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REZON 完全版 コトノハノ鏡 -秘められた神話の旅-  作者: 壇 瑠維
第1部 「神話の門」 第1章

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「先端AI研究所の御堂真理」 03

2025.4.26 20:00 東京・真理の研究室


「それでは、定刻になったので始めます!」


 宣言する真理を見ながら桐生と宮本が同時に「国会か」とボソッと呟いた。

 幸い真理の耳には届いていなかったようで、巨大モニターを見ながら説明を始める。


「まずはここまでの情報共有を。


 <事件の概要>

 ・最初の事件:3月28日金曜日の深夜 都内某駅からすぐの並木道。

 ・次の事件 :4月4日金曜日21時前 都内商業ビルの巨大モニター前。

 ・第3の事件:4月11日金曜日22時過ぎ 奥多摩の人通りが少ない公園。

 ・第4の事件:4月18日金曜日21時過ぎ 都内某駅からすぐのマンション内

 ・第5の事件:4月25日金曜日24時前 新宿繁華街


<殺害方法>

 ・アンティークナイフによる刺殺(形状は古墳から出土する銅剣に酷似)


<凶器の入手経路>

 ・闇バイトの若者を使い個別に配送


<被害者の共通点>

 ・現在のところ無し


<加害者の共通点>

 ・殺害実行後満足げな笑みを浮かべたまま黙秘を継続。直接的な関わりは無し

 *ただし第5の事件の加害者は殺害実行後に自殺したため除外


<殺害の動機>

 ・真実のAI教による殺人教唆(確定しているのは4件目のみ)


 ここまでの認識に違いはないかしら?」


 真理が皆を見渡すが特に異存はないようだ。


「では、ここからが本題。何もしなければほぼ確実に5月2日金曜日の夜に犯行が繰り返されます。今日集まってもらったのは、5月2日だけではなくそれ以降の事件も食い止めるため」


 宮本が手を挙げて発言した。


「やりたい事は分かるんだが、なぜこのメンバーなんだ?恥ずかしながらAIには疎くてね。その分野の話にはついていけそうな気がしない」


 隣で南がうんうんと頷いている。


「ご心配なく。犯人の確保と加害者候補の潰し込みまでが計画の内ですので。そこは刑事さんのお力が必要になります」

「これ、本庁でやっていただくと総監あたりが泣いて喜びそうなんだが・・・」

「企業秘密満載なやり方なんで、それはお受けしかねます」

「だが、目の前で今から見せてもらえるんだよな?」

「失礼ながらAIに関する事は実際ご覧になってもうまくご説明できるものではないと考えております。これは決して馬鹿にしているわけではなく、一般的なAIの概念から大きく外れるものもあるため、逆に分かる人の方が少ないんですよ。ただ、警察のエキスパートの方であれば肝の部分に勘付いてしまうかもしれないので予防策とお考えください」

「分かった。話の腰を折ってすまなかった。続けてくれ」

「私と麗蘭、マイクがそれぞれ開発しているAIは同じ目的に対して全く異なるアプローチを行います。それも極端に方向性を振り切っているので、いわゆる市場のAIと比べると候補となる要件の数と質が雲泥の差になります」

「異なるアプローチとは?」


 宮本の質問にマイクが答える。


「ざっくり言えば僕の開発したA2Zはロジカルな優等生。真理の開発したSOPHIAは心優しき委員長。麗蘭の開発したTRUTHはサイコパスな問題児、って感じです」

「そのサイコパスに何回助けられたと思ってんのよ!」

「ごめん麗蘭、侮辱する意味ではなかったんだ。ただ、どういった方向性の違いかを伝えるにはこんな感じが良いかと思ったのさ」

「話を少し戻すわね。で、それぞれのAIは得意分野があって、そこがうまく棲み分けできているの。マイクのA2Zはロジカルに事実関係を元にした分析と未来予測。麗蘭のTRUTHはWEBの表面には出てこないコアな情報収集とピーキーな分析による結果予測。私のSOPHIAは事実の正誤ではなく感情を元にした背景分析と複数の予測を行う。3者の答えが全く重ならない場合は前提に間違いや抜けがあると仮定してやり直し。それを突き合わせていくうち、理論・直感・感情のいずれにも該当する答えが導き出される。突拍子もないものであっても、ほとんどの場合はそれが真実だったわ」

「REZONの3賢者と呼ばれる所以ですか・・・」


 南が感心したように呟く。


「あら、懐かしい呼び名ね。マイクが理性を司る“reason”、真理が共鳴を司る“resonance”、私が存在理由を司る“raison d'être”を得意としてたから、いい感じの造語を作ったらいつの間にかそう呼ばれるようになってたの」


 麗蘭に褒められ南は顔を赤らめる。


「まずは事実を共有しました。もちろん3つのAIもリアルタイムに同じ情報を認識しています。さてここから、“魔の金曜日の終わらせ方”について協議してもらうわ。随時表示される情報に対しては私たち3人がリアルタイムに各AIへの調整をかけていくから、その間よかったら宮本刑事と南刑事は桐生君提供のティータイムを堪能いただけると助かります」

「ちなみにどれぐらい時間がかかるもんなんだい?」


 宮本の質問に真理がうーん、と首を傾げる。


「これまでの最短は5秒。最長でも72時間は超えてないですね」


 やっぱりこいつらは魔女に違いない。宮本にとって桐生の入れるコーヒーが美味い事だけが救いだった。

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