3-18【虎穴】
「そうですか……他の賢人達が……」
翌日、報告と打診を兼ねてカストールのもとへやって来た俺と魔王、そしてティナ。
賢人がアリシア達と城で会うという今日、その現場に乱入出来ないかと計画を立てていた。
「理想は賢人達が素直に喋ってくれる事だがな……」
「国を任されとるんじゃろう? そう簡単に口を割るとは思えんがのう」
政治の場はどの国だって、舌戦は必要になる。素人が追求したところで、あの手この手で濁され、真実などけして語らないだろう。
「直接現場を抑えるのが一番か……」
ツグモリが調べたと言っても、証拠がある訳でもなし、軽くあしらわれるだろう。アリシア達には会っていない。そう言われたらそれで終わりだ。
「では単刀直入に、会いに行きましょうか。その方が早いでしょう。証拠が無いなら、相手に出してもらえば良い。ボロが出るまで追求するまでですよ」
大胆にも直接問い質すと言うカストール。搦手を使わないのは若さなのか性格なのか。
「え、でもそんな事をして大丈夫ですか? その……」
「無論、普段からこんな大胆な手は使いませんよ。ですが同じ賢人として、黙っている訳にもいきません。さほど時間も無い様ですしね」
そう言って席を立つカストール。
「国を任されている身でありながら、他人の言いなりになっているのであれば、舞台から退出して貰いますよ……」
カストールは静かに、しかし確かな怒りを秘めているようだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
城の一角に備えられた、一室。賢人達が集まり話し合いを行う場として作られたその部屋は、他の者は立ち入る事を禁じられているという。
「つまり、中で何が行われていようが、一切確認されないという事か」
「ええ。普段は賢人のみが所有する鍵で封鎖されていますしね。会議が長引く事もあるので、休む事も出来る作りになっています。まぁ、簡易ですが」
人に見られずこの国に滞在するのであれば、格好の場所という事だ。
「しかし、あ奴らがそんなコソコソと隠れているというのも変な話ではないか?」
魔王の疑問も最もだ。今までのように堂々と介入せず、隠れて何かをしている……そんな事があるのか?
「国中が暴力に敏感になっているのと、何か関係があるのかもしれませんね。そう……例えば複数の魔法をかけることが出来ないとか」
暴力に敏感にする魔法、そして認識をすり替える魔法。二つ同時には使えないのか……? いや、そもそも暴力に敏感にしている理由もわからんが……。
「まぁ、全て賢人とやらに吐いてもらえば良かろう。おそらく答えを持っておるじゃろうからの」
「そうですね。それが一番でしょう……っと、着きましたよ、この扉の先です」
カストールに案内され辿り着いた扉。一見すると他の部屋に付いている扉と変わらない。
「有事の際に見分けがついては困りますからね。豪華な扉なんかにすると、いかにも重要な部屋です、と言っているようではないですか」
国家機密なんかもこの部屋にはあるんだろう。万が一を考えた用心の為か。
「今開けますね……うん? 鍵が……」
鍵穴に差し込んだ鍵を手に、何やら首を傾げているカストール。
「どうしたんだ?」
「いえ、鍵がかかっていなかったので……これは……」
疑問を口にしながら、カストールが扉をゆっくりと開いていく。開いた扉の先は薄暗く見えないが、形容しがたい嫌な臭いが篭った空気と合わせて流れ出てくる。
「この臭い……」
嗅いだことのある、独特な臭いに思わず顔をしかめてしまう。これは……恐らく……。
「ガレス! キャスパー! 居ますか!」
恐らく他の賢人の名前を叫びながら、カストールが中に踏み込んでいくが、部屋からは何も返ってこない。
「今灯りをつけますね。灯火よ……うわぁぁぁ!?」
カストールが作った魔法の灯り。それにより室内の様子がハッキリと浮かび上がる。
小さいが重厚感のある丸い机と椅子。三人で話しやすいようにか、椅子は三角を描く様に、均等に配置されている。
その椅子にもたれかかるように二人……この国を運営する賢人、そしてアリシア達と内通していたであろう、ガレスとキャスパーが、身動き一つ取らずただ静かに鎮座していた。
――腐敗し、物言わぬ肉塊となって。
ここまでお読み頂きありがとうございますm(_ _)m




