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REZON 完全版 コトノハノ鏡 -秘められた神話の旅-  作者: 壇 瑠維
第1部 「神話の門」 第2章

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「那智の女子高生占い師」 03

2025.5.11 16:00 熊野那智大社表参道


 時間きっかりに真理と桐生はリナの館を訪れた。最後のお客さんが終わったところのようで、うーんと伸びをしている。リナは二人の姿を認めると、中の椅子に座って待つよう促した。


「この格好って結構きついんですよね。おかげで身バレしないんですけど。ちょっと着替えてくるのでしばらくそこで待っててくださいね!」


 カーテンの奥に消えるリナを見送り、桐生が悟ったように腕組みして真理に語りかけた。


「ああいうのをギャル、って言うんですかねえ。少なくとも俺の好みではないっす」

「そう言うお店が好きじゃなかったの?」

「違いますよ!俺は常に清楚一筋!」

「へ〜え、桐生さんは清楚なのが好みなんだ」


 カーテンの向こうから衣擦れの音と共にリナの茶化すような声が飛んできた。


「い、いや、決して君が魅力的でないという意味ではなく・・・」


 桐生の言葉は現れたリナによってどこかに飛んでいってしまった。目の前に現れたのは艶やかな黒髪をポニーテールにまとめたセーラー風姿の少女。派手なメイクの跡はなく、ナチュラルな顔立ちは遥かに子供っぽく見える。


「驚いた?普段はこの姿でちゃんとJKやってるんですよ!」


 エヘンと胸をはるリナに桐生は開いた口が塞ぐことも忘れ見惚れている。無性にイラッとした真理が桐生の手の甲をつねった。


「痛っ!って君、本当にリナさん?」


「リナは芸名みたいなもんですけどね。本名は気が向いたら教えてあげます!」

「ではリナさん、のままで話を進めるわね。早速なんだけど、熊野の行者に関する伝承について教えてもらえるかしら?」

「いいですよ。ただ、この話って殆ど知ってる人がいないはずなんです。何で私が知ってるって分かったんですか?」

「それは企業秘密。あえて言うなら、神様のお告げと言っておくわ」

「神様のお告げって、まさかあなたも・・・?いや、それは今はいいでしょう。で、初めに断っておきますがこれは文献などに記載されている正式なものではなく、あくまでこの地方に伝わる言い伝えの類なんです。だから、それが本当かどうかと言われれば眉唾です、と言うのが答えになります」

「分かったわ。続けてちょうだい」


 リナは軽くコホンと咳をして、熊野の伝承を語り始めた。



◇◇◇



「時は鎌倉の頃。ある修験者が苛烈な修行に明け暮れていました。最難関と言われる四十八の滝行を経て一の滝・・・那智の大滝のことですね。そこで天の声を聞いたと言います。天の声曰く、“真実の言の葉を紡げ。さすれば門は開かれる”」


 真理と桐生が驚いた顔で目を合わせる。


「修験者は“門”が天そのもの、高天原につながる道への入口と考えました。では、真実の言葉とは?修験者は悩みました。単純に“高天原に行きたい”ではないでしょう。実際その言葉では何も起こらなかったそうです」


 今や二人はリナの話に息をするのも忘れるほど聞き入っていた。


「修験者は考えました。天に至るだけの霊力を身につけよう。天が認めるだけの力を持った時、言の葉は自然と紡がれるはずだ。修験者は天雲上人と名乗り、“常闇の壁”と呼ばれる場所で人知れず過酷な修行に打ち込みました。その際、人智を超えた霊力を納める器として古代から伝わる勾玉を使用したと言われています」


 リナの話は続く。


「気の遠くなるような歳月を経て、勾玉に込められた霊力が溢れんばかりになりました。その頃になると、溢れ出る霊力に山が震え、獣は逃げ出したと言われています。天雲上人は“常闇の壁”を後にして、一の滝へ向かいました。折しも満月が滝を照らし、天へと続く道のように見えたと言います。天雲上人は溢れ出る思いを言の葉に乗せました。


 “我、悟りを得たり。さらなる高み、高天原を目指す者なり。かの門、いざ開かんや”


 しかし天は何も答えず、ただ滝の音が響くばかりでした。失意に打ちひしがれた天雲上人は“常闇の壁”に勾玉を封じ、今でも悲願を引き継いでくれる修験者を待っている、という事です」


 真理と桐生が張り詰めていた息を吐き出したのを見て、リナが続けた。


「まあ、どこにでもありそうな昔話ですよ。参考になりました?」

「参考どころか」


 真理が昂った気持ちを落ち着けるように胸に手を当てながら続けた。


「それは正に今、私たちが探しているものかも知れない。“常闇の壁”の場所についての言い伝えなんかは残っていないの?」


 リナは困ったような表情を浮かべ、歯切れ悪く切り出した。


「この伝承を追い続けてる変人を一人知ってるんですが・・・正直言って、私その人ものすごく苦手なんです」

「分かった。一緒に来て、とは言わないわ。その人の事を教えてもらえる?」


 リナは嫌そうな顔のまま奥に消え、やがて色褪せた1枚の名刺を持ってきた。


「そこに行って雲龍って人を訪ねてください。機嫌が良ければ何か教えてくれるかも知れません」


 差し出された名刺には非常に個性的な文字が並んでいた。


 波動光学・量子氣共鳴研究総本家

 雲龍堂宗主 導師 雲龍

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