抜け駆け
少々話が脱線してしまったが、アレスのサインを貰い、ひと段落した事で、ようやくシュミトがちゃんと壁画についての説明を始めることができた。
「オホン、それでは始めるぞ」
シュミトが皆の目の前に立ち、ローブから取り出した杖で壁画を説明しようとした時、突然スティアが手を挙げた。
「あ、私ちょっとやる事があるから帰っていい?」
壁画の目の前で座り、シュミトの話を真剣に聞こうとしていたラオト達は、突然そう言い出したスティアに驚きの視線を向けた。
「えっ、これからが良いところなのに」
「そうだよ、スティアも一緒に聞いていこうよ!」
「いやぁ、ちょっとやる事があって(あの印の詳細は分かったし、私があの印を完璧に再現できたら、アイツは私に逆らえなくなるよね!その為にも今のうちに印を書くのを練習しておかなきゃ!)」
アレスは何か嫌な予感を感じたが、気のせいだと思い、特にスティアを止めたりはしなかった。
「そうか、、、聞いてもらえないのは残念じゃが、元々お主はここには来ない予定だったんじゃもんな、今日はここに足を運んでもらえただけで嬉しいわい」
「ごめんね」
スティアは残念そうに呟くシュミトに、少し良心が痛んだ。
「一人で帰れるのか?」
「それは大丈夫、私が残してきたあの痕跡を辿るから」
「そうか、それじゃあまた後でな」
「うん、みんなは楽しんでねー」
そう言い残し、スティアは壁画のある広間を去っていった。スティアが居なくなった事により、スティアの体から発せられていた光がなくなり、広間は暗くなってしまった。
「これじゃあ暗いな、ちょっと待ってろ」
そう言うと、ホルスは自身の体にある少ない魔力を全て使い、広間の中央の空に大きな火の玉を作り出した。その火の玉は、まるで太陽のようにあたりを照らし出し、まるで建物の中だという事を忘れるほど広間は明るくなった。しかし、魔力をほとんど使ってしまったホルスは、息を荒くしながら、ゆっくりとその場に座り込んだ。
「はぁ、はぁ、よし、これで大丈夫だな」
「ありがとうなホルス」
「ワシも魔力が少ない種族だから分かるが、これほどの魔法を使うとなると、やはり相当体力を消費してしまうな、ワシがやったらぶっ倒れてしまうわい」
「いや、これが俺の役目だからな」
「若いのぉ」




