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2-17【エドラスの結末】

二章ラストです(๑•̀ㅁ•́๑)

 城の伝令に案内され、謁見の間に入る。

 

 ドラゴンの襲撃もあり、本来豪華であろうその場所は、ひび割れや破損が目立っていた。


 その深部、最奥にある玉座に座っているのがここ、エドラス国の新たな国王――ノイシュ・ゴルデネ・エドラス。短く切り揃えた赤い髪を後ろに流した、細身だが筋肉はしっかりと付いた男だ。

 前王の年齢から考えれば、俺とたいして変わらない歳だろうに、威風堂々と玉座に腰を落ち着けている。



「勇者殿御一行、お連れ致しました!」


「ああ……ご苦労」


 伝令に軽く労い、ノイシュ新王はこちらを見る。


「ふむ……まずはこの国を救ってくれた事、礼をせねばな。感謝する、勇者殿」


 そう言ってノイシュ新王が頭を下げる


「いえ、原因はこちらの身内がしでかした事……。むしろ謝るのはこちらの方かと」


 アリシアを身内だとは思いたくないが、それは俺個人の問題だ。周りから見れば俺の妹に違いは無い。


「構わん。父……前王が欲をかいて国を危険に晒したのだ。貴公はそれを片付けてくれた。原因はどうあれ、国を救った事に違いはあるまい」


「前王の行動に関してもこちらに非がありますので……」


 アリシアがこの国を操ったのは違いない。他国からしたら加害者だが、この国自体被害者でもある。


「謙遜も良いが、過ぎるとかえって嫌われるぞ。貴公が居なければこの国は滅んでいただろうからな。胸を張るといい勇者殿よ」


「は……わかりました。ありがとうございます」


 どうにもこうも正面から礼を言われるとやりづらい。隣を見ると魔王がヤレヤレといった表情をしていた。



「では褒美を取らせる必要があるな。何が良い? 好きな物を言うといい」


 かつての俺なら飛び上がって名誉と地位を欲しがったかもな。だが今はもうそんなものには興味が無くなってしまった。俺は少し考え、


「では僭越ながら……まずは勇者と呼ぶのをやめて頂けますでしょうか。それから後は、何か美味い飯でも頂ければそれで」


 そう、新王に告げた。勇者は世の為に動く人間への称号だ。俺はただ、身内の後始末をつけているだけだ。美味い飯はまぁ、言わないと魔王がうるさいだろうからな。


 チラッと見ると魔王が目を輝かせていた。少しヨダレも出ている……。恥ずかしい奴だな。


「ははは、不思議な奴だな貴公は。名誉は要らぬと言うか。……まぁよい、では望み通りとしよう。とはいえ今は城内もいろいろ復旧が必要なのでな。後日になってしまうが」


 新王の発言に魔王はこの世の終わりの様な表情で打ちひしがれている。お前、どんだけ楽しみだったんだ……。


「さて、それでは色々話を聞きたいところではあるが……あいにく急ぎの事が多すぎてな。貴公らは急ぎか?」


 アリシアはさっさと来いと言っていた。すでにマリアベルが準備をしていると。ならばあまりのんびりする時間は無いかもしれないな。


「数日であれば……」


「では二日貰えるか。使いをよこすゆえ、その時に城まで来てくれ。それまでに褒美は用意しておこう」


「は……承知致しました」


「では、今日のところはひとまずここまでだな。では二日後に会おう」


 そうして俺達は、新王と会談の約束をし、謁見の間を後にした。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 後日、約束通りノイシュ新王から伝令がやってきた。目的は情報共有と言っているが、俺達についての見極めもあっただろう。



 魔王やクロについては情報を伏せているが、俺についてだけでも、ドラゴンを一人で屠ったのは多くの兵士達が見ている。

 単体戦力として利用できるなら利用するだろうし、万が一エドラスにその力を向ける事がないよう、これでもかと懐柔してきた。


 ましてや好き勝手暴れているのも、世間で勇者と呼ばれている二人だ。各国に伝令は出しているそうだが、アイツラはそれをものともしない。こうなってくると勇者を排出したシュヴァーメント国は立場的にダメージを受けそうだが、そこはまぁ、オルデン国王が何とかするだろう。大臣の胃が心配になるが。



 王城は突貫で修復したとは思えない程、綺麗に直されていた。おそらく目に見えない部分はまだまだこれからだろうが。


 アリシア達については記憶から抜けていることもあり、にわかに信じられないといった様子だったが、ノイシュ新王はそれでも俺達の話を聞いてくれた。まぁ、他国への恫喝をしていたエドラスだ。自分達も被害者とする事で、地位の向上なんかも考えてるんだろう。


 例の爆剣についても詳しい製作方法はわからなくなった為、今後作られる事も無いだろう。そもそも鍛冶師はひたすら剣を量産していただけだし、おそらくはそこにアリシア達が何かを加えていたんだと思う。

 勇者が持つ宝具を量産なんて、そうそう誰にでも出来るはずはないしな。



 話すべき事は話し、ノイシュ新王も協力は約束してくれた。少なくとも表向きは。

 シュヴァーメントと違いこの国には魔王の事なんかは話していない。故に、勇者の存在自体に疑問を持った今、本心から俺を信じる事もないだろう。

 まぁ、それでも十分だ。少なくとも直接どうこうされる訳でもないしな。



 ああ、ちなみに褒美として貰った飯はすこぶる美味かった。シュヴァーメントでの宮廷料理の話をしたら、負けるものかとこの国の料理人が張り切っていたのが印象的だったな。

 魔王は相変わらず暴食だったが、この国での失敗を恥じているだけあって、料理長を泣かすような事は無かったが。


 その代わり俺が倒したドラゴンを食ってみたいと言い出したので、庭園で豪快に焼いてやった。

 なんでも城でもウロコに歯が立たず、難儀していたらしいからちょうど良かった。剥いだ鱗や皮なんかの素材を見て、街の鍛冶師達は子供のように目を輝かせていたが。

 素材は一部をこの国に献上して、少しだけ売った。残りは保管してもらっている。これで魔王の食費に悩まされる事も無くなった訳だ。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆




 あけて翌日、俺達はエドラスを後にすることにした。次は海だとか言ってたな。

 この国から北にある、海上国アストラ。唯一の海上国家でもある島国だ。俺を英雄にするだなんて言ってた以上、何もない海で何かを企んでいる事は無いだろう。



「そろそろ準備出来たか?」


 滞在期間はさほど長くなかったが、それでも減った物、増えた物は色々ある。特に食料は多めに持っておかないと、また問題が発生しかねないからな。


「こっちは大丈夫です! クロちゃん、ありがとうね」


 馬車に荷積みを手伝っていたクロが、問題ないとプルプル震えている。


「魔王はどうした……?」


 さっきから姿を見せない魔王。まだ積むべき荷物はあるというのに。


「リリィちゃんですか……? あれ、アレウスさんが休んでいいって言ったんじゃないんですか?」


「いや、俺は一言もそんな事言ってないんだが……」


 どうもティナを騙してサボっているみたいだな。荷台を覗くと案の定、豪快に寝転んでスヤスヤと眠りについていた。

 腹立たしいから、魔王の周りを囲むように荷物を置いて蓋をする。どうせ起きないんだろうが。



「さて、じゃあ出発するか」


「はい。次はアストラですよね? 私、海を見たことがないので楽しみです!」


 ワクワクしているティナに苦笑し、馬車に乗る。これがただの観光ならもっと楽しかったんだろうが、あいにく行った先で何かに巻き込まれるのは確実だ。



 今回は良いように転がされたが、次はそうはさせない。そう思いながら、俺はアストラへ向け、馬車を進めだした――。


ここまでお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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