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プロローグ 悪夢
浅い微睡の中にいると、決まって同じ夢を見た。
寝返りさえできない重苦しい身体が柔らかいベッドに沈んでいくそんな夢だ。
どこまでも嫌な現実感を伴ったその夢は、例え目が覚めたとしても、魔物として駆け回っている今こそが夢なのではないかと、不安になるような夢だった。
『(どうして俺は生きてるんだろうな)』
悪夢に引き摺られ、思考までもが重く、暗くなる。
今まではそんな疑問、毛ほども考えたことはなかった。
良く言えばそれだけなりふり構わず生きていたし、悪く言えば生きることが酷く難しい目標だったからかもしれない。
生きる理由だとか、生きる意味なんてもの、考えた所で碌なことにはなりはしない、そんなことは百も承知の筈なのに、浮かんだ疑問は頭から離れてはくれない。
『(余裕があるからこそ、悩んでたりして)』
病気一つない健康な身体を得て、頼りになる相棒を得て、命の危機に直面しなくなったからこそ、こうして俺は悩めているのかもしれない。
ある意味での『贅沢者の特権』、そう考えてみるとこの鬱陶しい悪夢も存外に悪くはないような気がしてくる。
『……うしっ、今日も張り切っていくか』
朝日も昇らない燃える砂漠の片隅で、自らを励ますよう俺は鳴き声をあげた。




