第四話 召喚された勇者
私は西谷アカネ。
十七歳。
高校三年生。
その日もいつも通りだった。
学校が終わり、友達と別れ、家へ帰る途中。
信号待ちをしていた時だった。
突然、足元に光る模様が現れた。
「え?」
逃げる間もなかった。
足元の模様が強く輝き、視界が真っ白になる。
次の瞬間。
私は知らない場所に立っていた。
◇
そこは大きなホールだった。
白い壁。
高い天井。
教会のような雰囲気。
足元には光る魔法陣。
周囲には黒い服を着た魔法使いのような人たちが十人ほど立っていた。
「成功だ!」
「勇者召喚は成功したぞ!」
「やりましたな!」
周囲は歓声に包まれていた。
私は状況が理解できなかった。
アニメや小説で見たことはある。
異世界召喚。
だが、まさか自分が。
そう思っていると、一人の男が前へ出た。
豪華な服を着た年配の男だった。
「貴殿が召喚に応じた勇者か?」
私は慌てて首を振る。
「私は勇者ではありません」
「召喚にも応じていません」
「元の場所へ戻してください」
男は表情を変えなかった。
「戻す方法はない」
「貴殿は勇者召喚によって呼ばれた者だ」
「何らかの力を持っている」
「後ほど国王陛下に謁見してもらう」
「その時に事情を聞くがよい」
そう言うと男は部屋を後にした。
私は別室へ通される。
何を聞いても誰も答えてくれなかった。
どれくらい待ったのか分からない。
やがて案内され、広い部屋へ通された。
◇
玉座には王。
その隣には王妃らしき女性。
左右には多くの貴族たち。
私が入った瞬間。
「やはり醜いな」
「異世界人とはあのような顔なのか」
「本当に勇者なのか?」
そんな声が聞こえた。
意味が分からなかった。
私はいつもの私だ。
なのに。
みんなが私を見る目は冷たかった。
「宰相、進めよ」
王の言葉で、先ほどの男が前へ出る。
宰相だったらしい。
「鑑定士を」
「はっ!」
老人が前へ出て私に手をかざした。
しばらくして叫ぶ。
「この者は勇者で相違ありません!」
「恩恵は再生です!」
その瞬間。
部屋がざわめいた。
「再生だと!」
「魔王とは正反対の恩恵!」
「奇跡だ!」
さっきまで私を見ていた人たちが、今度は恩恵の話を始めていた。
王が口を開く。
「勇者よ」
「魔王が復活した」
「お主には魔王討伐を命じる」
私は恐る恐る尋ねる。
「断ったら……どうなりますか?」
王は静かに答えた。
「処分する」
その一言で十分だった。
断れない。
そう理解した。
「魔王を討伐した暁には褒美を与える」
「第三王子セシリオを夫として迎え入れよう」
私はそちらを見る。
そこにいたのは、まるで物語に出てくる王子様のような青年だった。
整った顔立ち。
優しそうな笑顔。
少しだけ胸が高鳴った。
どうせ断れない。
だったらやるしかない。
「謹んでお受けいたします」
私はそう答えるしかなかった。




