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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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最終決戦

 その後の結果はというと、リンは相手の生徒会長が相手にもかかわらず圧勝。

 次いでのリーゼロッテはイーストの王女、神無月玲奈が相手であった。途中までは互いに均衡状態を保っていたが、やはり経験が足りていなく、去年も交流戦に参加していた玲奈に惜しくも敗北してしまった。

 そしてミュアだが、彼女の契約精霊はなんと竜精霊であり、あえて精霊武装を展開せずにわざと具現化させることで戦う前から相手の戦意をそいでいた。もちろん、結果は言うまでもなくミュアの圧勝であった。


 そして、現在の勝率は二勝二敗とリンの予想通りのものとなった。


 「お疲れ、ミュア。それにしても、容赦ないことをするわね」


 「勝つためなら、あらゆる方法だってするわ」


 至極当然、いつもと変わらない様子で話す彼女たちを見て、リーゼロッテは顔を引きつらせていた。


 「……相手も強かったんだよね?」


 「ああ。一応、イーストの代表だからな。恐らくリンさんたちがおかしいだけだ。アシュリーさんも相手が悪かっただけで学生レベルじゃないからな」


 アリスもリンとミュアの決闘を観て、明らかに実力が違うと思っていた。相手も相手で強かったが、それは学生での範囲でだ。しかし、リンたちはその域を超えている。下手をすれば、そこら辺の大人よりも実力があるだろう。


 アリスがリーゼロッテと話していると、リンがアリスたちにゆっくりと近づいてくる。


 「準備は整えたわよ。大将さん」


 「これは勝たないと後で何を言われるかわかりませんね」


 アリスは苦笑しながら答える。延長戦は無し。勝った方が優勝。まさに大将戦にふさわしい舞台であった。


 「勝ったら焼き肉を奢ってあげるからね」


 「それは本気でいかないといけないですね」


 冗談交じりで話すリン。アリスもリンの冗談に合わせるが、内心では――


 (ここまでは順調だな。後は楓を――)


 やることは決まっている。心の中で何度も自分に言い聞かせるアリス。


 (大丈夫だよ! 自分を信じて!)


 (……ありがとう、クロノス)


 この励ましがアリスにとってはとてもありがたかった。


 (……私の出番がない……)


 (……後で何か買ってやるから)


 そして、メーティスを慰めるのも忘れてはいけない。いつもアリスがクロノスばかりを使っているので少し嫉妬しているようだった。なかなか可愛らしいところもあるとアリスは苦笑する。


 (じゃあ、いくか!)


 ((うん!))


 アリスは今回の任務、楓を救うために立ち上がるのであった。






 イースト学園サイドでは――


 「まさかの二勝二敗ですか……相手もなかなかやりますね」


 「すまん、俺たちが負けたせいで……」


 「大丈夫ですよ先輩。明らかに彼女たちの実力はおかしかったのですから。むしろ、わたくしがあたった相手だけがまともな学生じゃなかったかしら? 最初の生徒も祐斗相手に……」


 最後の方は誰にも聞こえないくらいの声で呟く玲奈。よく二敗までに抑えることが出来たと我ながら感心していた。


 (”神無月”がいるので今年は大丈夫かと思いましたけど、やはりあの人たちは別格ですね……)


 こちらはこの国最強の二人。対する相手は普通の生徒。悔しいが、玲奈はサウス学園は強敵だと認めるしかなかった。


 (しかし、こちらにはまだ”炎帝”が残っていますからね。それに相手は一年。新入生ごときに”炎帝”が負けるはずがない)


 玲奈は勝ちを確信して無意識に口角を上げる。


 「大丈夫ですよ、こちらにはまだ楓が残っていますから。楓の実力は今までの相手の、どの生徒よりも上ですわ。相手は恐らく最初の三人で決闘を終わらせるつもりのようでしたけど運はこちらにありましたね」


 玲奈の言葉を聞いて、イーストの生徒たちは自分たちの勝利を確信する。しかし、ある生徒だけはそうではなかった。


 (運があった、か。本当に運があったら私が最初に出て勝ちだったよ)


 玲奈の物言いに楓は心の中で苦笑する。玲奈は知らないが、自分が最後に出るといったのは、自分の自己満足のためだ。冷静になれば、楓と祐斗が最初に出ることで勝利を確実に出来るのはわかるだろうに。恐らく二人の実力を過信したためであろうが。


 「相手は一年生だから大丈夫よ」


 「……そうであればいいんですけどね」


 「「「えっ?」」」


 いつもは相手に関して言葉にしない楓。しかし、初めて楓が口にしたことで玲奈たちは驚く。


 楓が漏らした不安な言葉。しかし――


 (どちらにしろ、負ける気はないから)


 楓の瞳には何年ぶりか、やる気で満ちあふれていた。

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