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REZON 完全版 コトノハノ鏡 -秘められた神話の旅-  作者: 壇 瑠維
第1部 「神話の門」 第4章 

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「2025年宇宙の旅」 09

2025.6.26 19:00 東京・真理の住むマンション


 東京へとんぼ返りした真理と桐生が連れ立ってマンションに入って行った。オートロックを解除し、エレベーターで8階へ。

 ホールを横切り、真理がバッグから取り出したキーで玄関を開ける。異変はその瞬間に明らかになった。

 床に散らばる衣類や袋、タンスには物色されたと思わしき形跡がありありと残されていた。


「まさか、AI教・・・?」


 真理が緊張感を纏い身構えながら桐生に囁く。桐生がため息と共に答えた。


「・・・それはないっす」

「へ?」

「だってこれが先生の部屋のデフォルトですから」

「嘘・・・こんな場所に住める人間なんて・・・」


 真理がワナワナと震える。


「同感です。ちょっと目を離すとすぐにこうなる・・・」


 桐生が手慣れた感じで床のものを拾い上げ、選別する。


「あ、あなた、それ下着じゃないの?何考えてるの?」

「だって、洗濯しないといつまでもこのままですし」


 真理はめまいを起こしたようだが、何とか踏みとどまった。お気づきであろうが、この真理、麗蘭が変装したものである。


「桐生・・・」

「はい?」

「24時間あげる。この空間を人が住める状態にして!」

「部屋じゃなくて空間と来たかあ・・・それはちょっときついかな・・・」


 桐生が言い終わるより早く、麗蘭はスマホを取り出し何処かへ電話をかけた。


「もしもし、宮本?麗蘭よ。今、そこに南もいる?」


 マジかこの人。桐生は心の中で同志に手を合わせた。


「来れない?私が頼んでるのに、来れない?いつから仕事の方が大事なんて言うようになったの!見損なったわ!」


 いや、それ普通だろ。桐生は声には出さずツッコんだ。と、電話を切った麗蘭が不機嫌全開でこちらを見ている。しまった。目あっちゃった。


「と言う事で桐生、12時間以内に何とかしなさい。これは命令よ」


 言うが早いが、麗蘭は回れ右してエレベーターに向かってしまった。多分、今日は絶対戻ってこない。

 目の前に広がる魔境。これを12時間以内に潔癖症で完璧主義な麗蘭のお眼鏡に叶うように仕上げる?桐生は思った。これがアマテラスの言ってた、祟りか。



◇◇◇



2025.6.25(前日) 夜/日向のホテル・マイクの部屋


「それはいいとして、次の満月までに残された時間は16日。それで何とかなるもんなんっすか?」


 月齢表を差しながら桐生が尋ねる。


「元々14日か15日の予定だったのが11日に変わっただけだ。誤差範囲だよ」


 マイクが事もなげに答える。


「それは頼もしい限りじゃ。して初音殿、天に届ける音の目当てはついておるのか?」

「はい!神様にふさわしいものを選ぶつもりです。神楽とか、クラシックから!」

「・・・ちと妾が思うものと異なるやもしれん。明日一度聞かせてみよ」

「承知いたしました!」

「それはそうと・・・」

「何じゃ?まだあるのか?」


 アマテラスがいい加減飽きた感じで桐生を見る。


「えーっと、今のところ先生はアマテラス様の中で眠っている感じなんですよね?その間、先生宛の仕事やら何やらはどうしたものかと・・・」


 確かに真理に会うつもりでアマテラスに対応されるとこちらの正気を疑われかねない。


「ふむ。そうじゃな・・・では、依代を使うとしよう」

「依代?既に先生がアマテラス様の依代になってるんじゃないっすか?」

「ああ、そうじゃったの。人の場合は“影武者”と言うのであったな」

「影武者っていう事は・・・」


 全員の目が麗蘭に向かう。


「私?絶対来ると思ったけどやっぱり私?でも、真理の研究内容なんか全然分からないわよ?」

「妾はこちらにて“宴”を仕切るゆえ場を移せん。しかし、このSOPHIAとお主のTRUTHをリアルタイム接続し、真理殿の深層心理より適切な答えを都度伝えるよう計らおう。何、コロナウイルスの陽性反応が出た故自宅にて対応すると言えば通る話であろう」

「・・・アマテラス様って何でそんなPC詳しいの?」


 桐生がもっともな質問をした。


現世うつしよの今を知らず、神頼みなど聞いておれるか!下手なエンジニアよりよほど良い腕を持っておるわ!」

「レベルによってはスカウトしたい人材・・・この場合神材っていうのかしら?ぜひ後でお話しさせていただきたいわ!」


 麗蘭の目がキラキラ光る。


「気持ちは分かるが妾を独占しようなぞ考えるでないぞ。今はあくまで“宴”のために顕現しておるだけだからのう」


 しょんぼりする麗蘭。が、気持ちの切り替えは早かった。


「分かりました。女神アマテラスのスカウトは断念します。そして真理の影武者の件もお引き受けします。ただし」

「ただし?」

「一人での対応には限界があります。従者として桐生を所望します」

「俺?」

「うむ、よかろう。心ゆくまで使い倒すが良い」


 気づけばえらい状況に追い込まれていた。が、桐生自身ロケットにはさしたる思い入れもないのでまあマシかな、考えていた。この時は。


「あと、私が真理の影武者になった場合、女神アマテラスがそのままのお姿では周りが混乱します。ご自身で見た目を変えることはお出来になりますか?」


 麗蘭の問いにアマテラスが何をしょうもない事を、と不遜な笑みを浮かべた。


「さもありなん。正装でも良いのだが、それでは妾の威光が強すぎて誰も近づけまい。こういう感じでどうじゃ」


 言った瞬間、アマテラスの姿が変化した。黒髪は明るい茶髪に、顔つきはさらに幼く、体自体も小柄になった。


「明日、神社にて巫女装束を借りるとしよう。宮司からアマテラスの神託を受けた巫女、とでもしておけば良かろう」

「女神アマテラス、さすがです。学生時代の真理を思い出します」

「マイクもそう思った?私もちょっと懐かしくなったわ」


 桐生は・・・これはこれでいい、と単純に見惚れていた。


「では、明日の朝より“宴”の準備にかかる。大学での挨拶を終えたら、麗蘭殿と桐生殿はマイク殿のプライベートジェットで東京の真理の自宅にて待機。宴の実行予定は7月11日深夜、正確には7月12日の夜明け前じゃ。二人は11日の夕方には戻るように。場所は宮司の心臓が破裂せぬよう、ロケットの発射実験場とする。以上!」


 アマテラスの号令で波乱の2日目が終了した。

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