嵐の前も騒がしく
ええ。戦いの前まで。前まで何とか書きましたよ。
「来たか。アルバトス」
「魔王様。お招きいただきありがとうございます。」
魔王ルグ=イグナイオス。地方のパットしない家柄の出身だが、巧みな政治手腕と圧倒的力で、あっという間に魔界を統一し
遂には人間世界への侵略まであと6日というところまできている。そのことへの勅命だろうか。なんにせよ非常に名誉なことだ、
「それで、今日は何用で。」
「うむ。そなたに一つ任せたいことがあってな。ある村に勇者の卵が現れるという予言がある。ソナタにはその調査および討伐を頼みたいのだ。」
勇者…1000年前に我らが魔族の軍を退けた忌まわしい存在。確かにできることなら早いうちに倒したい。でも…
「失礼ながら、私に勝てるのでしょうか。勇者という存在は、魔王様とすら肉薄する存在。卵といえど、正直荷が重いと思うのです。」
「その点は問題ない。勇者の卵というのは別に一人に限った話ではない。過去に数人、私が直々に殺している。大したことない奴らだったよ。ただ…」
「今回は進軍を控えていて難しい…ということですね。」
「…あぁ。」
なんだ?少し含みが。でもやるしかないか。そうして、準備を整えに自室へともどる。
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「シエン。出てこい」
「はっ」
魔王軍八卦衆が一人隠者のシエン。おもに暗殺と情報収集を任せている。つい先日、王国軍の兵力調査から戻ってきた。
「勇者とバルバトスの監視を頼む。」
「監視…ですか?」
「あぁ。まず、今回奴を派遣した村、10年前、あそこを最後に我が父は失踪している。父には貴重な予言能力があった。何か理由があって出向かったのだろう。しかしそこから帰ってこなかった。バルバトスだけでは無事に戻れるか分からない。」
「そうか…あそこですか。今回の予言と無関係とは思えませんね。セラン様のことも何か分かるかも。」
父上、セラン=イグナイオスは決して強い人ではなかったが、かと言って普通の人間ごときに引けを取ることはない。あそこには何かがいる。もしかしたら私ですら無事に済まないかもしれない。
「でもそれなら、もとより私たち八卦衆でいけばいいのではないでしょうか。」
「うむ。実はな、予言は他にもあって…
バルバトスが魔王の卵かも知れない」
「なっ!?裏切りの可能性があると?あの忠臣バルバトスが??」
「予言は予言。実際どうなのかは分からない。でも、大事な戦の前だ。リスクはできる限り潰す。裏切りの予兆があれば勇者もろとも殺せ。」
「承知しました。」
彼は決して私たちの敵になるとは思えない。性格的にも力量的にも。しかし、リスクを無視することもできない。
これがただの杞憂であればいいのだが…
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何年ぶりだろうか、オヤジの育てた馬鈴薯、お母さんのご飯。何もかも懐かしく、そして疲れた心を癒やしてくれる。ご飯を食べ終え、自室に戻ろうとしたとき、母さんに声をかけられる。
「ロテス。あなた稼業を手伝いに戻ってきたのよね。最初の仕事受けてくれない?」
首を縦に振る。
「ありがとう!そしたら、勇翼の方々にこれ差し入れてきてほしいの。ほら、わざわざこんな辺鄙なところに来ていだいてるわけだし、いい思い出にしてもらいたいもの。」
いももち。お母さんの得意料理だ。
「うん。わかったよ。」
「勇翼は今村の中央に拠点を構えてるはずだ。ついでに参加させてもらえばどうだ?」
そうお父さんが冗談交じりに言う。
「やめてくれ。僕はもういいんだ…」
少し気まずい空気になってしまった。いたたまれなくて、そそくさと仕事に向う。
「気遣ってくれてるのはわかるけどさぁ…」
「おいお前!!!ロテス」
「うわっ!」
ボヤきながら歩いてると、急に甲高い大声で呼ばれる。周りに見てもどこにもいない。意識を集中させる。
((風の揺らぐ音…土を踏む音は聞こえない。上か))
着地点を予測して拳をふるう。
「なっ!ウィ…ウィンドプレッシャー!」
しかし、突風がすると、攻撃範囲外、少し離れた位置で目つきの鋭い子供が不時着していた。彼は勢いよく距離を詰める。
((まずい…防御体制))
突風に反射的に目を閉じてしまう。しかし、ダメージはない。なぜだ…目を開けると15歳くらいだろうか。鋭い目をした少年が風で足を浮かせながら、胸ぐらを掴んでいる。
「テメェ!!いきなり殴りかかるとはどういうことだ!!アブねぇだろ!!!」
「ごっごめん…でもさ、上から急に来たら、攻撃だと思うだろ。せめて攻撃の意思がないこと示せよ。」
「はぁーー。お前漢のロマンってものが分かってないね。急に空からカッコよく登場。それこそがカッコいいんじゃんか。「フッ今から飛び降ります。攻撃の意図はないので構えないでください。どりゃっ」こんなダサい登場しろっていうのか……ってそんな話はどうでもいい」
情緒の激しい少年だなぁ…それにしても洗練された風の使い手。もしかして…
「君って『風来坊のフラン』か?」
そのとおり。とフランはうなずく。
風来坊のフラン。勇翼の大命で最近頭角を現している、ハルカゼの弟子名乗る若手兵士。かなり若いとは聞いていたがここまでとは。
「それで何用ですか?」
「そうだった。お前!!ハルカゼさんからの頼みを断りやがって。オレなんて頼んでも頼んでも勇翼に入れてもらえなかったのに。どうせなら俺がハルカゼさんの推薦で…」
嫉妬だろうか。相当師匠のことが好きなんだろうな。だからといって僕に八つ当たりされても……強いとは言っても所詮はクソガキか。
「あ!お前今クソガキとか思っただろ!!」
「なんのことでしょう〜」
周囲をフランに張り付かれながら、勇翼のキャンプまで向う。その最中にフランの声が聞こえたのか。気づかぬうちに目の前にいたハルカゼが静かに、されど明確に怒りを示している。さすがに僕じゃないよね…?
「フラン!!ロテスさんを困らせるんじゃありません。」
良かったぁ…俺じゃなかった。勿論当たり前といえば当たり前だが、バカ弟子の師匠もバカ師匠ってのはよくありまして。そんなことはどうでもよくて、仕事を遂行しないと。
「まぁまぁ。そんなに怒らなくても。ほら、“子供”がしたことですから。」
「ロテスさん!!寛大な御心。ありがとうございます。ほら、フラン。あなたも」
「ご、ごめんなさい。」
フッ!っと勝ち誇るようにフランを見る。フランはそれに気づき、イラつきを見せる。
「それでロテスさん。どうしてここに?」
「あぁそうでした。これうちの親から。いももちです。辺鄙なところまで来ていただいたのでせめて食だけでもって。」
「まぁ!もしかしてミルハさんの。今日もありがとう御座います。今日はいももちですか!」
ハルカゼの顔は笑顔で溢れている。仕事冥利に尽きるというものだ。フランがこそっと一つとりだし、笑顔で頬張る。かわいいところもあるじゃないか。仕事を終え帰ろうとした所で突風が吹く。ププッと笑い声が聞こえた気もするが、まぁ気のせいだろう。
「ただいま。」
「おかえ…り。あなたもしかして、つまみ食いしたわね。」
「は?いやそんなこと」
「じゃあその口元についてるいももちのカスとタレ…なに?」
えっ…そう言われて口元を触ると確かにいももち。これは…
「嘘ついて。明日の晩飯抜きね。」
フラン。やっぱあのクソガキ嫌いだ!!!!
腸が煮えくりかえるが、消費カロリーの節約のために今日はすぐ寝ることとした。
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早朝になり目が覚める。どうやら外が騒がしい。村の様子が変だ。親父はいないが、お母さんはまだ寝ている。お母さんをおこして避難させ、騒ぎの方向へ向うと、勇翼と見たことのない生き物が戦っている。角を持ち耳がとんがっていて、人の2倍ほどの大柄な体格。まさか…あの神話上の「魔人」か。お父さんは…いないようだ。多分農業に行ったのだろう。力になれるか分からないが、僕も騒ぎの方に助太刀に行くこととした。
前って言ったけど、描写がないだけで戦いは始まってる。よし!セーフだ!!




