1-16:【ティナ奪還(前編)】
「――吹き飛べ!」
目の前の建物――その外門に向け、魔法を放つ。襲撃だとわかるよう、派手な音と効果のやつだ。
着弾とともに訪れる爆音が、今の気持ちを代弁するかのように辺りに轟く。
外門を中心に一帯が吹き飛び、残骸がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。
流石にコレには中の人間も気付いたようだ。ゴロツキの様な風貌の男達が、蟻の巣を突いたようにワラワラと庭へ飛び出してくる。
「何だテメェ!! 何のつもりだ!」
顔中傷だらけの男が喚いている。何のつもり?殲滅するつもりだよ。
「お前と問答するつもりは無い。黙って糞王子を呼んでこい」
「王子ぃ?こんなトコに居るわきゃねーだろ!」
恐らく秘密にするよう言ってあるんだろうが、魔王がココだと言っているんだ。間違いはないだろう。
チラと魔王を見ると、堂々とした顔で頷き返してきた。やれやれ……見た目が幼女じゃ無ければもう少し様になるんだろうがな……。
「そんな事は調べれば分かる事だ」
「だからってハイそうです――ぎゃああ!!」
問答する気は無いと言った。俺は遮るように男に魔法を放つ。白刃と化した光は男を飲み込み、そのまま建物の扉を粉砕しながら消えていった。
「邪魔をするなら……痛いじゃすまんぞ」
突然の出来事にゴロツキ共は浮足だっている。コレが国の兵なら話は違ったんだろうが、所詮ゴロツキ。身の安全か報酬か、悩んでいるのはそんな所だろう。
「お主よ、やらんのかえ?」
「目的はティナだしな。かける時間が勿体無い」
動かないゴロツキ共を尻目に、建物へ入る。全員が出てきた訳じゃなかったんだろう。中には少し骨の有りそうな奴らが待ち構えていた。
「何勝手に入ってきてんだテメ――」
最後まで言う事無く、男はその一生を終えた。
時間が勿体無いと言ったろうに。いや、アイツは聞こえてなかったか?まぁ良い。
「お主よ、少しはワシにも出番をおくれ」
魔王はそう言うと、軽く腕を振るう。それだけで残りのゴロツキ共は皆、膝から崩れ落ち絶命した。
流石魔王、容赦ない……。
改めて建物内を見渡す。一階、二階共にいくつかの扉が見える。まぁ、こういう作りの建物は概ね二階が寝室になっているんだろうが……。
「どこに居るか分かるか?」
「どうせ一番奥じゃろ。こういうものは相場が決まっておる」
きっと魔王も一番奥に居たんだろうな……。と緊張感の無い事を考えてしまう。
「じゃあ、扉だけ破壊しながら行くか」
二階に上がり扉を一つ一つ破壊して回る。一応魔王は一階も見ているようだが、まぁ本命は二階奥だろう。
そのまま奥の部屋の扉も破壊し中へ入る。ビンゴだ。そこにはティナと、二人の糞王子が待っていた。
「連れを……ティナを返してもらいに来たぞ」
「アレウスさん!リリィちゃんも!」
少し殴られたか?頬の片方を赤くしたティナが、こちらへ駆け寄ろうとする――
「おっと、そこまでだ」
「行かせる訳ないだろ!」
「きゃっ!」
遮るように長髪王子がティナの腕を取る。
「随分まぁ派手にやってくれたなテメェ!」
「身の程を知れよお前ら」
まぁ、派手にやると決めたからな。
……しかしこいつら、双子だからか話すときに毎回両方口を開くから煩くてかなわんな。
「オッサンよぉ!さっきボコられたのもう忘れた訳か!?」
「それとも幼女に見られていると勝てるとでも?」
「御託は良いからかかってこいよクソガキ」
タネが割れてりゃお前ら如きどうということはない。杖持ちなら、それ有りきで考えるだけだ。
「舐めやがって……テメェ、ぶっ殺す!」
「なら俺はあの幼女に躾をしてやるか」
短髪王子が例の杖を出し呪文を唱える。魔力ブーストの点であの杖を超えるものは無いからな。流石に直撃すれば無事では済まない。
「魔王……あっちは任せても大丈夫か?」
「誰にものを言っておるのじゃ。礼を知らん小僧を躾けてやろうぞ」
その言葉を聞いて、俺は短髪王子へと駆け出していった。
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