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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
賢者編
102/112

102 旅立ち


 事件から一週間


 夏芽さんは行方不明となった。


 あの後、警察や自治体の関係者が日夜懸命に探索したがそれでも痕跡すら見つけられず、完全に暗礁に乗り上げている。


 可能性として、川下に流され綾都まで行ってしまったことも考えられた。しかし、いくらか関係は回復したとはいえクセン共和国と綾都はあまり親しい間柄ではない。捜索が難航することは容易に予想できる。


 それに加え、40階もの高さから落ちたのだ。すでに亡くなっていると考えるものも少なくなかった。



 【黒炎の不死鳥】と名乗る不審者二人は無事拘束された。


 なんでも世界的にも有名な愉快犯らしく、今回初めて逮捕に踏み切れたらしい。



 そして響生と呼ばれていた優男は――死んでいた。


 まあ、いくら体が頑丈といってもあの高さからの落下では死は免れないだろう。


 結局、なぜ響生があそこまで強力な力を持っていたのか、その原因やルーツは不明のままだ。



 ヤンたちは、家族全員が五体満足で生還した。お忍びで遊びにきたことは外交上問題になるだろうが、【黒炎の不死鳥】の逮捕に貢献したとなれば、そこまで重い処分はないはずだ。



 そして俺。


穂塚「……なにしてんだろうな」


 家から最寄りの港に来て海を眺めていた。


 一緒にいたという理由で警察からの事情聴取を終え、そして今朝天水家に挨拶を済ませてから直行で港に来ているのだ。


穂塚「お母さんとお父さん、めちゃくちゃ怒ってたな……」


 先ほどの挨拶を思い出し、若干身震いをする。


 まあ、自分たちの大事な娘が男と旅行してる最中に行方不明――いや死んでいると同じような報告を受ければ無理もないだろう。


 実際俺は、夏芽さんをそんな危険な行為に巻き込んだのだ。


 殴られても文句は言えない。


 未だに痛む右頬をさすりながら潮風を感じる。


穂塚「……にしても、涼斗君は全然動じてなかったな。まあ、身内が死んだくらいで乱れるような性格じゃないだろうしな」


 そこまで考えた辺りで、船の汽笛が鳴った。俺は荷物を持ち、係員にチケットを見せる。


 そして、フェリーに乗り込んだ。


 行先はもちろん留学先――ではなく綾都だ。


穂塚(……諦めが悪いかもしれないけど、俺はまだ彼女が死んだとは思えない。まだ遺体が発見されたわけじゃない。なら、夏芽さんは生きてる。だから見つけて、会って、言わなきゃいけないことがある)


 彼女が川に落ちて流されたとしたら行先は綾都だ。国が探してくれないなら俺一人でも探してやる。



穂塚「待っててくれよ? 夏芽さん」



 陸に向けて頭を下げて、俺は船室へと足を進めるのだった。



―――




父「……おい涼斗。お前、今日どこでなにをしてた?」


 夏芽が死んでから1か月後、俺は父君と母君に呼び出されリビングに座らされていた。


 父君はかなりの怒気をまといながら俺を睨む。


涼斗「なにを? そうだな、今日は久しぶりに旅行に行っていた。最近、綾都に面白い鑑定士を見つけてな」


母「……で、それが世界で一人だけの実の姉の葬式を欠席する理由なの?」


 母君もかなり低いトーンで俺に詰め寄る。


涼斗「……? なぜ俺が夏芽の葬式に参列せねばならん。そういう茶番は君たちが勝手にやっていたまえ」


父「ッ! お前!!」


 父君が俺の胸倉を掴むが、それを母君が制止する。


母「やめて! もう……これ以上家族がバラバラになるのは……」


父「クソ!」


 父君は俺から手を離し、近くにあったゴミ箱を蹴り上げ不満をあらわにする。


母「ごめんね涼斗。私たちがあなたの教育を間違えたせいで……。夏芽が優秀だったからつい教育を疎かにしてしまっていたの」


涼斗「俺が間違っていると? 面白い冗談だね母君。俺は生まれた時から常に正しい。間違っているのは君たちだ。なぜなら夏芽はまだ――」

父「黙れッ!」


 いつもの涼斗の世迷言を父君はぶった切る。


父「もう俺は貴様を息子とは思わん! すぐにこの家から出ていけ! 二度と顔を見せるな!!」


 父君はスライド式のドアを破壊しそうな勢いで力いっぱい閉め、そのまま姿を消す。


涼斗「そうか。ならばそうさせてもらおうか」


涼斗(面白そうな奴も見つけたしな)


 特に躊躇うこともないので、最低限の荷物を持って玄関へと向かう。



母「ま、待って涼斗。さっき、なんて言おうとしたの?」


涼斗「……さっき?」


 玄関で靴に履き替えた辺りで、母君は声を掛けてきた。


母「あなたが夏芽について言おうとした時よ」


涼斗「ああ、あれか。そこまで飛躍した話ではない。夏芽はまだ()()()()()。必ずな。だから、俺は葬式に参加することはないし死者を弔うこともない。それだけだ。じゃあな」


 なにか言おうとする母君とは対照的に俺は少し心を躍らせながら一歩を踏み出すのだった。


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