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第二話 決戦前夜

 夜の森をエドは走っていた。


 腕の中の勇者アカネを抱えて。


 必死に。

  

 冷たい。

 

 重い。

 

(どうしてこんなことになった……)

 

 エドの脳裏に昨夜の出来事がよみがえった。

 


 魔王城攻略前夜。


 勇者アカネは早くから眠っていた。


 明日は魔王との決戦。


 誰もが緊張していた。


 荷物持ちのエドは焚き火の薪が足りないことに気づき、近くの林へ向かった。


 その時。


「明日、決行する」


 聞き覚えのある声に足を止める。


 木陰の向こうにいたのは第三王子セシリオと宮廷魔術師ミーアだった。


「とうとうですのね」


「ああ」


 セシリオは吐き捨てる。


「これでようやく終わる」


「あんな女との結婚などまっぴらだ」


 エドは息を呑んだ。


 勇者アカネ。


 魔王討伐の後、第三王子との婚姻が決まっている。


 国王は勇者の血を王家へ迎えるつもりなのだ。


「父上も狂っている」


「勇者の力が欲しいからといって、あんな異世界人を王家に迎えようなどと」


「私もそう思います」


 ミーアは頷いた。


「あの顔も振る舞いも好きになれません」


「平民のくせに王妃になるつもりなのですから」


 セシリオは鼻で笑う。


「魔王はあの女に倒させる」


「俺たちは適当に援護するだけだ」


「そして魔王を倒した瞬間に始末する」


 ミーアが微笑む。


「魔王の最後の一撃ということですね」


「ああ」


「勇者は名誉の戦死だ」


 エドの背筋が凍った。


 二人は本気だ。


 勇者を殺すつもりなのだ。


(勇者様に知らせるべきか……)


 だが相手は第三王子。


 証拠もない。


 荷物持ちの自分の言葉を信じてもらえるだろうか。


 そして翌日。


 魔王は倒れた。


 勇者は倒れた。


 そして。


『なんと……朗報だ』


 あの言葉を聞いた瞬間。


 エドはすべてを理解した。


 昨夜の会話は。


 すべて本当だったのだ。

 

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