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REZON 完全版 コトノハノ鏡 -秘められた神話の旅-  作者: 壇 瑠維
第1部 「神話の門」 第2章

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「那智の女子高生占い師」 01

2025.5.11 熊野那智大社表参道


 石段を登る観光客の列の中で、若いカップルが興奮気味にスマホを覗き込んでいた。


「え!ここってあのJK巫女の店じゃない?」

「マジじゃん。整理券まだあるかな?」


 熊野那智神社の参道には、長い階段の左右に様々な建物や店舗が軒を連ねている。その一角に一際目立つ門構えの小さな建物があった。看板には「現役女子高生巫女による占いの館」と書かれている。週末限定の営業ということもあり開店と同時に観光客が列をなすが、元々「とにかく当たる」という評判が確立したのは2月にブログで予言した「春の東京に赤く染まった桜が咲き乱れる」という一文だった。


 ブログの自己紹介には巫女衣装に狐の面を被った写真を掲載しているが、「実際にお会いする時はお面を外すので美少女ぶりにご期待ください!」という一文が添えられており、素顔の撮影とSNSへのアップなどはNGとしているがコメント欄には「予想以上の可愛さだった」「巫女さんのファンになりました」という称賛にならび「正直こんなに当たるとは期待してなかったのでびっくりです」と言ったコメントが並ぶ。今では午前中で整理券が消えることも珍しくなかった。訪れる観光客は半分冷やかし、半分本気で訪れるが帰る頃には誰もの顔が驚きに彩られていた。


 今その列の中に真理と桐生の姿がある。REZON三者会議の結果、この場所を訪れる事になったのだ。「JK巫女の素顔楽しみ〜」とはしゃいでいる桐生を軽蔑の目で見ながら、真理は先日行われた会議の内容を思い出していた。



◇◇◇



2025.5.7 10:00 東京・真理の研究室


 巨大モニターの前で、また怨念のようなオーラを撒き散らしている真理に宮本と南は嫌な汗をかいていた。桐生は悟り切った顔でのほほんと皆の分のコーヒーを準備し、真理の威嚇を正面から受けているはずの麗蘭は涼しげな顔で優雅に菓子受けのマカロンを口に運んでいる。モニター越しのマイクは曖昧な笑顔を浮かべたまま沈黙を守っている。


「さすが桐生、いいセレクトね」


 マカロンがお気に召したのか、麗蘭が上機嫌で桐生に声をかける。桐生はにこやかに会釈で答えるが、宮本と南、モニター越しのマイクは真理の短い堪忍袋の尾が切れる音を聞いた気がした。


「あんたねえ!自分が何やらかしたか分かってんの?」


 モニターのマイクを含む男4人は一様に顔を逸らし気配を殺した。君子は危に近寄らないのが鉄則だ。

 当の麗蘭は「ん?」という感じで一向に堪えた様子は無い。


「日本にはゴールデンウイークっていう素敵な制度があるのよ?そこにバケーションの予定を入れてただけじゃない。真理もちゃんと楽しめた?」

「楽しめるかぁ!今この瞬間にもAI教の奴らが悪巧みしてると思ったら、気が気じゃなかったわよ!」

「あらあら。いつも言ってるでしょ?ストレスはお肌の大敵。せっかくの可愛いお顔が台無しになっちゃうわよ?」

「やかましいわ!」

「眉間に皺を寄せてる真理も・・・ス・テ・キ♡」


 さすが麗蘭。付き合いの年季と役者が違う。

 元々麗蘭に気を遣って5月2日の夕方に「明日REZON三者会議やりたいんだけどいけるかな?」と下手に出た真理に


「無理。ゴールデンウイークは旅に出てるから」


とすげない返事を返したのが始まりだった。居合わせてしまったため


「やってられっかあ!」


と荒れた真理のやけ酒に付き合わされ、連休のほとんどを居酒屋で過ごした桐生は


「気が気じゃない、ねえ・・・」


と心の中で冷静なツッコミを入れていた。



◇◇◇



「とにかく!始めるわよ!」


 会うたびに地が出るようになったなあ・・・宮本は初対面の頃の真理を少し懐かしく感じていた。


「そんじゃここまでのまとめ!まずは押収したPCの情報から。宮本刑事、よろしくっ!」

「あ、ああ。PCの中には予想通り信者と思わしき人物のリストがあった。その中に事件の加害者が含まれていたのはもちろん、別ファイルに被害者の一覧もまとめられていた」

「5月2日に犯行が行われなかったのは、そのリストが果たした役割が大きい?」


 真理の質問に南が答えた。


「分析の結果、5月2日の実行犯候補は失踪した八代さんだったようです。それ以降の候補者についてはさほど数が無かったので、個別訪問による牽制と尾行を継続して対応しています」

「殺人教唆や個別のやりとりに関する情報は残ってた?」

「不思議なことにその形跡が見当たらないんですよ。そもそもどうやってコンタクトをとっていたのか、それは今でも不明なままです」

「それについては結論を急がず、AIの分析も参考にしましょう。次にコトノハノ鏡とそれにまつわる伝説。鳴金の現象は私と桐生君、それに諏訪大社の八重垣宮司が体験しているので疑いの余地なし。原理は分からないけど。で、それは日本各地に点在する「門」が開く時に発生し、次の候補地は和歌山・熊野。まずはコトノハノ鏡から。SOPHIAで分析した結果がこれ」


 ・成分:鋼鉄と未知の元素少量

 ・製造年代:不明。少なくとも3000年以上前

 ・製法:不明。鋳造ではないが研磨の形跡も見られない


「つまり・・・?」

「目の前に存在している、ということ以外は分からないことだらけ。TRUTHのネタとしては最適じゃない?」


 麗蘭の問いかけに真理が投げやりな答えを返す。桐生は麗蘭の目が一瞬キラリと光ったのを見逃さなかった。


「で、さらに厄介なのが宝物庫に封印されていたコトノハノ鏡だけじゃなく、点在する門についての記述がされた古文書の一部も消えていた事」

「よし、大体情報は出揃ったかな?じゃあ前回と同じ要領で。加えて麗蘭のTRUTHには熊野の鏡や門に関する伝承、AI教に繋がりそうな情報のサーチもお願いするよ」

「分かったわ。じゃあその間に、桐生はレモンタルトを焼いておいて。刑事のお二人は・・・ご自由に」

「非常に恐縮なのですが、AI教とPCに関する進展があるのかも知れないので一旦本庁に戻ります。結論が出ましたらすぐに駆けつけますのでお知らせください」

「では、失礼致します!」


 南はいつものように敬礼し、宮本に続いて研究室を出て行った。桐生がボソッと


「逃げたな・・・」


 と呟きながらいそいそとレモンタルトの準備を始めた。

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