31 援軍
理子(さて、政明君はどこに行ったんすかね~。今は手動なんで丹ちゃんが探してくれないのが面倒っすね)
丹のロープはオートで動くタイプと任意で動かす2つのタイプに分けられる。基本はオートにしているが、炎で政明を殺してしまう可能性を考えて、仕方なく私が任意で動かしている。
とりあえず、村を完全に炎の檻に閉じ込めたがこれだけでは、時間がかかる。
殺してしまうのは問題ないが、ロープの拘束から抜け出した彼の腕力と素早さは興味をそそられる。もしかしたら、気配を消すタイプのホルダーかもしれない。死ぬ前に情報を抜き出すべきだ。
理子「一応、言っとくすけど~。私、この程度じゃ死なないんで早く出てきてくださいっすー!」
称号
あなたは【適応者】のホルダーになりました。
称号取得条件
100日以上、一人で生き続けること。
特殊能力
ありとあらゆる環境で30日間生存することができます。
専用宝具
丹のロープ
【適応者】の称号があればこの程度の火、数日滞在しても問題ない。それでも服が焦げてしまうのは、避けたんだけど、これは仕方ないっすかねー。
煙と炎でよく見えないが、時間をかければ人一人くらい見つかるだろう。
理子(だれもここからは出られないっすからね~。それこそ、別のホルダーが自分の身を顧みずに防御の薄い外側からこじ開けない限り…………あれ?)
突如、自分の操る丹のロープに違和感を感じた。まるで外側から無理やりこじ開けているかのように……。
急いでその場所へ急行する。そこには、凛々しくもどこか野性的な女性が燃えるロープを掴んでいた。
ホルダーだ。
しかも、近くには政明の姿がある。
理子「逃がさないっすよ!」
ロープを操りこじ開けられた隙間を直そうとする。しかし、それよりも早く彼らは外に脱出した。仕方なく、村全体の包囲を解除する。
理子「へー、援軍なんて驚いたっすよ。しかもホルダーなんて。でも、関係ないっすけど」
サイ「おーおー、お前も口の回るガキだなぁ」
サイは挑発的な笑みを浮かべながら政明を抱きかかえる。
サイ「おい大丈夫か政明」
腕に空いたいくつかの穴と、全身の火傷を見てサイは小声で話しかける。
サイ「事務所から出てったお前を急いで追いかけたんだが、遅くなってわりぃな。…………それに、その傷は……」
サイは、政明が自戒のためにつけた傷と、いまだ無傷の理子を交互に確認しやるせない顔を作る。
政明「気にすんな、ただのリスカだ。それよりあいつだ。専用宝具持ちで称号は【適応者】。こんな高温でも汗一つかいてやしねぇ」
サイ(……この結果を招いたのは……アタシの責任だ)
目の前の中学生と政明をゆっくりと確認しつつ、サイは唇をかむ。自分が子供を傷つけないことを強要したせいで政明は深手を負っている。
サイ(きっと、【聖女】を国に売ったのも何か事情があったんかねぇ……)
理子「で、内緒話は終わったすか? 政明君が生きててくれてほんとによかったっす。あとでちゃんとその力について教えてくださいっす!」
燃えた丹のロープの先を鋭くし躊躇いなくサイに放つ。サイはそれを懐から取り出した【虹のルーレット】で防御した。
サイ「宝具は絶対に壊れない。つまりこういった場面ではシールドとしても機能する」
言いながら、サイは【丹のロープ】の解析を始める。
サイ「……なるほどね。無限に伸びる変幻自在の縄か。しかも、燃えてるロープを振り回すことで山に引火、じきにアタシたちは死ぬ」
逃げようにも、政明を抱えたまま逃げ切るのは現実的ではないだろう。
理子「なぁんだ、分かってるじゃないっすか。私はこの程度の火、チョコミントのアイスを美味しく食べるスパイス程度にしか感じないっすよ」
サイ「………………」
つまり、制限時間はあと数分もないということだ。頼みの綱の涼斗は――助けてと言って来てくれるほど人間が出来てない。
まとまらない考えに混乱しているアタシの服を政明が引っ張った。
政明「……おい、サイ。その宝具は使えねぇのか?」
息も絶え絶えに政明は話しかけてくる。
サイ「これの所有権は政明だ。アタシは使えないし、それに……」
政明のけがの状態を見て、サイは宝具の使用を断念する。もし政明が万全の状態ならばチャンスはあっただろう。だが、この怪我ではまともに戦えない。
サイ「あんた、宝具を使うのは初めてだろう。無理だ」
迫りくる炎の縄をガードしつつ政明を説得する。だが、政明は笑った。
政明「俺が火傷フェスティバルだからか? 合理的に考えろ、今俺たちが生き残るには【虹のルーレット】しかない。で、それの専用効果を引き出せるのも俺だけ。……早く使い方を教えろ」
よく見れば政明の笑顔は唇が痙攣しており、火傷のせいか汗すら出ていなかった。
やせ我慢だ。
とても彼に任せられない。だが、その選択肢以外、なにもないのも事実だった。
理子と距離を取り、政明にルーレットを手渡す。彼は少しふらつきながらも彼は地面に立つ
1~7の数字が書かれたルーレット状の宝具は、綺麗な虹色を輝かせながら持ち主の手元で光り輝く。
アタシは宝具を見ながら、政明に指示を出す。
サイ「まず、左手首に宝具を触れさせる」
俺は、言われたとおりに宝具を近づける
その瞬間、ひとりでに宝具からベルトが伸び手首にぴったりと巻き付いた。
政明「おおっ!?」
サイ「そしたらそのルーレットを思い切り回す!」
サイは七色のルーレットに向かって手を伸ばす。
理子「やらせわけないじゃないっすか」
距離を縮めてきた理子はロープを政明に伸ばす。だが、それよりも早くサイの手がルーレットを回した。
その瞬間、円盤状の巨大な2つのルーレットが出現し、政明とサイへの攻撃を防ぐ。
理子「はぁぁぁぁああ? なんすかそれ?」
とても軽快な音楽とともにルーレットから声が漏れる。
[ターイム――ルーレットオオオ!!]
サイは政明に肩を貸しながら説明を続ける。
サイ「2つのルーレットはそれぞれ数と武器を決めるためのルーレット。これが決まるまで政明は絶対に攻撃が当たらない」
先ほどから無数のロープが襲ってくるが2つのルーレットは悉くを防いでいく。
政明「なら、このまま安全地帯まで逃げりゃいいだろ」
サイ「残念だけど、この無敵タイムは30秒くらいしか続かねぇんだよ。それより、次は左上にある赤のボタンを押しな」
政明はボタンを押す。
[ナンバァァァァア――2!! ウェポンンン――アロー!!]
2つのルーレットがひとりでに止まり、数と武器が決まった。
サイ「……運がいいな」
そういったサイの体は一瞬で桜色のビー玉に変わった。そして、俺の胸からも虹色のビー玉が出てくる。そして、ルーレットにそれをはめ込むための窪みが2つできていた。
政明(こういうことか……?)
俺は二つのビー玉を嵌め、もう1度赤のボタンを押した。
その瞬間、2つのルーレットが俺の右手を挟み込んだ。
政明(……え? これ大丈夫だよな。おいサイ!?)
そして、ルーレットが消失したとき、そこには水の波紋のような模様がついた弓を持たされた中学生がいた。ピンクと虹色が同居した弓はどこか幻想的だ。
力が漲り、火傷の痛みを我慢することさえできる。
そして、ついつい口をついて出る。
政明「―――これがお前の最後のフェスティバルだ」
j『おおー、カッコいいね~』
意図して出た言葉ではないのにjが勝手に出てきた。なんだこいつ、最近出てきてなかったくせに。
サイ『……テステス。聞こえるか政明? 脳内に変な奴がいるのはホントだったんだな』
全身がビー玉になったのに冷静なサイは目の前にいる理子を見据える。
政明『こいつは気にしなくていい。で、変身はこれでいいのか?』
サイ『ああ。さて、じゃあ無敵時間も終わったからな、行きな政明!』
政明『……ああ!』




