1-17:【ティナ奪還(中編)】
短髪王子へと駆け出す俺。王子は唱え終わった魔法を放とうと、俺に杖を向ける。
「死ねや!」
杖から魔法が放たれる瞬間、俺は床につくほど身を伏せ、そのまま一気に加速する。右手には雷の魔法――魔王を起こしたやつだ――をセット。
王子の魔法は空を切り、後ろで派手に壁にぶつかる音が聞こえてくる。
俺はそのまま王子のすぐそばまで近づくと、王子に触れる――ちっ!流石に避けるか。
「中々良い動きすんじゃねえかおっさん!」
そのまま杖を振り下ろし、こちらを狙ってくる――が、甘い。
俺は振り下ろされた杖をそのまま左手で掴み、呪文をセット。杖ごと王子を振り回す。
「なっ……んだとぉ!!」
遠心力の前に流石に杖を握っていられなくなったのか、派手に吹き飛んでいく王子。
「魔法をぶっ放すだけが戦いじゃねーんだよ」
王子は体格もかなり良い。まさか自分をふっ飛ばすほどの力が、俺にあるとは思っても無かったろう。まぁ実際そんな力は無い。単純に魔法でブーストしただけだ。
俺は杖を肩にかけ、王子を見下ろす。さて、どう出るかな。
「テメェ……返せ!それは俺んだ!!」
愚直に真っ直ぐ突っ込んでくる王子。魔法を使ってくると思ったが……いや、もしかして。
俺はあの時掻き消された雷魔法を放つ。一条の雷が今度は消える事無く王子に突き刺さった。
「がっ!!」
「やっぱりか……。お前、これが無いと魔法が使えないんだな」
ポンポンと杖で肩を叩きながら王子を見る。恐らく図星なんだろう。王子は苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
「だったら……だったら何だってんだ!」
「いや、別に。お前の勝ち目が無くなっただけだ」
勇者とあの女の息子。まぁ、周りは期待するだろうな。それが魔法一つ使えないとなれば、どういう扱いを受けるか……想像に難しくない。
だからこの歳であの杖を持たせてたのか。足りない魔力を杖で補うという訳だ。
「さて、お前が魔法を使えようが使えまいが関係は無い。やった事の報いは受けてもらわないとな」
ひとまず王子を魔法で縛りあげる。魔力が無いし抜け出す事は出来ないだろう。
ふと魔王はどうなったかと見ると、四つん這いにされた長髪王子の背に座り、優雅にお茶を飲んでいる魔王がいた。
……おい、どこから出したそのティーセット。
「ふむ、終わったかえ?」
カップと皿を長髪王子の背に置き、歩いてくる魔王。長髪王子は微動だにしない。
「ああ、取り敢えずはな。そうだ、ティナ!無事か!?」
ティナは部屋の隅で状況がうまく飲み込めていないのか、固まっている。心なしか顔が赤い。
「ティナ?」
「うーむ……少し刺激が強すぎたかのぅ」
いや、ホントお前何やったんだよ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ティナ? おーい、ティナ?」
「はっ! あ……アレウスさん?」
放心状態のティナが意識を戻す。見たところ大きな怪我は無さそうだが。
「大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です……また、助けられちゃいましたね」
「気にする事は無い。守れなかったのはコヤツじゃ。全く不甲斐ないのぅ」
ぐうの音も出ない。魔王を見つけてから、少し気を抜き過ぎていたな。
「いえっ!その……助けて下さいましたしっ!あの……ありがとうございます」
そんなお礼を言ってくるティナの頭を、つい撫でてしまう。
「アレウスさん……?」
「あ、すまん。つい……」
どう反応して良いのか分からず顔を赤くして戸惑うティナ。しまった。ちょっと気安すぎたか。
「のうお主よ……。ワシには礼はないのかえ?ほれ、特別に撫でさせてやろう」
上から目線で頭を差し出す魔王。なんか素直に撫でるのも癪だと思い、撫でるフリをして頭を回しておいた。
「おおおお主よ、ティナと全然態度が違うではないか……やめい目が回るるる〜」
全く、コイツに勇気付けられた自分に腹が立つ。
「さ、あとはコイツラをどうするかな……」
馬鹿息子二人……。どうしてやればアイツラに一泡吹かせてやれるか……。
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