↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死ノ国XX記  作者: 三月坊主
最終章 崩壊の亡都編
PR
111/127

第百八話 『穢れ魔道士』プリバトヤ

「――ならばやってみるがいい。たった二人で私を討ち取れるのならな!」


 亡都ヤマトニアから見て南西。

 背の高い木々が鬱蒼と茂る『(あか)の大樹海』の中にポツン、と出来た拓けた戦場にて。

 プリバトヤの叫びが響き、それを追うように耳をつんざく雷の音が走った。


 ガガクとカグラの双子兄妹対『穢れ魔道士』プリバトヤの一戦。

 これまで何度も逃げてきた男をここで仕留めるべく、二人はアンデッドと対峙する時と同じように、相手の命を狩り取る目となって強敵に挑む。


「【風圧天井(ふうあつてんじょう)】!」

「【竜巻の牙】っ!」


【追い風】で速度を上げて回り込みながら、雷を避けた二人が攻めに転じる。


 まず披露したのは鉄板の連携だ。

 カグラが対象の動きを止めて、その隙にガガクが攻撃を叩き込むという流れである。


 ――だが、そのどちらも回避されてしまう。

 プリバトヤが生み出していた雷がその両足に帯電し、まるで脚甲のような状態となって――バチィン! と。


 跳躍力を大幅に強化するその補助魔法によって、ひとっ跳びで回避および距離を取られてしまう。


「何度も聞くが本当に大丈夫か? お前らの大将が出てこないとは……ていよく捨て駒にされただけじゃないのか?」

「ほざけっ! なわけないだろっ!」

「そもそも私たちから言い出したしね。だから責任持ってやり遂げてみせる!」


 まだまだ余裕なのか煽ってきたプリバトヤに対し、ガガクもカグラも力強く言い返す。


 ――当然、今回の戦いにテンドウ自身も参戦しようとはしていた。

 だが二人をはじめ皆が「アイツは任せろ」と言ったことで、例の一手の捜索の方に専念させていたのだ。


 だから尚更、負けるわけにはいかない。

 プリバトヤこそが元凶であり首謀者であっても、最後の強敵などではないのだから。


「【五重ノ旋風(ごじゅうのつむじかぜ)】!」


 再びカグラが行動阻害の中位魔法を放つ。

 それをプリバトヤはまた跳躍して難なく躱すが――着地(そこ)を狙っていたガガクが一気に接近する。


「【烈風刺脚(れっぷうしきゃく)】!」


 ここぞのタイミングで風を纏った鋭い跳び膝蹴りが標的の腹を狙う。

 連携としては完璧であり、狙い自体も悪くはなかったが――。


「甘い。【電溜盾(でんりゅうたて)】!」


 いつの間にか展開されていた小さな雷の盾で防がれてしまう。


 大きさこそ直径三十センチ程度しかない小さな盾だ。

 それでも高密度な雷の魔力からなる防御系の中位魔法によって阻まれ、腹に風穴を開けることには失敗する。


「……ふむ、思ったよりは強いな。さすがは【不死族喰らい(アンデッド・イーター)】の『特異体質』持ちか。ここまで強化されていたとは少し予想外だったぞ」


 一方、二人の連携を難なく捌いたプリバトヤは感心したように言う。

 本来であれば雷の盾に触れる直接攻撃をすれば、対象がわずかに痺れるはずだ。

 その隙にガガクを先に始末する算段だったが……小さな体には影響はまったくない。


 その理由はガガクの膝に纏う風の量が多く、また流れも強烈だったから。

 一つ一つの魔法の熟練度が高かったために、厄介な感電という反撃を受けることを避けられていたのだ。


「それにもしやと思ったが……『聖者の外套』まで着ているとはな。子供には分不相応すぎる代物だぞ?」


 刹那、プリバトヤの全身を巡る魔力が高まった。

 まだ魔法を発動してはいないのに、纏うローブ越しに雷の魔力がバチバチと荒れ狂う音が不気味に響く。


「それはぜひ欲しいな。……悪いが殺して奪わせてもらうとしよう」


 不敵に笑い、プリバトヤが両腕を顔の前まで上げる。

 様々な魔道具をはじめ、欲しいものすべてを奪ってきた男は、右腕と左腕をそれぞれガガクとカグラに向けた。


 そして大きく開かれた掌の前で、高まった魔力が最大にまで達した瞬間――。


「【鉄槌黄雷(てっついきらい)】!」


 放たれたのはプリバトヤが最も得意な上位魔法だ。

 質量を伴った重すぎる雷撃は、その殺人的な威力のままに二人へと襲いかかる。


 ――当たればその時点で終わり。だが当たらなければ……どんな魔法でも意味はない。


「誰が喰らうかっ!」

「私の方が速いから!」


【追い風】に加えて【突風】まで。

 補助魔法だけでなく、相手の体勢を崩す風魔法を自身に向けて使ったことで――さらなる加速を得た小さな体。

 それら二つは支えのない空中でもバランスが崩れることはない。

 類稀なる戦闘センスと日々の鍛錬の成果により、これ以上ない完璧な回避に成功する。


「ほう、これも避けるか! まあ上位魔法が使えないのならこれくらいはな!」


 どこか楽しそうに叫び、プリバトヤの左目が怪しく光る。


 赤い虹彩で渦巻くような独立した魔力が宿る『天通眼(てんつうがん)』だ。

 国宝級のこの魔道具の義眼は、対象の魔力関係のすべてを丸裸にできる代物である。


 ゆえに『特異体質』だけでなく、ガガクとカグラが使用可能な魔法まで把握している。

 つまり二人は数的有利である一方で、持っている手札はすべてバレているという不利な状況でもあるのだ。


「ただ恥じることはない。私でさえ上位魔法を覚えたのは十一の時だ。複数の中位魔法を精度高く使える時点で誇るがいい」

「っとに! ペラペラとよく喋るなお前っ!」

「その余裕がいつまで続くかしら!?」


 叫び、威力では劣る二人は手数で勝負する。

 幸い相手は生身の人間なのだ。これまで相手にしてきたアンデッド、しかも通常よりも硬い亡都の個体とは違う。

 それら不死の体と比べれば、防具を纏わぬ人間の体など、下位魔法でも当たればダメージは入るのだ。


 なので一にも二にも速度である。

 戦闘開始直後のような派手な中位魔法は基本的には使わない。

 使うとしても発動も速度も最速の【鎌鼬(かまいたち)】、その強化版である【乱風刃(らんぷうじん)】くらいだ。

 とにかく風の刃を放ち続けて、敵に休むヒマを与えない作戦である。


「――【電撃放銃(でんげきほうじゅう)】」


 ……ただ当然、攻撃一辺倒というわけにはいかず。

 個人の実力で言えばプリバトヤの方が格上なのだ。

 回避や防御からの中位魔法の反撃を受け、ガガクもカグラも同じように何度も回避を強いられてしまう。


「「【突風】!」」


 それでも二人は一撃を貰わない。

 叫んだ魔法名もかき消すほどの暴風音。完全に体得した風を味方につけて、足場のない空中を蹴るように縦横無尽に宙を飛ぶ様は、さながら曲芸のような戦い方だ。


 そしてまた【鎌鼬】を撃つ。

 近距離の方が当たりやすくはあるも、決して強引に間合いは詰めない。

 また手数も多いとはいえ、それ以上は無理に増やすこともない。


「時間稼ぎというほどではないが……やや消極的だな。子供特有の勢いもなし。この街で長く生きてきた弊害か?」


 と、風と雷が荒れ狂う樹海の中で。

 そう冷静に分析しつつ、またプリバトヤが不敵な笑みを浮かべて煽ってくる。


「「……【鎌鼬】!」」


 ――だとしても乗らない。冷静なのはガガクもカグラも同じだった。

 体の芯まで染みついた自分たちのやり方で、勝利をもぎ取るべく戦いを進めていく。


 風と雷。どちらも高い速度を有してはいるも、標的を捉えるまでには至らない。

 攻撃を受けるのはあくまで周囲の木々だけ。被害を受けたことで倒れていき、拓けていた戦場がさらに広がっている。


 そんな中、バキベキボキィ! ――と。

 カグラが久しぶりに放った【五重ノ旋風】が――プリバトヤを大きく外れて派手に木々を巻き込んだ。


「ハハッ! 動き回りすぎて手元が狂ったか? どこを狙っている!」


 回避の必要すらなかったそれを見て、明らかな失敗だとプリバトヤが笑う。

 直後、笑われたカグラがすぐにガガクと目配せをすると、タイミングを合わせて【突風】を放った。


「フン、今さらくだらん魔法だな!」


 それをプリバトヤはいとも簡単に回避する。

 バチィン! と雷が爆ぜる音を響かせ、ローブを纏った体が上空高く舞い上がった。


「……いいのか? そんな宙に浮いていてっ!」

「どんな凄腕の魔道士でも……重力には逆らえないでしょう?」


 対して、今度はガガクとカグラがニヤリと笑った。

 さらには動き回っていた足をピタリと止めて、まるで戦闘を一時中断したかのように棒立ちとなっている。


「?」


 二人のその言葉と反応に、空中にいるプリバトヤが訝しむ。


 たしかに宙には浮いて一見、隙を晒しているように見える。

 だが戦闘中ずっと展開している【雷跳ノ足袋(らいちょうのたび)】は空中での跳躍も可能だ。

 ガガクやカグラほどではないにしろ、曲芸のような戦い方もできなくはない。


 だから隙であって隙ではない。着地を狙われてられる心配はほぼないのだ。

 この子供二人は何を笑い立ち止まっているのだと、逆にプリバトヤが心の中で嘲笑おうとした。


 ――その瞬間――。


 ガガクもカグラもプリバトヤも、この戦場にいる全員が聞いた。

 ――ある意味、阿修羅地蔵の鼓動よりも恐ろしい……絶対に聞きたくなかった声を。


「だーるまさんがー、こーろんだー」


 激しい戦闘音が続いていた樹海の中に――弱弱しくもやけに通るかすれた声が響いた。



  ◆



「何、だと!?」


 その状況をプリバトヤはすぐに理解した。

 だからこそ、一瞬にして全身から嫌な汗が噴き出してしまう。


『車椅子の老婆』。


 それは亡都にいる者ならほぼ全員が知っている、絶対に出会いたくない恐怖の存在だ。

 青い頭巾を被って車椅子に乗っている骨人族(スケルトン)系のアンデッド。

 年老いた彼女は亡都中やその地下、または樹海を徘徊する『はぐれ』個体の一種である。


(なぜここに!? 偶然来たというのか――いや違う!)


 空中にいるプリバトヤが次に確認したのは、ついさっきまで樹海の中にはなかったものだ。


『車椅子の老婆』の進行方向に、ポツンポツン、と。

 樹海の地面に雷の矢が何本も刺さり、それが道となっていたのだ。


 ――つまりは誘導されている。

 そのことにプリバトヤが気づくと同時、同じ人物から異なる言葉が聞こえてきた。


「……動いた、ねえ……!」


 老婆の前では決して動いてはならないというのに。

 雷の力で大きく跳躍して空中にいたプリバトヤに……その場で制止する術は残されていなかった。


 直後。ズアァアアアア――と不気味な音とともに薄暗い雲のようなものが発生。

 上空二十メートルに生まれたそれは老婆を中心に広がり、天蓋の幕のように地上に垂れ落ちてくる。


「くゥ……ッ!?」


 プリバトヤは空中で跳躍して逃げようとするも、時すでに遅し。

 金縛りのような状態となって指一本、動かせなくなり……ただ無情に落下しながら、抗うことすらできずに雲に包み込まれていく。


 その最中、プリバトヤの視界の隅に映ったのは一人の男だ。

 小走りでガガクとカグラに合流してくる中年の男、ヨシくんである。


「――【偽装雷矢(ぎそうらいや)】。ずっと前から習得していたが、使い道がよく分からんから封印していた魔法だ。……けど、やっと役立つ時が来たようでおっさんも嬉しいぞ!」


 作戦が完璧に決まったからだろう。

 ヨシくんはしてやった顔で言うと、プリバトヤに向けて親指を立てた。


「お、おのれ! これが狙いだったのか……!?」


 老婆が生み出す逃走不可の空間が形成されていく中で。

 悲しいかな口だけは動かせるプリバトヤが、背中から地面に落ちてすぐ苛立った様子で叫ぶ。


 どこからどう見ても、まんまと敵の術中にハマったのは間違いない。

 どうやらガガクとカグラは最初から兄妹二人で戦うつもりなど毛頭なかったようだ。


 ……通常ならばプリバトヤも遭遇前に老婆の存在に気づけたはずだ。

 だがそれができなかったのは、間違いなくあのさっきの大外れとなった【五重ノ旋風】である。


 あれはプリバトヤの動きを封じるのが目的ではなかった。

 木々を巻き込み破壊する音を響かせて、ギリギリまで『車椅子の老婆』の接近に気づかせないためだったのだ。


(どうりであんな大外しを……! この双子の魔法の熟練度から考えればあり得ないだろう!?)


 それに気づいたところで、もう遅い。

『車椅子の老婆』とプリバトヤ、二人だけの逃走不可の空間がもうほとんど完成に近づいていた。


「さっき僕とカグラだけで充分だ、って言ったけど! あれはブラフだからなっ!」

「私たちが思った以上に強かったから……子供二人だけでもあり得ると思ったんでしょ? その思い込みが命取りとなったね!」


 その外側、安全圏からガガクとカグラが叫び返す。


 これこそが人間ファミリーが用意していた策だ。

 ジンロウタの襲撃に始まり、待ち伏せからの老婆という三段構え。

 ただプリバトヤの転移先がもう一つの方、ロッポウとヒュウガが待ち受けている方であればこうはならなかった。


 あちらは東側でまったくの逆方向となるのだ。

 そのためもしそっちに飛んでいた場合は……大人二人で頑張ってもらうことになっていた。


「さあどうする? 『穢れ魔道士』。年貢の納め時が来たようだぞ?」


 ハンチング帽を被り直しながら、仲間(ネゾウ)を死に追いやった男に向けてヨシくんが鋭い視線で問う。


 ――とにもかくにも、危険な賭けに勝ったのだ。

 ヨシくんの誘導によって、ガガクとカグラから『車椅子の老婆』へのバトンタッチ。

 両者の間に意志の疎通などなくとも、プリバトヤだけを老婆の前で動かしたことで、逃走不可の強制戦闘に引きずり込むことに成功する。


「く……ッ!」


 結果、プリバトヤは薄暗い雲に覆われた空間で老婆と二人きりに。

 もしここから脱出したいのならば、目の前の老婆を倒すしか道はない。


 ……とにかくまずは目の前の敵に集中を。

 噂に聞く老婆を観察しようとして――プリバトヤはすぐに気づいた。


 この薄暗い空間にいるだけで、徐々に力がこぼれ落ちていることに。

 相対しているだけでまだ何一つされずとも、全身の毛穴から魔力や力が抜けていく感覚を覚えたのだ。


(チィ! これは想定外だな……! ならば悠長にしている時間はないようだ!)


 プリバトヤに迷っている時間はない。

 ゆえに空間への閉じ込めが完了して体の自由が戻った瞬間、すぐに動き出した。

 一気に片をつけるべく、魔力がこぼれ落ちる中でも右腕に魔力を集束させる。


 と同時、老婆が車椅子ごと跳びかかってきた。

 どういう原理かは不明だが、体と椅子がくっついたままのその突撃をヒラリと躱す。

 細い骨の腕から繰り出された、引っかくような一撃を空振りに終わらせて――ものの十秒で準備を整えた。


「【明光雷龍(めいこうらいりゅう)】!」


 放ったのはすべての雷魔法の中で最も威力が高い魔法だ。

 世界広しといえどプリバトヤ以外に使用できる者はいない、奥義とも呼べるその最上位魔法を忌々しい老婆へと叩き込む。


「――また、遊ぼうねえ……?」


 それを防ぐ術は老婆にはなかった。

 車椅子という機動力も低ければ、老いた骨身は耐久力の高さもない。

 空振った攻撃の威力こそ目を見張るものはあれど、強個体とはいえ『三大ファミリー』の幹部クラスほどではないがために。


 擦れた声でその台詞を残すと、轟音と激しい光を携えた雷の龍の直撃を受けて――骨の体と車椅子が一瞬にして消し飛んだ。


 ――勝者はプリバトヤ。力関係からすれば予想通りの決着である。


 ……だが、老婆にとっては本当の意味での敗北ではない。

 彼女だけはいずれまた蘇るのだ。数カ月も経てば再び同じ姿と能力で、亡都ヤマトニアを中心に徘徊しているだろう。


 だからこそ、どちらかといえば敗北を喫したのは――。


「ぬおォオオオああああ……!?」


 老婆が死に、薄暗い空間が解除されると同時、勝者の悲鳴が樹海に響いた。


 それはローブを纏った体に異変が起きたからにほかならない。

 残滓どころではない相当な量の魔力が……目に見える形で全身から抜け出ていたのだ。


 ――さらには筋力まで。

 純粋な魔道士ながら鍛え上げられていたローブの下の肉体自体も、筋肉のみがわずかに萎んでいく。


 勝ったところで能力の何割かを持っていかれる。これこそが『車椅子の老婆』が恐れられる所以(ゆえん)だ。


 どんな魔道具でも対抗手段がない『強制的な弱体化』。

 体の外側と内側、両面から力が抜けていくその現象は、どんな強者でもただ受け入れることしかできない。


 結果としてプリバトヤの持つ本来の力、『三大ファミリー』の幹部クラスの力が――無情にも大きく削がれていく。


「「――フゥッ!」」


 そこへ間髪入れずに飛び込んでくる小さな体が二つ。

 待ってましたとばかりに、赤毛の兄妹は風を付与した剣を振り上げ、自身に吹かせた風を背に受けて斬りかかる。


「ッ、【電溜盾】!」


 対するプリバトヤは受けに回った。

 すでに【雷跳ノ足袋】は切れているため、回避は間に合わないと迅速かつ的確な判断を下した。


 ――のだが、


 力を奪われて弱体化したのは魔力や筋力だけではない。

 精密無比な魔法の精度。わずかな狂いすらない自慢のそれも落ちていたことで、魔法の達人とも言えるプリバトヤは――まさかの発動失敗に終わる。


(しまっ――!?)


 習得済みの中位魔法に失敗するなど、どれだけ記憶を遡っても存在しない。

 人生で初めて不発に終わった魔法を見ながら、プリバトヤの目と義眼、その両方にガガクとカグラが大きく映って――。


「――僕ら風の子っ!」

「元気な子!」


 その二人が生み出す風か、あるいは偶然、樹海に吹いた自然の風か。


 かき消された肉を切り裂く斬撃音は響くことなく、緑に茂った樹海の中で――真っ赤な血飛沫だけが舞い上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。