ランクアップ
長らくお待たせいたしました。やっとこさできあがりました。
||私は花
||野に咲く一輪の花
||私を見る人は皆感嘆の声をあげる
||けれど私に触れたものは私の中へと消えていく
「俺の魔術が魔力とやらを使っていないとはどういう事だ?」
俺は御者に聞いてみた。
「魔力とは、人間の生成するエネルギー、特に生命エネルギーや精神的エネルギーの余剰分の事で、人間は血液などにそれを蓄えています。このエネルギーを使う事で魔術を使っているのですが、どうも貴方からはそういったエネルギーの動きが感じられないのです。」
おいおい、エネルギーを感じられる御者とは相当ヤバいな・・・しかし、それだと俺が使ったエネルギーは敵から集めたから勘違いされたのか?ここはひとつ、試してみるべきであろう。
「成程、じゃあ、これでどうだ?」
そう言いつつ、俺は自分のエネルギーを使って火を灯してみる。
「・・・。どうやら、魔力以前の生命エネルギーを使用している節がありますね。そしてそれ以外の力も・・・」
「それ以外?どういうことだ?」
「一口に魔術と言っても様々な種類があります。それこそ、使用するエネルギーまで違う事があるだけでなく、一般的なエネルギーを一切使用しないという謎の魔術もあるのです。私はそこまで詳しくないので、他の国に行って調べた方がいいかもしれませんね。」
なるほど。しかし、俺の術は錬金術だ(・・・まあ、大分魔術に近い気がするが)。魔術を学んでも余り意味が無い気がする。
「ただ、貴方は神格しか使わないような特異な術を使っているように見えますので、新しく術を確立してしまっても良いと思います。」
「ふむ、悪くないな。因みに、どうすれば術を確立できるんだ?」
「弟子を取って小規模であろうと広めるのが一番かと。特に金を作れる術ということで、貴族や王族からの支援も得られるでしょうし、簡単に広まると思いますよ。」
途端に嫌悪感を覚えた。異世界まで来たのに何が悲しくて欲望の為に動かなくてはならない。
「残念だが、欲望しかない輩ばかり来そうだから、国の支援は受けない。自分勝手な欲望を持たない者だけしか弟子にしないつもりだ。今回ギルドでの用が終わったら取りあえず世界を見て周ろうと思う。」
「・・・そうですか。」
そう言いつつ、順調に旅は進み、王都に着いた。
規模は王都と言うだけあって中々のものだ。中央に城が鎮座し、同心円状に町が広がっているようだ。大通りが東西南北に延び、南側にはギルド本部があるようだ。東に貴族達が固まっており、西には学園と一般人の住居、北は半スラム街という感じだ。直径100マイルはありそうだ。
まあ、思うところはあるが、取りあえず目的のギルド本部へと向かった。御者は・・・どこかへ消えた。まあ、馬車は置いてあるみたいだから、戻ってくるとは思うが。そしてまあ、当然のことながらランクアップ試験を受ける事になったわけだが・・・
「では、これより受験者ヘルメスのランクアップ試験を執り行う。審査は俺、ギルドマスターのネクリウスがする。」
なんともご丁寧に、御者であった。いやなんでだよ?!なんで御者がギルドマスターなんだよ?!じゃあなに?俺の様子を見るためだけにこんな事をしたとでも?
・・・
さて、落ち着いたところで(いや、まだ驚いている)。肝心の試験の内容であるが、試験官たる御者と戦闘を行い、結果に応じて階級を上げるというものらしい。武器は自由だが、殺人は流石に不味いので、文字通りの必殺技はするなと言われた。・・・きっとゴブリン一行を全滅させたあれを指してるな。まあ、武器は持ってなかったので、練習用の鉄剣を借りた。
「では、始めよう。」
「お願いします。」
次の瞬間、御者は一気に距離を詰めて、剣を下から袈裟懸けに切り付けてきた。・・・流石ギルマス。めっちゃ速い。避けられるか、こんなもの!?
「くっ!」
なんとか鉄剣で防ぎ、距離を取った。
「ほう、よく避けられたな。お前の戦闘スタイルなら結構難しいはずだが?」
ごもっとも。あわてて防御したら偶然上手くいっただけだろう。もしこのまま次が来たら、まず間違いなくやられる。もしこのままならば・・・
再び向かってくる御者。私彼の距離が後5歩の時である。
「なっ!?」
御者の足が地面に埋まり、扱けた。それは見事に扱けた。すぐさま剣を御者の首に突きつけた。
「・・・まいった。」
なんとかなった・・・そう思ってふと周りを見てみると
「「「・・・」」」
大量の金魚がこちらを見ていた。それはもう、恐ろしい程に。
「なんでそんなに驚いてるんですか?」
そう問いかける俺に、御者、いや、流石にもうそろそろギルマスと呼ぶか。ギルマスにこう説明された。
「そりゃあ、当然だろう。試験で本気は出さないとはいえ、俺が受験者に負けた事は一度も無かったからな。それに、そもそも俺を転ばせたのは、なんだったんだ?」
「旅中も見せた変性術ですよ。空気中の熱エネルギーと自分のエネルギー少しを使って、予め液体の地面を作っておいたんです。まあ、相手からすれば泥を隠蔽したみたいな認識になると思います。」
「はっきり言おう。そんなことが出来る人間は君位だと思う。そもそも形跡が分からないのだから、まず対処出来ない。しかし、そんな術は未だかつて見たことも聞いたこともないよ。まあ、ともかく合格だ。さらに言うと、勝ってしまったからにはBランクだ。異例の大出世だな。」
これは・・・やらかしたか?変に国に囚われたくはないないのだが・・・
「さて、こうなるとすぐさま王城へこの情報が届き、呼び出されるだろう。あの王に限って欲丸出しにする事は無いと思うが、念のため私も付き添おう。」
そんなことを言われて1刻。伝令が来て呼び出しを食らった。なかなかに早い。で、まあ、王城へ向かったのだが、城の中を見て驚いた。確かに王城というだけ凄い煌びやかなのだが、錬金術師の目はごまかせない。普通の人じゃ分からないように安物であるのが殆どなのだ。国の規模を考えるとそんなことしなくても普通に高価な調度品も入るであろうに、だ。ギルマスに聞いてみると、すぐさまこう言われた。
「そのことは内密にな。王が民の為の税金をこんな事に使うのは勿体無いと考え、秘密裏に安物にしているのだ。他国や王を良く思わない輩に知られたら、付け込まれかねない。」
成程、確かにおいそれと口外するわけにはいかない。しかし、気になる事がある。
「なんで貴方は知っているんですか?」
「まあ、ギルマスなんて職業柄、王と仲が良いのは当たり前なんだよな。互いに強い力を持つが、どちらにとっても片方が欠けると困るから。」
つまりはこういうことだ。武力と政治という2つの重要要素が、分割されているのだ。しかも世間の信頼は王側の方が大きい。どちらも相手を陥れるよりは仲良くやったほうが効率的だからだそうだ。その中でもこの国の王とギルマスは昔共に戦ったりしてたものだから、腐れ縁も相成ってほぼ親友だそうだ。
と、話が脱線しそうなのでこの辺で戻ろう。
王が玉座に座り、謁見が始まった。
「ヘルメス殿、よくぞいらしてくれました。どうぞ、楽にして下さい。」
めっちゃ下に出て来た。いや、王の威厳は?とも思うが、言われた通りに楽にする。
「ヘルメス殿は報告によると錬金術師だそうですね。いったいどんな職業なんですか?」
ド直球に聞かれた。さて、どう答えるか・・・
「錬金術を研究する者の事にございます。錬金術とは、あらゆる物質の性質を変化させたり、その中で自分を磨き、清めたりするものでございます。この世界にある魔術と似通ったものかと。」
まあ、おおよそ嘘は言ってないはず・・・言ってないよね?
「ふむ、そういえばそこのギルマス、ネクちゃんが見た限りだとかなり特殊な魔術だとか・・・」(ギルマス:「王よ、この場でその名は止めて下さい。悶え死にそうです。」王:「おお、すまん。」)
「そうみたいですね。まだ普通の魔術というのがどんなのかは分かりませぬが、ギルマスさんが見せてくれた魔術を考えると別のものとも言えるでしょう。」
「さらに巻き藁を金に変えてしまったそうですね。しかし、それをやられると少し困った事になるんですよ。」
「困ったこと?金融関係ですか?それとも欲丸出しの貴族の事ですか?」
「え、えらくド直球じゃが、まあ、それもあるが、何より貴殿の力を恐れた神格が貴殿を殺しに来るやもしれんことなのです。」(ギルマス:「口調が段々普段に戻ってきて変になってますよ。」王:「しもた。これ以上続けるのもなんだし、普段の口調に戻そうかの」)
さあ、それは考えておらなんだ。どうしたものか。
「対策としては、この世界の一般的な魔術のどれか一つでも覚えておき、普段はそちらを使用することで誤魔化す手じゃな。流石にまだ危険視されてはいないじゃろうから、今ならまだ隠れられる。他にも、人間に寛容な神格を見つけて保護下に入るというものもある。ただし、偽装されてたら一巻の終わりじゃし、その神格が強くなければ意味もない。」
うん、こんな説明されたら答えは一つだ。危険には極力あいたくない。
「この世界の魔術を学びたいと思います。」
確かに王が嘘を付いている可能性は否定できない。しかし、この世界は確かに神格とやらがいるそうな。その力に怯える側の人間は、なるべく目立たないようにする必要があるだろう。極端な話、出る杭は容赦なく打たれるのだ。
「あいわかった。して、魔術を教えられる学院は全ての国にあるが、どの国が良いか?推薦状を渡そう。」
なんと!この人は人格者か!?そうなのか!?まさか選ばせてくれようとは・・・しかし、もう決まっている。まあ、他の国を知らないというのが大きいが、
「この国の学院にしたいと思います。」
「ほう、嬉しいことを言ってくれる。しかし、この国となると推薦は無理じゃが、良いか?とはいえ、試験は実技だけじゃが」
そりゃあね。自分の国となると贔屓は明らかに自分の権威を落とす事になるものね。けど、だからこそこの国にすることで公平性が高まると思うのだ。
「構いません。」
そういうわけで、学院の入試に参加することとなった。
ほぼお決まりですね。




