プロローグ 弱さの代償
『君の言う通り、確かに君は弱いのかもしれない……ただし、その弱さが君の人生を否定するだけのものでないことは、正確に理解すべきだよ。強く在り続ける人生というのは、およそ正気とは思えない苦痛を伴うものだからね』
己の無力さを痛感したその日、そんな言葉をかけられた。
皮肉や嘲りとして言われたのであればこちらとしても対処のしようがあったが、その言葉は思いやりの果てに絞り出された抜き身の刀だった。
それ以外に掛ける言葉がない自分が悪いのも理解しているつもりだし、絹の様な優しさに包まれたその言葉にすら傷付いてしまう自分が愚かであることも承知している。
それでも。
似たような言葉を掛けられる度に、愚かで弱い僕は考えずにはいられない。
その弱さの代償は誰が払うことになるのだろうか、と。
弱さは罪じゃない、その言葉に否やはない。
生まれ持った肉体、精神、環境のせいであることは疑うべくもない事実だし、当人の意志に関係なく生まれてきたことを否定することなど神でなければできようはずもない。
しかしそれでも、僕の弱さのせいで誰かが、大切な人が傷付く様を能々と見過ごせるほど、僕は弱くなかった。
『弱さは罪じゃない』、この言葉が真実であるのと同時に、『その弱さが大切な人を不幸にしてしまう』、それもまた僕にとっては変えようのない真実だった。
だから、僕は弱さを憎み、強さを望んだ。
大切な人が僕の弱さの代償を払わなくて済むように。
……もう二度とあんな惨めな想いをしなくて済むように。




