3-13【賢人との出会い】
明けて翌日、賢人達から話を聞くために城に向かいたいんだが、昼が近くなろうというのに、まだ出発出来ていなかった。
というのも、ティナが起きてこないのである。
部屋の扉をノックすると、返事は返って来たので居ることは間違いないんだが、一向に出てこない。ついでに一緒に居るはずのフィーナもだ。昨日は随分と飲んでた様だし、恐らく二日酔いだろう。そう思いながら待つ事暫く、ようやく出てきたが、あんがい元気そうだ。
「おはよう二人とも。と言ってももう昼だが」
「女の子は色々準備に時間がかかるのよ! 男なら黙って待ちなさい」
「あ……おはようございます、アレウスさん」
フィーナはいつもの調子だが、ティナが少しいつもと違うな。
「どうしたティナ、二日酔いか?」
魔法でも唱えようかとティナに近付くと、びっくりする様な速さで後ずさってしまった。おまけにクロが近付くなとばかりに猫パンチをしている。
「だだだだ、大丈夫です! 元気ですよ、はい!」
「うん? まぁ、元気なら良いんだが……」
後ずさって行ったことには驚いたが、本人が問題ないと言うなら大丈夫だろう。
「とりあえず今日のところは城に行ってみようと思うんだが……フィーナ達はどうする?」
魔王とティナは一緒に行くとして、フィーナ達はどうするのか。
「あたしはパスかなー。ついでにウォルナックも借りてくわ」
「む……そうか。まぁ、もともとお前達はここに来る事が目的だったしな。問題ないぞ」
てっきり着いていくと言い出すかと思ってたから、少し拍子抜けだが、まぁいい。ひとまずいつものメンツで行くとしよう。
フィーナ達に別れを告げ、俺達は城に向かう事にした。城にいる賢人とやら……何か話が聞けると良いんだが。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして城にやって来た俺達を迎えたのは、気味が悪いくらいスンナリと事を進める城の門番。特にツテもコネも無い俺達は、そのまま正直に賢人達に会いたいと伝えた所、そのまま城内に案内されてしまった。
「普通、国の重鎮がこんな簡単に会ってくれるものか……?」
別に勇者だの王命だの伝えるでもなく、着いて来いと無言で歩く門番。門番が城内に入って良いのかなどと考えていると、扉の前で門番が立ち止まる。
「この中でお待ちです。どうぞごゆっくり」
門番は取り次ぐでもなく、居場所だけを伝えるとさっさと帰ってしまう。何かチグハグな印象だが、賢人達が居るというならそれで良い。とはいえこの国にはアリシア達が居る。これが罠かもしれないと、こっそり準備を終えてから扉をノックする。
少し間が開いたあと、部屋の中から「どうぞ」と入室を促す声が聞こえてきた。それに従い、部屋の中へと足を踏み入れる。
部屋は執務室の様で、四方を本棚に囲まれた机に向かって、一人の男が忙しそうにペンを走らせている。男はこちらをチラリと一瞥した後、再び書類に目を落とす。
男は蛇の様な顔に、ツルリとした鱗が全身を覆っている。おそらく、蛇鱗族で間違いないだろうが、話しかけるべきか戸惑う動きだった。
カリカリとペンの走る音だけが部屋の中に木霊する。さて、終わるまで待つべきか……などと考えていたら、魔王が先に切り出してしまった。
「客が来たというのにその態度はどうかと思うのじゃが。それともワシらの相手をする暇も無いと言うのかえ?」
「リ、リリィちゃん……失礼ですよ……」
こういう時、物怖じしない魔王の性格が少し羨ましいな。まぁ、真似をしようとは思わないが……。
「後少しで終わりますので……すみませんがもう少しお待ちください……」
そう謝って書類と戦う男。どうにも見た目と行動に対して、物腰は柔らかいようだ。
しばらくして一段落ついたのか、ぐっと伸びをした後、こちらに向かって歩いてくる。
「すみません、お待たせしてしまって。どうにも要領が悪いものでして……ええと、どちら様でしたっけ」
「ああ、約束もなしに突然済まない。俺はアレウス、こっちの娘がティナで、小さいのがリリィだ」
突然の訪問を詫び、男にこちらを紹介する。魔王だけは小さいのとはなんじゃと、不貞腐れていたが。
「これはどうも、はじめまして。僕はカストール。一応この国で賢人を務めさせて頂いてます」
「突然来た俺達が言うのもなんだが、良かったのか。忙しそうだったが……」
「ええ、構いませんよ。賢人と呼ばれてはいても、末席に齧り付いている様なものでしてね、雑用係みたいなものです。息抜きの口実としてはありがたい話ですよ」
そう言って屈託なく笑うカストール。見た目は蛇なもんで愛嬌なんかはないんだが。
「それなら良いんだが。だがこれから話す内容は、息抜きどころか負担を増すかもしれないな」
「それは穏やかじゃないですね……。あ、どうぞお座りください。今お茶でも淹れますね」
俺達は簡単な応接セットの様な椅子に腰掛ける。カストールはそのまま戸棚から、茶器を取り出し自ら用意する。
「兵士に持ってこさせるんじゃないんだな」
「ええ、皆さん忙しそうですので。自分で出来ることは自分でしようかと思いましてね。それに……」
「それに?」
「自分で淹れたほうが美味しいんですよ」
そう言って茶を持ってくるカストール。一口飲んだが、確かに美味かった。とはいえ、他の茶と区別がつくほどでもなかった事は、そっと胸にしまい込んでおこう。
「それで、お話というのは……」
ひとしきり雑談をした後、カストールがそう切り出してくる。さて、何から聞いたものかな――。
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