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REZON 完全版 コトノハノ鏡 -秘められた神話の旅-  作者: 壇 瑠維
第1部 「神話の門」 第2章

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「那智の女子高生占い師」 02

2025.5.7 17:00 東京・真理の研究室


 夕方の研究室にフルメンバーが再集結していた。今回結論の骨格が合意を見るまでは比較的早かったのだが、熊野に関する情報の多さが具体的なアクションを絞り込む障壁になっていたが、それもどうやらクリアしたようだ。

 総括を行う前に桐生からのど飴を渡されている真理と麗蘭を見て宮本は「またか・・・」とあきらめ顔で呟いた。


「まずAI教から押収したPCについて。これについては全会一致で一端末に過ぎないという結論になったわ。本体、もしくはサーバーに関するものは別にある。でも、手駒として候補に上がっていた信者がさらに別ファイルに分けられている可能性は限りなく低い」

「これについては常時とはいかないけど、TRUTHが稼働できる限りにおいて前回と同じ電波をキャッチする努力を続けるわ」


 麗蘭曰く、AI教の電波をキャッチするのは人に例えるとずっとイヤホンから聞こえる音に耳を澄ませ、ある日一瞬だけ針が落ちる音をキャッチするようなものらしい。これを続けるにはコンピューターへの負荷が高すぎるため、どうしてもインターバルが必要になるという。


「次に失われた古文書について。これも全会一致でAI教の仕業と結論づけたわ。で、その目的なんだけどこれはマイクから」


「うん。初めて聞いた時は意味が分からなかったんだけど、素直に考えればAI教も何らかの意図を持って“門”を開こうとしている。その時に必要とされる“真の言の葉”がロクでもないものだった場合、一つでも奴らに先行される事はこちらの敗北となる可能性が高い。幸いコトノハノ鏡はこちらの手にあるので、その防衛が重要になる。あと、SOPHIAが残した言葉も引っかかる。門の顕在は福音か破滅か。これは全ての門を開いた時に分かる事なんだと思うけど、奴らの選択はどちらであっても普通の人にとっては破滅にしかならないと思う」

「“豪運君”が何かの間違いで割れてしまう危険性も考慮して、専用のアタッシュケースを準備してくれるのよね?」

「既に空輸したから、近く届くと思うよ。これは桐生君に託す。責任重大だが、宜しく頼む」

「了解っす!」

「最後に熊野の伝承について。麗蘭、お願い」

「鏡は置いといて、ヒットするのは神武天皇の東征に登場する那智の滝と八咫烏の伝説。あとは怪しげな修験道に関する伝説が目白多し。正直どれも決め手に欠けるわね。でも、面白い子を見つけたの」

「面白い子?」


 桐生の問いに麗蘭が艶っぽい笑顔で返す。


「現役女子高生巫女による占いの館」

「現役JK!」


 桐生のテンションが明らかに上がる。

「顔は出してないけど、実際占う時は見せてくれるんだって。レビューを見る限りかなり可愛いみたいよ」

「その子に占ってもらいましょう!何なら今からでも行きます!」

「桐生・・・がっつく男はモテない。いい加減学習しなさい?」

「はい、すみません・・・」

「で、何が面白いかってこの子、2月の時点で春先に起こる東京の事件を暗示するような投稿をしているの」

「偶然じゃなくて?」


 麗蘭が真理の目を見ながら静かに答える。


「それだけならね。でも、レビューを見る限り占ってもらった人たちが“当たる!”と絶賛してるの」

「本物ってことっすか?」

「桐生・・・騙されやすい男は弄ばれる。いい加減学習しなさい?」

「すみません・・・でも、騙すって?」

「占い師ってね、本人すら気づかないうちにその情報を会話から聞き出してその人が最も返して欲しい言葉を選んでお告げをするの。ただの女子高生にそんな技術があるわけないでしょ?」

「つまり?」

「全会一致で熊野の“門”に関するキーパーソンとして彼女をあげている。そして予言した事件と時期、当たりすぎる占いからTRUTHが導き出した答え。マイクのA2Zは賛成、真理のSOPHIAも条件付き賛成した最も重要な仮説」


 麗蘭はそこで一旦言葉を切った。


「・・・彼女、AI教の信徒である可能性が極めて高いわ」



◇◇◇



2025.5.11 熊野那智大社表参道


 長い待ち時間の後、ようやく真理たちの番が来た。占いというからには薄暗い空間を予想していたのだが、白とピンクを基調とした何とも可愛らしい部屋に迎え入れられた。クマやウサギのぬいぐるみが所狭しと並んでいる。


「お待たせしました!現役女子高生巫女のリナです!本日は宜しくお願いします!」


 白く小さなデスクの向こう側に座っていたのは巫女装束の女の子。可愛らしい顔立ちだがやや派手なメイクで、長い金髪を赤いリボンで可愛らしく束ねている。


「どうぞ、おかけになってください!」


 勧められるままに椅子に腰掛ける真理と桐生。既にリナの雰囲気に飲まれかけていた。


「で、今日は何を占いますか?お薦めはお二人の相性運。その他にも仕事運やこれから起こるであろう重大な出来事なんかも占えますよ!」


 長いまつ毛の奥に見開かれた瞳はアイスブルー。恐らくカラーコンタクトをつけているのだろう。

 真理は状況に追いつかずに固まったままなので、桐生が話を進めた。


「じゃ、さっき言ってもらったお薦め全部盛りで」

「ありがとうございます!では先に6000円いただきます!」


 にっこりと右手を差し出すリナ。桐生はいそいそと財布を出し、お札をその手に渡した。


「毎度ありがとうございます!それではお二人の相性運から占いますね。ではまずお二人のお名前と生年月日、血液型をこちらに入力してください!」


 差し出された液晶タブに必要事項を入力する。


「御堂さんと桐生さんですね。お二人の相性は、仕事をする上では抜群!御堂さんが走り、桐生さんがサポートするスタイルが最高の結果を導くようです!」


 続けて何か言おうとするが、一瞬逡巡を見せる。


「ええと、あと、非常にお伝えしにくい事なのですが・・・」

「何か良くない事が?」

「・・・お二人とも恋愛に関するセンサーが風化してるようなので、リハビリを推奨します」

「リハビリ?」


 リナはコクリと頷き言葉を続けた。


「御堂さんは自分が女性、桐生さんは自分が男性であることをもっと真剣に受け止めてください。正直今時の小学生の方がレベル高いです」

「私たちって、小学生以下・・・?」

「小学生未満、です」


 何か釈然としない二人だが言い切るリナにこれ以上追い討ちをかけられると心が折れそうなので次の質問に移ることにした。


「仕事運は・・・越えるべき壁は高いのですが、必ず乗り越える事が出来るでしょう。諦めなければ、素晴らしい結果が待っています!」


 少なくとも恋愛運よりは受け入れやすい内容だった。


「最後にこれから起こる重大な出来事なんですが・・・」


 突然、リナの様子が変わった。白目をむいて、全身が小刻みに震えている。


「これもパフォーマンスなのかなあ?」


 呑気に構えていた二人にこの世のものとは思えない掠れた声が告げる。


「行者ノ伝説ヲ、コノ巫女二尋ネヨ。サスレバ、門ヘノ道ハ開カレル・・・」


 二人とも息をするのを忘れ、リナの様子に見入っている。と、唐突にその目に光が戻った。体の震えも消えている。


「で、何でしたっけ。そうそう、これからお二人に起きる重要な出来事なんですが“好奇心は身を滅ぼす”だそうです」


 早鐘を打つ心臓の音を感じながらも、真理が平静を装って尋ねる。


「えっと、それで全部?」

「はい!何か気になったことでもありました?」

「ありがとう。参考になったわ。あと、これは知ってたらなんだけど」

「はい?」

「熊野の行者に関する変わった伝承なんかはご存知ないかしら?」


 リナの表情が変わった。営業用の笑顔が消え、探るような目で真理を見据える。


「・・・それが目的ですか?」

「それは知ってる、と捉えていいかしら?」


 リナはため息を一つついて恨めしげに真理を見た。


「賢そうな方だとは思いましたが・・・見事にやられました。お話はさせていただきますが、長くなりそうなので16時の営業終了後にもう一度お越しいただけますか?」

「無理を言ってごめんなさいね。宜しくお願いするわ」

「それって、追加料金はいるのかな?」


 不安げに尋ねる桐生にリナが冷たく言い放った。


「・・・せこい男はモテませんよ?」

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