お腹の空いた三首と一羽
ヴェルンドを救った5人の英雄を讃える宴がいよいよ始まり、シュミトやシュデン、そして町中の人々がラオト達5人を讃え、盛大に飲み交わしたのだった。
「最高だぜ勇者様!!!」
「勇者様ありがとう!!」
「もっと酒もってこーい!!」
「あっ、こっちにも!!」
広場に並べられた料理を食べながら、贅沢にお酒やジュースを飲む、そんな明るく賑やかな様子のヴェルンドを、遠くから二つの大きな影が羨ましそうに見ていたのだった。
「はぁ、なんて美味しそうな料理達なんや、こっちまで腹減ってくるやん」
「そ、そうアルね、我らも混ぜてもらえないアルかな」
ヴェルンドの城壁内がよく見える地点から広場の料理を狙っていたのは、昨日ラオト達に負けた事になって不服そうなキオン、そしてその横には、赤い翼と黄金の装飾が特徴の大きな鳥の十災魔神、プロクスが居たのであった。この二人は宴の様子が気になり、こっそりとプリズン山脈内に戻ってきていたのだった。
「も、もしかして!これは罠アル!」
「何!?どういう事やプロクス!」
「奴ら、我らが宴に興味を持つよう、ご飯で釣ってるんだアル!そして参加したが最後、我らがご飯に夢中の隙に捕える気アル!」
「なんやて!なんて卑怯な奴らなんや!!」
「いやぁ、ただお祝いしてるだけだと思うよぉ」
右の顔の正論に、真ん中の顔とプロクスは黙ってしまった。
「、、、クソ!あの料理を見てると、まじで腹が減ってくんねん!いっそ俺達がヴェルンドに殴り込んで、あの料理を独り占めするってのはどうや?」
「おぉ!それ最高アル!!」
「、、、ダメだろ!!」
「左はもう少し静かにせえや!バレたらどうすんねん!」
「いやぁ、真ん中も結構うるさいけどねぇ」
「そんな事どうでもええねん!それより、さっさとヴェルンドに行くで!」
「ダメに決まってるでしょぉ、僕達もプロクスもぉ、魔王様に内緒で来てるんだしぃ、暴れたらどれだけ叱られるかぁ、分からないよぉ?」
「後の事なんてどうでもいいねん!俺はあの肉が食いたいんや!!」
「はぁぁ、プロクスもぉ、真ん中を止めてよぉ」
「え?あー、そ、そうアルね、料理は残念アルが、魔王様に叱られるよりはましアル!(我も襲撃する気満々だったけどネ)」
「チッ!そんじゃ早よ帰ろか、早よせんと俺が抑えられなくなってまう」
「真ん中、一つ提案アル、我の部下を使って、料理をおねだりしてくるアルか?」
「マジか!!最高やないかプロクス!!今すぐ頼むわ!」
「分かったアル、ちょっと待つネ」
プロクスが小さく口笛を吹くと、どこからともなく一匹の小さな小鳥が飛来した。
「あの町から料理をおねだりしてくるアル!できれば四人分欲しいネ!」
小鳥は静かに頷くと、ヴェルンドの広場向けて羽ばたいていった。
その頃の広場では、スティアが輿に乗り、その輿を兵士達が担いで広場を行進していた。
「やっほー!みんなー!」
「天使様ぁぁぁ!!」
「こっち向いてぇぇ!!」
皆からの視線を独り占めにしていたスティアは、今までにない程上機嫌だった。そんなスティアをよそに、他の4人はテーブルにつき、ゆっくりと料理や飲み物を楽しんでいた。
「堕天使、すっかり浮かれているな」
「まぁ、楽しそうで良いじゃないか」
「そうだな、宴ってのは、楽しんでなんぼだからな」
「モグモグ、、、そうだねー」
その時、四人の目の前にバスケットを掴んだ小鳥が、ふわりと着陸した。
「うん?なんだ?」
ラオトが立ち上がり、小鳥のバスケットを確認すると、中には紙が入っており、そこには「料理を四人分くだちゃい」と書かれていた。
「料理が四人分欲しいだって」
「え!おねだり?可愛い!!」
「誰からだ?」
「分からない、特にそれ以外書いてないな」
「料理くらいあげても良いだろう」
「そうだな、それじゃあ、、、」
ラオトは4人分の料理を用意し、それらを慎重にバスケットに入れた。その事を確認した小鳥は、ラオト達に頭を下げてお礼し、そのままバスケットを掴んで慎重に飛んでいった。
「誰からだったんだろう?」
「さぁな、不思議な事もあるもんだな」
「、、、食器って帰ってくるのかなぁ」
小鳥は無事に、料理を持ってキオンとプロクスの元へと戻る事ができた。料理の入ったバスケットを受け取ったキオンとプロクスは、さっそく皿に乗った料理を食べ始めた。
「う、美味いアル!!絶品アル!!」
「あぁ、うめぇ!!」
「美味しいねぇ」
「、、、美味い!!!」
キオンとプロクスは、あっという間に皿の上の料理を完食した。
「ふぅー、お腹いっぱいではないアルが、充分満足アル!」
「あぁ!満足や!!」
「それじゃあ、何回も命令して悪いアルが、この皿達をあっちに返してくるアル!」
小鳥は静かに頷くと、またもやバスケットを掴んでヴェルンドへと飛んでいった。
小鳥はまたもやラオト達の前に着地し、バスケットの中身をラオトに見せた。
「あ!料理が無くなってる!」
「え!?本当に返しに来たの?凄い礼儀正しいね!」
「本当だな、それじゃあ預かるよ」
ラオトは小鳥からバスケットを受け取ると、小鳥はそのままどこかに飛んでいってしまった。
「、、、それにしても、一体あの小鳥の主人は誰だったんだろうって、あ!」
ウィンディはお皿に付着した微かな毛を見逃さなかった。
「この毛、、、獣人のもの?」
「うーん、獣人なら普通にこの町に入ってくれば料理は食べれるし、わざわざこんなめんどくさい事するか?」
「となると、、、魔人か?」
「そうかもね」
「やれやれ、食いしん坊な魔人が居たものだな」
この一件の真相は分からなかったが、そんな事は気にせず、ラオト達はその後も宴を楽しんだ。




