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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
適応者編
29/112

29 エンドの斥候


??「そですねー、まだ手掛かりはないっす」


 レリウス王城内、人気のない倉庫にて通話をするのは中学生くらいの少女だ。名前は【沼井(ヌマイ) 理子(リコ)】という。


 ずいぶんと華奢な体にメイドの姿に扮している彼女は、テンション高く通話口の向こうの相手、【エンド】のボス【青鹿(アオカ) (ヒサシ)】に報告をする。


理子「やっぱ、考えすぎじゃないすか? 【聖女】が見つかったのはただの偶然すよ。

 たまたま近くにホルダーが通って、たまたまレリウスに密告した。なにも不思議はないっすよ」


 久の命令でここ1か月見習いとして潜入している理子。


 彼女は慣れた様子で仕事をしながら通話を続ける。


 新たなホルダーが見つかったとの知らせを受け、エンドも情報を仕入れに来ていた。彼女はその第一人者だ。


久『かっかっか! そうかそうか、そういえば理子君、君の称号はバレてないかね?』


理子「はいっす! 【女帝】や【巨人】は遠征に行ってますし、聖女は私に興味なし。【不死(アンデッド)】は引きこもってるんで近づかないようにしてます!」


久『それはよいことだ。だが、もうすぐ彼らも帰ってくる。ここらが潮時だろう』


理子「はーい……あっ、そういえば今思い出しました。確かあの聖女、故郷の誰かに城の招待状送ってましたね」


 今日来た私よりも年下の少年を思い出しながら、報告を続ける。


久『そういえば、あの村は勇君とキスの因縁の場所の近くだね。まあ、なにもないかも知れないが、ついでにそこの調査も頼めるかい?』


理子「……えー、何調べるんすか?」


久『主に聖女の人間関係やクラウンゲームの情報漏洩についてだ』


理子「もし、村の人がクラウンゲームについて知っていたら?」




久『その時は仕方がない。全員殺せばいい』




 躊躇いもなく放たれた言葉に理子は笑みを浮かべる。


 情報の漏洩は危険だ。クラウンゲームのことが世界に知られれば、間違いなく称号の奪い合いが起こる。宝具はホルダーにしか使えないからだ。


 歴史を振り返れば、宝具の圧倒的な性能に国同士で争いが起きたこともある。


 以降、全てのホルダーの暗黙の了解としてクラウンゲームのルール開示を控えるようになった。


 いくら特別な能力が得られても、武装した軍隊が相手ならば簡単に死ぬ。それがホルダーだ。


理子「了解っす!」


 理子は宝具のロープを握りながら威勢よく返事をするのだった。




―――




政明「さて、勧誘は終わったぞ」


 これで俺も晴れて仲間だ。というわけで早速【虹のルーレット】を取り出し、サイの目の前に置く。色々と前置きがあったがこれで宝具の使い方や効果が分かる。


サイ「そうかい、まあとにかく座りな」


 どこか不機嫌そうにサイは椅子を勧めた。とりあえず座る。


政明「涼斗は? 一応勧誘には成功したんだが」


サイ「あいつは帰った。話すなら明日にすんだな」


政明「んじゃ、そうさせてもらうわ。あと、こいつの鑑定を頼む」


 というわけで、宝具をサイのもとへ差し出す。が、それをサイは断った。


政明「……なんのつもりだ?」


サイ「今日、城に行ったな? あの招待状を送ったのは誰だい?」


政明「……知り合い」


サイ「より正確に言うと――幼馴染、だろ。しかも、最近匿名の通報で無理やり連れてこられた。お前、なにか知ってんじゃないのか?」


政明「そうだな……。俺が通報して由美を国に売った」


 言い訳をするつもりはない。


 確かにあの女はとんでないヤンデレで、ストーカー行為のせいで食事もできないほどストレスに苦しんだ。しかし、俺が売った事実に変わりはない。


 サイは黙りこくる。


 子供に危害を加えないことが信条のこのチームで、俺は子供に危害を加えたのだ。


 しかし、俺も中学生。


 サイは迷っているのだ。俺を信用するかいなかを。


サイ「わりぃが、人を国に売るような奴は信用できない。よってこの宝具の鑑定もできない」


 サイは俺の目を見ながらはっきりと断る。当然といえば当然だ。ここで信念を曲げるような奴を、俺は仲間とは認めない。


 だが、だからといって諦める俺でもないのだ。


政明「気持ちは分かる。だから――」


 説得を試みようとしたタイミングで、俺のスマホからメロディが鳴った。


 相手は母だった。現在の時間は夜の2時。加えて俺は一人でキャンプに行っている設定なので、これは恐らく緊急性のある電話だ。


政明「悪い、少しあける」


 応答をタップし、もしもしと告げる。



政明母『政明! 今どこ? 無事ッ!?』


 いつもの母らしくない要領をえない言葉。どこかに隠れているのか少し声が響いている。


政明「無事だが……なんかあったのか?」


政明母『それならいいの。いい、よく聞きなさい。村は今、誰かに襲われてる。政明、あんたは絶対に村に来ちゃダメ』


 俺は耳を疑った。


政明(……襲撃された!? 誰が、なんで)


政明「よくわかんねえぞおい!!」


 詳細を聞き出そうと声を張り上げるが、何かが破壊される音と共に通話は途切れた。



サイ「……おい何が――」


 サイが何かを言い終わる前に、俺は事務所の窓を蹴破っていた。


 とにかく全力で足を動かす。


政明(大丈夫だ……父も母はいつも冷静な性格だし頭もいい。逃げおおせる)


 必死に大丈夫だと言い聞かせながら、俺は村を目指す。

 20分ほどでつけるはずなのに、行きより道のりが長く感じる。


 俺は、【虹のルーレット】を置いてきたままであることも忘れ、とにかく山道をかけるのだった。


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