疾実剛健
4話です。ちょっと時間かかりました。
日が出て1時間と経たぬころ。
『あ~そろそろ見張り時間終わりだー。寝みぃ~』
『フロイ。まだ気を抜くなよ。』
『わかってるって。シャールズ』
予言があり、国からの依頼でこの村に来たが、本当に何か起こるのだろうか。ただただ平穏な時間を過ごしている。思わず口に出る。
『予言なんてほんとうにあたるのかね?“天願姫”なんてたいそうな二つ名つけてるけど、所詮偉いのは立場だけ。大したことないんじゃないの?』
『滅多なことを言うんじゃないよ。フロイ。プレドネ姫は幾度も重大事件を防いでる。そんな彼女がわざわ…』
バァサッ。大きな翼の音と風が吹く。そして、
『ふむ…そちらにも預言者がいるのだな。これは王に伝えねば。』
野太い声。
『『誰だ!』』
俺もシャールズも気づけなかった。声と翼の音が指す方は空。それもあの風の音からして、超高度から急降下してきたのだろう。見上げると更に確信は強まる。それを可能にする圧倒的なガタイの良さそして、プレッシャー。俺の見たことのあるどの生物とも一致しない、恐らく二足歩行だが、人というには角が生え翼が生え構造から大きな差がある。
『フロイっ!早くハルカゼさんたちを呼びに行くんだ。奴は多分…魔人だ。』
『ほぉ俺たちの事を知っているのか。我ら人間界では、永らく極秘裏に動いていたはず。貴様、どこで知った?』
『魔族…書物と化石からしか存在が確認できない絶滅種。それが生きてたっていうのか!?』
『そうと思う他に、あれを表せるものがあるか?フロイ!!急いでハルカゼさんをよべ!』
『でもお前が』
『早くッ。このままじゃ皆死ぬぞ』
『…すまん』
わかってる。今はこれが最善なんだろう。でも、自分で、シャールズから遠ざかっているはずなのに、何故かあいつが、一人で遠くでいくように感じる…
フロイは行ったか…。一分一秒でも時間を稼がなくては。
『さて、お前の事を聞かせてくれないか?お前は誰で、どうして姿を現した?』
『ハッハッハ!お前、気に入ったぞ。この期に及んで露骨な時間稼ぎ。その度胸に応じてやろう。』
流石にバレているか。でもなぜかうまくいった。不幸中の幸いと言えようか。
『俺の名前は魔王軍幹部が一人 剛毅のバルバトス。後日に人間界への進軍を控えていてな。その前哨戦だ。俺は戦場に立つもの以外は殺さん。さっきのやつが、その仲間が一般人は避難させるのだろう?そこは安心しろ。さて、疑問はなくなったかな?』
めっちゃ話してくれた。この情報を持って生き残れればいいのだが…流石に難しそうだ。せめて情報だけでも伝えられれば…
『せめて情報だけでも伝えられれば…。とでも思っているか?』
『なっ!?』
『無駄だ。お前ら兵士は全員ここで死ぬのだから。天より戦力を見させてもらってな。一人強い奴は居るようだが、俺を殺せる程ではない。情報は此処で途絶える。これ以上の話は無駄だ。そろそろ始めるとしよう。』
これ以上話で時間稼ぎするのは無理か…
私の命でどれ程いけるか…。考えるのは辞めよう。今はただ全力で、
『風武』
『いい目だ!!いくぞ。』
そう言うとバルバトスは真っ直ぐと向かってくる。その速度はあまりにも早く、気づくと拳が目の前に。
バゴーンと物凄い力で押し飛ばされる。物見櫓から隣の物見櫓へ。しかしダメージはない。
『なんだ。殴ったはずが、殴った感覚がない。まるで…』
『風盾。もっとも基礎的な風の魔法だが、修練と、私の風技で最大限強化している。このまま援軍を待たせてもらうよ。』
『なかなかいい力だ。しかしそれは許せない。攻撃してこそ、されてこその戦い。本気で向き合って貰わないとな。 『魔鎧天叢』』
そう言うと、バルバトスは紫に怪しく発光するツルの鎧に包まれる。胸には赤い球体がついており、ツルはそこから伸びている。恐らくそこがコアなのだろう。
しかし何だ。その鎧で何が変わるというのだ?私に攻撃を当てるすべができたようには思えないが…
『それでどう攻撃を…そう思っただろう。まぁいい、くらえばわかる。』
物凄い速度で向かってくる。が、認識できれば対応できる。
『『風盾ー剣の舞ー(ウィドバリア MODE:コントラディクト )』』
不可視の風の盾を構える。
『『魔針』』
両拳は風の盾でいなしたが、共に細かな傷に斬りつけられる。しかし、傷が深いのは私の方だろう。血が流れ、そして目眩がする。
『俺にカウンターを食らわせるとは。中々やるな。攻撃を受け流す、風のバリアの中に、ツルと筋肉の筋方向への風を混ぜることで、傷をつけたのか。だが足りぬな。』
バルバトスは余裕そうに言う。
『そっちこそ…一度で風盾の性質を見抜きやがって…』
風盾は敵の攻撃方向をいなす強風を起こすことで、ダメージを極限まで減らす魔法。しかし、大きな風は一方向にしか流すことができない。その流れに上手く合わせて針を放つことで、針は風盾を突破し、傷を負ったのだ。こうなると防御戦はだめか…
『『風殺陣』』
風で生み出した不可視の刀を構える。
極東の剣術を模して生み出した。剣で攻撃を防ぎ、剣で攻撃する。安全策は捨てた私の必殺技だ。
((ふむ。空を構えているようにしか見えぬが。やはり風がどうにかしてるのか…?))
バルバトスはキョトンとしている。
『まぁどちらでもいい。風ごときで俺を破ることはできない。』
そう言うと一気にこちらへ向かってくる。
1..2...私の風刀は切れ味抜群。しかし、その繊細な風力調整がゆえに間合いは、バルバトスの腕の長さより少し長い程度。ギリギリまで…
『今!』
確かな感触がある。バルバトスを確実に切ったは … ドンッという鈍い音と共に私の体は街を囲う柵を破壊しながら、崖に叩きつけられる。もろに一撃を食らってしまった。でも…
『どうして、切ったはずだ。だろ?』
余裕げにバルバトスは言う。その姿を見ると、ツルの鎧に大きな傷はできているが、コアにはわずかな傷しか与えられていない。
『会心の一撃を狙うならコア。そんなことは読めている。常にケアできるよう、ツルを中心に圧縮させていたのだよ。予想外だったのは思いのほか切れ味が良かったことだな。俺のコアに一撃を入れた相手は久方ぶりだ。』
必殺技まで出して、こんな小さな傷一つ。情けないな。すまんフロイ。私は此処で終わりみたいだ………
『でも、最期に一撃だけでも!』
『『風殺陣ー鶴の舞ー(フウジン MODE:フルーレ)』』
風の刀はフルーレへと姿を変える。フルーレは突き技で比較的制御が楽。威力は弱いが長距離でも使える。倒れそうな体を崖にもたれて無理やりささえ、構える。予備動作はほとんどいらない。
『射出』
『その程度の攻撃、読めるわ。』
『本当かな?』
エペの生み出す渦状の風に魔針や石、葉っぱを混ぜ込んだ。剣自体は防げても、攻撃は防げない。
『喰らええええええ』
『ぐっっ、なんのこれしき』そう言うとバルバトスは全力で風の渦を破壊する。
『確かに恐ろしい一撃だった。いいダメージを貰ってしまったな。でも、これで終わり。残念だ。』
これは死んだ…目をつぶり、崖に倒れる。
強い風が吹く。
『あれ…死んでない。』
目を開けるとそこにいたのはハルカゼ隊長。最後のフルーレから、見つけてくれたらしい。
『ふむ。速いな、貴様。』
バルバトスは感嘆している様子だった。
そうだ…奴の情報を伝えないと……そう力を振り絞り声を出す。
『奴はバルバトス。おそらくは植物を生み出し、操る能力ですが、フィジカルもヤバいです。お気をつけを…』
『あぁわかった。…バルバトス!私は有翼のハルカゼ。シャールズの敵は取らせてもらう!!』
『隊長。貴様が勇者の卵か…?よし、全力で叩き潰させて貰おう。』
『勇者の卵?なんの話だ?』
隊長がそう言うと、バルバトスはにやりと笑う。
『ハッハッハ。そちらの予言者はその程度か。なら心配する必要もないな。おっと、そうだ。シャールズ、お前を殺すのは最後にする。しかし、戦いの邪魔をされては構わん。しばし眠れ。そして安らかに死ね。『昇華』』
魔針が刺さっていたところからツルが成長し、花が咲く。自分が花の養分になったかのように、意識が薄れていく。
『これでお互いに集中してやれるな?ハルカゼ』
『…あぁ。』
シャールズ。書いてる最中に気に入ったので、ひとまず生死不明にしました。いい戦いだったぞ。よく頑張ったな…




