2-16【魔族という種族】
地の文はおっさんに戻りましたm(_ _)m
「とまぁ、こんな感じじゃ」
話し終えた魔王が少し恥ずかしそうに呟いた。
「ほんとに恥ずかしい話だったな……一人突っ込んでいって返り討ちとか……」
「うるさいわい! 理解の及ばぬ事が重なった結果じゃ! 大体なんでワシの腹に穴が開くんじゃ!」
「そういえば腹は大丈夫なのか? 風穴開いたんだろう?」
「うむ。ワシにもわからんがほれ、この通り傷ひとつないわい」
そう言って魔王はペロンと服を捲って腹を見せてくる。うん、見事な幼児腹だな。
「リリィちゃん! はしたないですよ!」
「なんじゃ腹くらい……減るもんでもあるまいし」
魔王がティナに慎ましさを説かれている。まぁ、こんな子供の腹を見ても何も思わんが……。
「しかしお前、封印されたら傷が治るのか?」
「さぁのぅ……わからん事だらけじゃな」
自分の傷を相手にも与える……転移といい若返りといい、勇者の域を超えているのは間違いない。
それも突然現れた人影――ルーデウスとやらが関係しているのか?
アリシアについては今更言うまでもないのだが、魔王が見たと言う謎の人影についても疑問が尽きない。
「それで、そのルーデウスとやらは何者なんだ?」
「あれが本人かはわからんがさっき言った側近……進化の秘術を使う男じゃよ」
そうなるとルーデウスは魔族という事になる。しかしそれは一体どういう事だ?
「え、でも魔族はリリィちゃんの封印で……」
「うむ。間違いなく消えた。封印が解けても魔族を再生はしてないからの」
そうなると偶然同名なのか? しかしそんな奴が居たら、かつての魔王封印の旅で耳にしていると思うんだが……。
「そもそも、魔族ってどういう種族なんですか?」
ティナが根本的な質問をぶつける。確かに俺も、ハッキリとは知らないな。
「ふむ……そうじゃの、魔族とは『魔王』を根とした一本の樹だと思えば分かりやすいか。枝葉が散っても樹は残るが、根が死ねば枝葉も死ぬ。そういう存在じゃの。そして根であるワシが生きておれば、枝葉はまた生えることが出来る」
「つまり一度、根であるリリィちゃんが封印されたから、枝も葉も枯れてしまった訳ですね」
「そうじゃ。根からの養分無しでは生きられぬ、そういう樹じゃの」
枝や葉だけでは樹として成り立たない。故に魔族が存命している事はありえない。
「例えば、接ぎ木なんかの様に枝だけ独立するとかは無いのか? あるいは新たに外部から、根の役割を用意するとか」
「ふむ……仮にじゃが、『魔王』という存在が別にいれば可能かもしれんの。ただあの時、ワシ以外に魔王なぞおらんかった。というより『魔王』は複数存在せん。『魔王』とは成るものでは無く、最初からそう生まれるのじゃから」
魔王ありきで増える種族だから、それ以外の魔族が魔王になる事は出来ないと。
「じゃあ、魔族が生きる為の糧を他から補充するのはどうなんだ?」
「それも無理な筈じゃ。ワシの魔力、それが魔族の糧じゃ。生きる為に飯も必要じゃがな。飯で肉は補えても、ワシの魔力という血が無ければどうにもならん」
「あれ? じゃあ最初っから死んでたらどうなるんです?」
不意にティナが不思議な事を聞いてくる。最初から死んでいる?
「ゾンビやレイス等の存在も、肉体が無いだけで死んではおらんよ。じゃから同じ事じゃの」
ティナの質問自体はもっともだが、不意に何かを思いつきかけた。何だ……何処かに抜け穴はないか?
魔族には魔王が必要……魔族は魔王には成れない……じゃあ魔族で無ければ?
考える内に一つの仮定が頭をよぎる。
「なあ、魔王」
「ん? 何じゃ?」
頭の中を整理し、可能かどうか、あるいは可能性があるか問いかける。
「仮に、だ。そのルーデウスとやらの進化の秘術……それで魔王になる事は……いや、魔王から独立する事は出来ないのか?」
人間ですら魔族の様な元の姿から掛け離れた存在になった。ならば、魔族を魔族では無いナニカに進化させる事も可能ではないか。
「う……む。少なくともアヤツが当時、他の魔族にかけた際にはそのような事は無かったが……」
「アリシアはジルベルトを失敗したと言っていた……。もしルーデウスとやらの目的が独立した存在で、それの実験や練習の為だとしたら……」
「ありえん話では無いが……賭けるには少し分が悪すぎやせんかのう」
実験していたとしても、成功しているかどうかは魔王が居なくなるまでわからない。ましてやそれを自分に使うのだ。
「確かにそうだな……。しかし現実にアリシア達に協力している存在はいる。今は仮定でルーデウスとやらだと考えておこう。全くの別人かもしれないがな」
「うむ。秘術の様なものも確認出来とるしの。それありきで事を進めるほうが良さそうじゃ」
アリシアとマリアベルだけでも厄介なのに、ここに来て新手の登場か。全く頭が痛いな。
そうしていくつかの疑問をぶつけ合っていると、不意に扉の外から声をかけられる。
「勇者殿! 王がお呼びでございます。謁見の間までお越しくださいますでしょうか!」
急遽王位を継いだという新王。恐らくは今後の話だろうが、どうにも勇者と呼ばれるのには抵抗があるな。
伝令の兵士にすぐ行くと伝え、俺達は揃って部屋を後にした――。
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