第二十二話 三十年前の真実
「ねえ、文さん。今度、旅行に行かない?」
「良いですね、彩様。どこか考えている所はありますか?」
「何処でも良いかな。この窮屈な村から出れるなら」
今から三十一年前。
学術院がある場所は、魔術師ばかりが暮らす一万人ほどの村だった。
旧月家の影響力は高かったが、今日のような巨大な権力を持っていたわけではない。
それでも血を守ろうとする保守的な思想は根を張っていて、村の空気は閉鎖的で重かった。
睦月家の長女、彩は二十二歳だった。
町では珍しい学者肌として一目置かれていたが、その聡明さは村の窮屈さを誰よりも理解していた。
見知った顔、変わらない価値観、レールの敷かれた未来。
そして彼女には旧月家のトップとしての責任がある。
年は三十以上離れていたが、聡明な睦月の当主を長月文は慕っていた。
彼女の思考が、日を追う事に重くなっているのは明らかだった。
「それでしたら夏の京都などはいかがですか?」
これがストレス解消になればと、文は京都旅行を提案した。
☆
古都へ向かう列車の中で、二人は並んで窓の外を眺めていた。
田畑から住宅地へ、住宅地から街へ。
次々に流れる車窓から見える景色。
村の止まった光景から解放されて、彩は胸の奥で何かが解けていくように感じていた。
夏の京都は別の世界だった。
深い歴史を持つ寺社の建築美は、見慣れた魔術師の邸宅とは全く違う荘厳さを持っていた。
石畳の参道、朱塗りの鳥居、苔むした灯籠。
何百年もの時間を積み重ねてきた歴史が感じられた。
人の多さも、店の種類も、賑やかさも、村とは違った。
二人は普段の鬱憤を忘れて、ただ歩き、食べ、話した。
魔術師としての立場も、睦月家の長女としての責務も、この古都の雑踏の中では誰も知らない。
その解放感が彩には何より心地よかった。
☆
次の日の朝、彩は旅館で一枚のチラシを見つけた。
近くの大学で学祭をやっているらしい。
チラシに並んだブースの名前を流し読みしていると、一つだけ目を引くものがあった。
『数学げえむ』
変な名前だと思いながら説明を読むと、数字を使った戦略ゲームだと書いてあった。
彩はチラシの内容から結論づける。
(このゲーム、ルールは単純だけれど奥が深い。相手が賢いと絶対に面白いわ)
「文さん。わたし、ここに行ってみたい」
「わたしはさすがに昨日の疲れが……。彩様一人で行って来て下さい。旅館でゆっくりします」
「分かった。夕方には戻るね」
彩は心躍らせながら一人で学祭へと向かった。
☆
学祭のブースは、それぞれが工夫を凝らした内容だった。
試食、占い、写真展示、手作りアクセサリー。
どのブースも学生らしい熱気を放っていた。
それでいて品物の品質も担保されている。
その中を歩きながら、彩は目当てのブースを探した。
『数学げえむ』のブースは、構内の端の方にひっそりとあった。
見た目が地味で飾りも最小限。
テントに机が一つあるだけ。
そこに一人の男が座っている。
冴えない、という言葉がそのまま形になったような男だった。
髪はボサボサで眼鏡の位置がどこかずれている。
他のブースが賑やかに客引きをしている中、この男は椅子に座ったまま一人でぼんやりと正面を向いていた。
どうやら受付も対戦も、一人でこなしているらしい。
彩がテーブル前に立つと、男は一目見て視線を彷徨わせた。
「参加できますか?」
「ふひ?」
男はおもむろに『一ゲーム五百円』と書かれた集金箱を差し出した。
特に勝っても景品などは貰えないらしい。
閑古鳥が鳴いているのが納得できた。
それでも彩は迷わず集金箱にお金を入れる。
「楽しませてね。お兄さん」
超絶美女の妖艶な視線に男は頷くしかできなかった。
ゲームは、マス目の上に数字の駒を配置して相手の陣地を崩していくものだった。
シンプルな見た目だが、一手先、二手先を読む必要がある。
彩は自分の得意領域だと直感した。
対戦が始まると男は無言で駒を置き始めた。
駒が揃いゲームが始まった。
序盤から中盤にかけて彩は順調に駒を進めた。
相手の手を読みながら、少しずつ優位な陣形を作っていく。
数学的な思考をフルに使った戦術は、そのまま盤上に表れていた。
そして終盤を挟み、彩は勝利を手にした。
「お強いですね」
男が静かに言った。
下手で素朴な笑顔だった。
彩は少し怒気をはらんだ声で返した。
「……貴方、本気ではなかったですよね?」
対戦の途中、明らかに手を抜かれていると感じた瞬間があった。
勝敗を決める一手で最善を外した、そんな瞬間。
「……そ、そんな事は」
男がキョドりながら否定した。
その反応で確信に変わる。
「絶対に手を抜いていたと思います! この時、こうするなんておかしいです!」
彩は盤上の駒を指差しながら言った。
「……はあ」
「という事でもう一度! 次は本気でお願いします。負けても文句は言いません!」
集金箱に勢いよく五百円を投げ込む。
「お手やわらかにお願いします……」
男はそう言いながら駒を並べ直した。
☆
(どうしてこうなるの!?)
彩は混乱していた。
既に三十戦は超えている。
けれども勝てたのは最初の一戦だけだった。
因みに十戦目以降は無料にしてくれている。
村では学者肌として通っていて、それなりの自信もあった。
数字を扱う思考については、誰にも引けを取らないつもりでいた。
それなのに勝てない。
勝てる気がしなかった。
ラスト一手まで優勢だったはずが、必ず最後でひっくり返される。
盤面を見ると意味が分からない。
どこで差がついたのか、終わってから何度検証しても見えてこない。
「負けましたー」
ガクリと項垂れる彩の目の前で、男はやっぱり下手な笑顔を浮かべていた。
「いえいえ、結構なお手前でした」
「すみませーん。このゲーム、参加できますか?」
離れた場所から声がかかった。
顔を上げると、いつの間にか周囲に人だかりができていた。
美しい女性がひたすら同じゲームを繰り返す光景が、呼び込み以上の集客効果を生んでいたらしい。
「わたしも手伝います!」
彩はおもむろに立ち上がった。
「ふひ?」
男が戸惑いの声を上げた。
「ルールは分かりました。わたしが初心者モードで貴方が鬼モード。こうしましょう!」
「わ、分かりました」
彩が穏やかな入門者向けの対戦を受け持ち、男がより深い対戦を受け持つ。
役割分担ができた事で、ブースは新たなスタートを切った。
彩のテーブル前に長蛇の列が出来上がったのは、しばらくしてからだった。
結果、『数学げえむ』は相当な売上を記録した。
☆
その後、二人だけの打ち上げを行っていた。
学校から少し離れた、それなりに名の通ったホテルのレストランに来ていた。
「今日はありがとうございました。おかげさまで想定の五倍以上の売上を叩けました」
「こちらこそ。こんな良い所に誘って頂いてありがとうございます」
定型の挨拶が終わると場は沈黙した。
運ばれてくる料理を黙々と口に運ぶ。
男は自分から話しかけてくる様子がない。
テーブルは盛り上がらないまま、料理だけが消えていく。
彩は目の前にいる男の一挙一動を見ていた。
容姿、マナー、服装。
全て普通に小さく収まっている。
そう見えて持っている頭脳は桁が外れている。
数学を盤面に乗せたゲームで、三十戦以上して一度も勝てなかった。
その事実が全てを物語っていた。
(……少し試させて貰ってもいいよね)
おもむろに、彩はカバンから紙を取り出した。
研究中の保存魔法の数式だった。
「……この式なんですが」
「これは……何ですか?」
「わたしが研究している特殊な式なんですが、どうしても上手くいかなくて止まっているんです」
魔法や魔術という言葉は使えないので、独自の理論体系として誤魔化しながら説明した。
「……面白いです。がココと、ココと、ソコがおかしいと思います。これも無駄じゃないかな?」
一瞬だった。
彩が数ヶ月悩み続けてきた問題を、この男は数秒で解決した。
指摘された箇所を見ると納得できる。
彩だと思いつかない発想の転換が必要だった。
「これはどうですか?」
彩は次の紙を手渡した。
それは魔力回路の研究資料だった。
「これはもっと簡単ですね。ココをこう変えるだけです。この部分をこういう風に変えればもっと効率が良くなりそうですね」
「…………素晴らしいです」
旧月家として育った彩の思考回路が、その瞬間から動き始めた。
(この人の遺伝子が欲しい)
魔術師の魔法は、遺伝によって継承されると考えられている。
だから魔法を絶やさない為に、魔術師同士の結婚が村では推奨されていた。
彩も魔術師の未来を考えて、そうあるべきと考えていた。
それが村の閉塞感につながっていると知りながら。
だが類稀な数学の才能を目の前にして、それを取り込むというのも睦月家の未来を明るくすると考えた。
彩は既に決断していた。
「この後、時間はありますか? 相談したい事がたくさんあって……」
「だ、大丈夫ですよ」
「良かった。このホテルに部屋をとっています。後で移動しましょう」
「ふひ?」
そして夜は更けていった。
☆
旅行から戻って六週間が過ぎた頃、彩の懐妊が発覚した。
親からは血の繁栄だの睦月の恥だの小煩く言われたが、彩は全く気にならなかった。
(上手くいって良かった)
名前も年も住所も、何も知らない男性との子供。
それでも彩は満足だった。
あの頭脳の遺伝子が、この子に宿っている。
それだけで充分だった。
☆
その頃から、村で睦月家が人体実験をしているという噂が立ち始めた。
「ねえ、隼。噂の元を探ってくれる?」
「ハッ!」
警護隊長の宮司隼は足早に出て行った。
(何か分かればいいんだけど……)
彩は自分の研究資料を見直しながら、噂の出所を考えていた。
睦月家が人体実験をする理由も、設備も、動機も存在しない。
それが意図的に広められているとしたら、目的が分からなかった。
二週間後、噂の出処は不明だったという報告書が隼から提出された。
その内容を読んだ彩の手が止まった。
☆
半年ほど経過した頃。
皐月家が魔力回路研究所という施設を立ち上げた。
彩が旧月家会議で発表した『魔力回路の原理』によって、魔力回路が魔力の礎になっているという事実が、旧月家全体に広まっていた。
その発表が、この施設の設立を後押しした形になっていた。
人を集めて魔力回路を人体的に研究する施設。
集められるのは六十歳以上の老人と、三歳未満の幼児だという。
(魔力回路は心臓にある器官なのに、研究なんてできるの?)
心臓は普通の外科手術でさえ超高度な技術が必要だ。
そこに含まれる器官の研究などできるはずがない。
そもそも研究と言いながら、なぜ対象が老人と幼児なのか。
彩の杞憂は日を追うごとに増していった。
☆
更に二ヶ月が経過した。
魔力回路研究所から人体実験の痕跡が見つかったと発表される。
詳細や経緯、内容は個人情報の兼ね合いで伏せられたが、村内から睦月家への視線が厳しさを増した。
同時に魔力回路の研究は順調だという発表も行われた。
「彩様、研究所がきな臭いみたいです」
「ええ、聞いているわ」
膨らんだ腹をさすりながら、彩はため息をついた。
「被験者が戻らないとの事です」
「……そうね」
(この子が生まれたら研究所に入れられる。どうすれば……)
彩はどうにかして子供を守りたいと考える。
「ところで睦月家の人体実験の件は……」
「わたし達がそんな事するはずないでしょう? 設備だって持っていないし」
「そうですよね。失礼しました」
文は深々と頭を下げた。
彩は窓の外を見た。
冬の曇った空が、村の上に低く垂れ込めていた。
最近は警護隊長の隼の姿を見かけないことが増えていた。
☆
その一ヶ月後、彩は文と一緒に隣県の産婦人科に来ていた。
「文さん、ごめんなさい」
「気になさらないで下さい、彩様」
村では睦月家への嫌悪が、この一ヶ月で不自然なほど急激に進んでいた。
誰かが組織的に、その感情を煽り続けているように。
「危なかったですね」
「先生は、いつ生まれてもおかしくないって」
「でも逆子と言われてませんでした?」
「それは対策済よ。わたしに何かあっても、この子は月隠が守ってくれる」
「彩様!? それは……」
「ええ、刻印を譲ったわ。……わたしは、この子さえ無事なら何も要らない」
文は何も言えなかった。
腹にいる子供に秘術の刻印を施したというのだ。
「睦月様、病室を案内します」
「分かりました。行きましょう、文さん」
「……はい」
狂気じみた気概を感じた文は、彩の後ろを歩きながら言葉を持てないでいた。
☆
病室は二人部屋だった。
古い病院ならではの造りで、窓際と入口側にそれぞれベッドが置かれている。
彩が入ると、すでに先客がいた。
みすぼらしい女性だった。
身を包む衣類は安価なもので、その目には深い疲労が滲んでいる。
腹の大きさから察するに、出産の時期はほぼ同じだろう。
「こんにちは。今日からよろしくお願いしますね」
「こんにちは」
女性は一瞥もせず、返事だけした。
「感じが悪い同室の方ですね」
文が小声で悪態をついた。
「まあまあ、文さん。人が苦手な方もいることだし」
彩は気にしなかった。
荷物をテーブルに並べながら、その女性を観察していた。
貧しいくて疲れている。
そして何かを深く憂えている目をしている。
「それでは、わたしは帰りますね。何かあれば駆けつけるので連絡して下さい」
「いつもありがとう、文さん」
文が部屋を出た。廊下に出たところで、文は何気なくドア横のネームプレートを見た。
彩の同室者の名前は、六月優子という女性だった。
その夜、彩と六月優子の陣痛は同時に始まった。
☆
出産して三週間が経過した。
彩は新生児室に我が子を迎えに来ていた。
保育器が並ぶ静かな部屋に、大きな窓から朝の光が差し込んでいる。
看護師は今日に限って、面会対応で詰め所に引っ込んでいた。
この古い田舎の病院では、新生児面会に看護師が付かないことがある。
彩は足を止めて、自分の子の前に立った。
ネームプレートには「睦月楓」と書かれていた。
隣の寝台のプレートには「六月楓」と書かれていた。
名前の偶然に、彩は短く息を吐いた。
後ろを振り返った。
静かな廊下には人の気配は感じられない。
彩は深呼吸する。
(絶対に大丈夫よ。何度もシミュレーションをしたし、何千回も練習したじゃない)
そして静かに眠る我が子の左胸に手を置いた。
無属性魔法が指先から静かに広がっていく。
心臓の中に潜む魔力回路を、薄く繊細な膜で包むように囲んでいく。
外部からの検査では感知できないよう密閉する。
(これで外部から、この子の魔力回路は分からない。保存期間は三十年、これが今のわたしの限界ね)
激しい疲労感が彩を一気に襲った。
出産からまだ三週間しか経っていない。
回復しきれていない体力が、魔法の消耗でさらに削られていく。
それでも手を止めるわけにはいかなかった。
チャンスは今しかないのだから。
再び後ろを確認した。
廊下は静かなままだった。
彩はゆっくりと我が子を抱き上げた。
温かかった。
小さかった。
(これから行う事は犯罪。それでも、わたしはこの子を守りたい!)
目を閉じて、一拍だけ間を置いた。
それから彩は我が子を隣の寝台へと移した。
続けて隣の寝台に寝ていた子供を抱き上げた。
「何してるんですか?」
後ろから声がした。
鼓動が跳ね上がったが平静を装う。
振り返ると六月優子が立っていた。
ぼんやりとした目でこちらを見ている。
「赤ちゃんを抱いていました」
彩は視線を合わせず短く告げた。
優子は彩の隣に来ると、寝台の中を覗き込んだ。
我が子を確認するように。
それから自分で抱き上げた。
「この子を育てることができるか、不安で……」
優子がぽつりと言った。
「気持ちが不安になるのは分かりますが、きっと大丈夫ですよ」
「うちは貧しくて、毎日の生活もままならないんです。こんな事、貴女に話しても仕方ないですね」
「いえ、そんな事は……わたしはこれで失礼します」
彩は抱いている赤ん坊を、そっと寝台に置いた。
ゆっくりと丁寧に。
それから部屋を出た。
廊下を歩きながら、彩は一度だけ後ろを振り返った。
閉じた扉の向こうで、六月優子が我が子だと信じる赤ん坊を抱いている。
彩は廊下の突き当たりの窓まで歩いていくと、立ち止まった。
窓から差し込む朝の陽光は、罪を背負った心を慰めてくれるような優しさがあった。
胸の中で言葉が生まれかけて消える。
謝罪なのか、祈りなのか分からなかった。
☆
一ヶ月後。
睦月本邸に戻った彩は窓の外を見つめた。
夜空には、細い月が浮かんでいる。
先日、生まれて間もない楓が研究所へ連れて行かれた。
そして今日、戻ってきた。
「魔力回路なし」
研究所から告げられたのは、それだけだった。
今は部屋の片隅にあるベビーベッドで寝息をたてている。
彩は月の光に照らされながら、もう見ることが叶わない我が子を想う。
「どうか魔法と縁がない場所で過ごしてね。大罪人のわたしが言えた事でないけれど」
「やはり彩様、貴女でしたか」
突然、部屋の扉が勢いよく開いた。
「隼!? どうしたの――え?」
宮司隼の右手に日本刀が握られ、焔が揺らいでいた。
「霜月巌様――お館様の命により、睦月家を討伐致します。理由は人体実験により魔術師の命を粗雑を扱った事。ここ数カ月、村で行方不明が頻発しておりました。申し開きがあればお聞きしますが」
「……父や母はどうしていますか?」
「既に討伐を執行させて頂きました。この館には火を放っております」
「……そう。わたしは懺悔の時間が欲しいわ。逃げないから席を外してくれない」
「承知しました。睦月様、これまでありがとうございました」
「良いのよ。隼」
隼が部屋から出ていくのを見届けて、彩は机に入れていた小さな箱を取り出した。
「先を越されちゃったなあ。きっと、あの研究がアイツらには面白くなかったんでしょうね」
炎が部屋を赤く染めだした。
もう時間はほとんど残されていないと思われる。
彩は箱に無属性魔法を重ね続けた。
「これが最期の仕事なんだから出し惜しみはなし。魔法の保存期間は無期限にして、無属性の魔素によって解除される、と」
見えなくなった小箱をテーブルの上に置いた。
部屋の端では赤ん坊が何も知らずに眠っている。
それを見て彩の頬が涙で濡れた。
この結末はある程度、予測してはずなのに。
「何も知らずにここに連れて来られた可哀想な赤ちゃん。わたしに出来る事は少ないけれど……」
彩は我が子を無属性魔法で包み込む。
保存期間を二十四時間で設定して。
周囲は既に高温になっており、息をすると喉が熱気で焼かれそうになる。
「楓、生きて……」
もう見届ける事の叶わない、我が子に向けて願った言葉を豪火は赤く焼き尽くした。




