1-18:【ティナ奪還(後編)】
ティナを攫った王子二人。一人は魔法で縛られ、もう一人は四つん這いのまま動かない。このまま放っておけば、いずれと言わずすぐにでも報復に来るだろう。
曲がりなりにも王子に手を出したんだ、兵を伴っての逆賊討伐……などとなれば厄介だな。
「やはり記憶を消すのが一番簡単か?」
ここ数日の記憶を消せば俺達の事は忘れさせる事が出来る。
「じゃがそのやり方だと同じ事を繰り返すじゃろうて」
そうなんだよな……。またティナに目をつけられても厄介だ。
なら目と口を塞ぐか?魔法でやってしまうと城には妹……いや、あの女が居る。解かれてしまっては結局同じ事だ。物理的に消すしかないか。
「そうだな。魔法も解かれる恐れがある。…………消すか」
「消すって、アレウスさん!それは……」
ティナが人を消す、という言葉に反応しコチラを振り返る。被害にあったのはティナだろうに。
しかし、王子を消したとして、店の連中にも見られてるんだよな……。流石に王子がいっぺんに二人も消えたら、捜索される。そうすればあの店に辿り着くだろう。
参ったな、八方塞がりじゃないか。王子は生かしても消しても駄目…か。
ガリガリと頭を掻きながら考える。最善策はどれだ……。
「のう、お主よ。何か忘れとらんか?」
「ん?忘れてる事?何だ?」
「またまたとぼけおってからに。お主の隣におるのは誰じゃ?」
隣? 隣にいるのは魔王――――
「何か妙案でもあるのか?」
「そうじゃのぅ〜あるんじゃがのぅ〜ちらっ」
何か策があるらしい魔王が含んだ顔でこっちを見てくる。というか自分でちらっとか言うな。
「……何が目的だよ」
「ワシがここまで働いたんじゃからの。相応の対価も貰わんとの。労働には報酬が付き物じゃ」
露骨に催促をしてくる魔王。お前、ティナを助けるのも労働ってそれはちょっと酷いだろう。
「勘違いするでないぞ。労働とはティナを助けた事では無い。お主をここまで連れてきた事じゃ」
「……それについては後で色々聞きたいことがある」
「ふむ。ならば報酬もそこで決めるとしようかのぅ。ひとまずこ奴らにはワシが直々に呪いをかけてやろう」
呪い?確かに魔王の呪いなら強力だろうが……。
「心配せんでも解けることはない。それがたとえ勇者共の力であってもの。そもそも勇者共の力なぞ、ワシから見れば子供同然じゃ」
子供同然か……。あの時、一体何があったのか。子供同然と言う勇者に封じられ、同胞の魔族も全て消す事になった理由は……。
「じゃあ頼む。この国を離れることも考えたが、選択肢は多いほうが良い」
「うむ、任せておけ」
魔王はそのまま王子達の前に立つ。うーむ、傍目に見ると兄を叱りつける妹みたいな構図なんだか、実際は魔王に命を握られている王子なんだよな……。
「取り敢えずここ最近の事は忘れてもらおうかの。後は女に触れることが出来んように呪いをかけてやろう。ついでじゃ、その不埒なイチモツも不能にしておいてやろうぞ。ん?なんじゃ反抗的な眼じゃのぅ。仕方ない、女を見ることが出来ん呪いも追加じゃ」
あ、やっぱ魔王だわコイツ。エゲツない。女を見ることも触れる事も出来ずナニも使えない……。男に走るしか無いのか……しかも受け側。
魔王から黒い靄のような物が這い出る。それはそのまま王子達の中へ消えていった。短髪の方がバタリと倒れる。気を失ったようだ。
「ふむ、こんな所じゃろう。ん?どうした苦虫を噛み潰し様な顔をして」
「……何でもない」
多分男なら皆、同じ顔になるであろう……。
「さて、帰るぞお主ら。ついでになんぞ美味いものでも買って帰るのじゃ」
「そうだな……ほら、ティナ。帰ろう」
「え、ひゃっ!あっはいっ!帰りましょう!」
うーむ、怖がらせたか?の割には顔が赤いな。さては王子の今後でも想像したか?まぁ、そういう方面に興味のある年頃……か?
「ほれ、お主何をしておる。ワシは疲れた。背負っていかんか」
「断る。自分で歩け」
「嫌じゃ疲れたのじゃ。断るならお主にも呪いをかけるぞ」
「はー……ほら乗って来い」
魔王の前にしゃがみ込む。背中に感じる魔王の体重。軽いなぁコイツ……。
まぁ、今回は魔王に色々世話になったしな、コレはその対価だ。そう思う事にして俺達は建物を後にした。
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