明に向け伸びていく。
政明「【解析者】で見れば、その宝具はロープを伸ばすほど制御が落ちて、動きが鈍る。つまり、今みたいなオートなら、勝手に伸びる分、動作性能が落ちる」
[フィニッシュアタック ラァストボゥ!]
俺は、ベルトに入っていた【解析者】のビー玉を取り出し、弓幹の部分にはめ込む。
政明(これでいいんだな?)
サイ(完璧だ)
弦をはじき、矢が吸い込まれるように理子の胸元に当たる。理子はロープを重ね威力を殺すが、それでも気絶させるには十分な威力だ。
理子が地面に倒れたのを確認し、政明はルーレットのビー玉を外す。それに伴って弓が消えた。
政明「ようやく終わったか。おい、こいつはどうする? 殺してねぇんだろ」
サイ「ああ。すまんな、こいつお前の仇だろうに」
おなじく変身の解けたサイは理子の容態を見つつ謝罪する。
政明「…………気にすんな。お前が来なきゃ俺は死んでんだ」
政明は全身の火傷のせいか、地面に座り込み浅い呼吸を繰り返す。
私は救急車を呼びつつ、サイに外傷がないことを確認すると、宝具を取り上げようと【丹のロープ】に触れる。その瞬間ロープがひとりでに動いた。
サイ「なッ!? まさか気絶しても宝具は動くのかよ」
すでに満身創痍の二人ではロープを抑えつつ拘束するのは至難だ。ひとまず、距離を取ろうとサイは後ろに引くが、そこである違和感に気づいた。
サイ(なんだ? 1本だけ細いロープが腕に巻き付いてんな)
そのロープは森の闇の方へと伸びており、火事の逆光でその先まで確認することはできない。
政明「!? おい! ロープが首に巻き付いたぞ!」
政明に言われ、すぐに首を見れば【丹のロープ】が持ち主の理子の首を締め上げていた。
いや、絞めるどころか首を千切りそうな勢いだ。
なんとか助けようと近づいた時、理子の首から嫌な音が響く。ホルダーの気配が消え、死んだことを告げられた。
サイ「……な……んで。宝具にこんな能力はないはず……」
呆然としていると、【丹のロープ】がひとりでに動き出し、理子の死体を丁寧に結びあげるとそのまま闇夜に消えていった。その方向は先ほど確認した1本の細いロープがあった方角だ。
今にも死にそうな政明を見て、サイは追跡を断念する。
サイ「とりあえず、救急車が村の入り口に来てくれるらしいから、そこまでおぶるぞ。多少の揺れは我慢しろよな」
政明を背にのせ、走り出そうとした時、別のホルダーの気配を2人感じサイは動きを止める。
サイ(おいおいふざけんなよ。さっき理子を回収した連中か? すこし方向が違う気がするが)
【虹のルーレット】を服の中に隠し、来訪者を待つ。
だが、そこに現れたのは見知った人物だった。
サイ「なんでこんなとこに、【巨人】と【聖女】がいんだよ」




