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第八話 逆賊の夜

 数日間。


 エドとアカネは森の廃小屋で過ごした。


 傷は少しずつ癒え、顔色も良くなっている。


 そして。


「勇者様、もう歩けそうですね」


 エドが言う。


「明日の朝、出発しましょう」


 するとアカネが少し困ったように笑った。


「もう勇者様って呼ぶの、やめてもらえませんか?」


「え?」


「魔王もいなくなったし、私はもう勇者じゃないもの」


 アカネは少し恥ずかしそうに続ける。


「これからはアカネって呼んでください」


 エドはしばらく考えた。


 そして頷く。


「分かった」


「これからはアカネだな」


「敬語もやめる」


 アカネの表情が明るくなる。


「うん!」


「よろしくね、エド!」



 翌朝。


 二人は小屋を後にした。


 目指すのは国境。


 森を抜け、近くの村へ向かう。


 だが。


「あれ……」


 アカネが足を止める。


 村の入口には兵士が立っていた。


 こんな小さな村には不自然な人数だ。


 何かを探している。


 エドはすぐに身を隠した。


「アカネ」


「たぶん俺たちだ」


 アカネの顔が曇る。


「そう……」


「村は諦めよう」


「うん」


 残念そうだった。


 数日ぶりの人里。


 温かい食事も期待していただろう。


 だが危険すぎる。


 エドは地図を見る。


 国境まであと少し。


 だが途中に町が一つある。


 今の状況では近づけない。


「今日は森で野営だ」


「分かったわ」



 夜。


 焚火は小さく。


 交代で見張りをする。


 アカネが眠りにつき。


 エドが見張りをしていた時だった。


 ヒュッ。


 風を裂く音。


 矢だった。


 エドは咄嗟に身をかわす。


「アカネ!」


「弓だ!」


 アカネが飛び起きる。


 エドは近くの石を拾った。


 気配の方向へ投げる。


 ゴッ。


「ぐえっ!」


 暗闇から声がする。


 エドは次々に石を拾う。


 一投。


 二投。


 三投。


 四投。


「うっ!」


 命中。


 さらに投げる。


 また命中。


 エドの武器は石だった。


 怪力。


 それだけ。


 だがソロでBランクまで上がった理由でもある。


 石を投げれば大抵の敵は倒せる。


 それだけの腕があった。


 だが。


 まだいる。


 暗闇の中から二人。


 短剣と長剣。


 一気に飛び込んでくる。


 エドは短剣の男の腕を掴む。


 そのまま振り回した。


 長剣の男へ叩きつける。


 二人まとめて吹き飛んだ。


 すかさず石を投げる。


「ぐえっ!」


「げふっ!」


 静寂。


 戦いは終わった。



 捕まえた男を尋問する。


「誰の差し金だ」


 男は怯えながら答えた。


「しょう……賞金だ……」


「賞金?」


「荷物持ちのエド……」


「勇者の遺体を盗んだ逆賊……」


「生死は問わないって……」


 エドは目を閉じた。


 やはり。


 王国は動いていた。


 そして。


 アカネは隣で小さく震えている。


 エドは空を見上げた。


 逃亡生活は。


 思った以上に厳しいものになりそうだった。

 

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