1-15:【最高の援軍】
「――!―――!」
遠くから何か聞こえてくる。うまく聞き取れないが、何かを叫んでいるらしい。
「おい!あんた!大丈夫か!」
大丈夫?何がだ……。頭がぼんやりして良くわからない。
「しっかりしろ!連れが心配じゃないのか!」
連れ……?俺に連れなんて……そうだ!
「ティナ!!」
それまでぼんやりしていた頭が急激に目覚める。周りには心配そうに見つめる店員の顔。給仕で見てないから店主か?……そうか、俺は気絶してたんだな。
「気がついたようだな。大丈夫か?」
「つ……。俺はどれだけ落ちてた!?ティナは!? 連れの女はどうなった!」
吹き飛ばされた身体はズキズキ痛むが、今はそんな事どうでも良い。
「さほど時間は経ってないよ。あんたの連れなら……あの王子共が何処かへ連れてってしまった」
「どっちに行った!」
クソッ!こんな所であんな物が出てくるなんて思っても無かった!
「城の方へ向かったが……その先はわからん」
不味い。あのガキがあの杖を使いこなせるなら、認識阻害の魔法も破られるだろう。亜人族だとバレたら最悪殺されるかも知れん。
俺は立ち上がり店を飛び出る。すぐさま王城へ向かおうとして、ピタリと足が止まる。
まて……今城へ向かってティナを助けられるのか? 城には勇者共がいる。それに加えてあのガキ共だ。勝算は低い……。そこまでしてティナを助ける価値はあるか?
ティナは何かを知っているかもしれない。しかしそれが俺の復讐に役立つとは限らない……。いや、城にいる他の亜人族を助ける事が出来れば、進展はするだろう。だが捕まればそこで道が途絶えてしまう……。
ぐるぐると、思考がループする。助けるべきか見捨てるべきか。出口のない迷宮に入った様に、進むべき道がわからない。
「あほう。そんなもの、助けに行くに決まっとろう」
不意に、隣から声が聞こえる。ここに居るはずのない者の声が。
「何をボサっとしておる。一刻を争うんじゃろう。早う進まんか」
「え……魔王?」
それは幻覚でも幻聴でもなく、紛れもなく魔王だった。どうしてここに?何で事情を?
聞きたいことが次から次へと浮かんでくる。
「詳しい事はあとじゃ。まずはティナを助けるのが先じゃろう。どうやら彼奴らは城ではなく別の所へ行ったようじゃ」
「あ、ああ」
気持ちを切り替えろ。何故だかわからんが魔王が来てくれている。これ程頼もしい援軍も無い。
「場所は分かってるんだな? 案内してくれ」
「こっちじゃ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ここか……」
城下町ではあるが城からは遠く、比較的人気の少ない区画。そこに目的の建物はあった。大方、王族や権力者達が秘密事をする為に作られた、そんな所だろう。
「忍び込むにも……厳重だな」
勿論堂々と門番がいる訳ではない。そんなものが居ればココで何かしています。と明言するようなもんだ。
ここにあるのは魔法探知系のトラップ。侵入者の存在を術者に伝えるか、あるいは自動迎撃か。
「さて、どうするか。解除しても良いが恐らくバレるだろうな」
「何を言っておる。喧嘩を売られたのはこっちじゃぞ。義もこちらにある。堂々と正面からじゃ」
まったく頼もしいな。ぐだぐだ考えていた自分が嫌になる。そうだな、正面突破で殲滅だ。王子だの何だの、知ったことか。
「じゃあ、行くか」
「うむ、お主よ。景気付けに派手にやってしまえ」
言われなくとも。俺は知り得る魔法の中で派手なもの……爆破系の魔法を唱え両腕にストックする。
「頼りにしてるぞ、魔王。遠慮せずに暴れてくれ」
「クフフ。元勇者に頼られるのも悪くないのぅ」
茶化すなよ。俺は結局、最初から勇者じゃ無かったさ。環境と境遇に甘えていた、ただのお調子者だ。今でも結局魔王に頼ってるしな。
それでも――それでも、もう二度とお前らには何も奪わせない。奪われたものも全て取り返す。これがその、最初の一歩だ。
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