準備
ラオト達の帰りを待っている間、ただ待機しているだけでは勿体無いと思ったスティアは、この場に必要なとある物を用意するように兵士達に命じた。スティアに命じられた兵士達は早速動き出し、剣で木を切り、その木を持ち前の器用な手捌きで加工していった。
「へぇー、ドワーフなのに器用だね」
「ありがたきお言葉!我々ヴェルンドの者達は、子供の頃から毎日のように物の加工をさせられてきましたので、これくらい朝飯前なのですぞ!」
「ふーん、やっぱり鍛治の町って言われてるだけあるね」
スティアが兵士達を観察している間にも作業は着々と進んでいき、スティアの目の前にあった一本の丸太は、数個の棒や板に早変わりした。
「準備完了ですぞ!」
「よし!それじゃあ私の番ね!」
スティアは目の前に置かれた棒や板に魔法をかけた。すると、その棒や板が空に浮き上がり、そのまま空中でみるみる合体していき、魔法が終わる頃には人が一人乗れるほどの大きさの輿ができあがっていた。
「完成!やっぱ部隊の指揮官はこれに乗らないとね!」
スティアが輿に乗り込むと、四人の兵士がスティアを落とさないように慎重に輿を担ぎ上げた。その様子を見たアレスは、どこか懐かしい様子でその輿を眺めた。
「輿か、、、懐かしいな」
スティアに命じられた通りに動いただけで、輿という物がなんなのか分からなかった兵士達は、輿を知っている様子のアレスに話を聞いた。
「悪魔様もこちらをご存知なのですかな?我々にはこれがなんなのか分かりませぬ」
「そうだな、ここ最近の者達が知らないのも無理はないだろう」
「と、言いますと?」
「あれは数百年ほど前に使われていた道具でな、周りの者達があれを担ぎ、その上に指揮官が乗り指示を出す、その為の道具なのだ」
「そうそう!私が活発に動いてた時代だったら、これを見ない戦場は無いくらいに流行ってたんだよ」
「堕天使に活発に動いていた時代などあるのか?」
「あ、り、ま、すー!私だって天使になってすぐの雑用時代はバシバシ働いてたんだからね!」
スティアとアレス、そして兵士達が少し雑談をしていると、城の中から何かの足音が聞こえ始めた。
「おっ!帰ってきた?」
しかし、その足音がこちらに近づくにつれ、その足音がラオトのような小さな人間のものではなく、大きな何かの足音であると、ハッキリと分かるようになった
「ラオト達じゃない!みんな気をつけて!」
「総員!警戒体制」
兵士達は武器を構え、目の前の城からやって来る何かに備えた。足音はどんどんと大きくなり、ついにその足音の主が城から飛び出した。
「はぁ、なんかめっちゃおるやんけ」
その足音の主は、背中に大勢の魔人を乗せ、プリズン山脈から撤退しようとしていたキオンだった。
「ごめんねぇ、ちょっと通るねぇ」
「、、、じゃあな!!!」
そう言うと、キオンは兵士達には目もくれず、山の奥へと走って行ってしまった。
静寂が訪れた広場には、突然のキオンの出現に呆気に取られたスティアと兵士達、そして冷静にキオンの行方を見張るアレスが残された。
「今のって、、、キオン?」
スティアは、なぜかこの城から出てきたキオンに、非常に驚いた。しかし、スティアが驚いている間にも、兵士達はとある結論にたどり着いた。
「勇者様達が入って行った城から、魔人を連れて出て来たキオン、それって、、、」
「あぁ!勇者様達がキオンに勝ったんだ!!」
その兵士の声は瞬く間に辺りに広がり、兵士達は大きな歓声を上げ始めた。
「勇者様達が、キオンを倒した!!!」
「これで魔王軍の脅威ともおさらばだ!!!」
「流石は勇者様達だ!!!」
それまで非常に静かだったキオンの城付近は、一瞬でパーティー会場のように賑やかになった。しかし、まだやるべき事が残っている事を分かっていた門番は、歓声を上げる兵士達にも負けないような大きな声で、兵士達に指示を出した。
「皆!落ち着け!キオンを倒した勇者様達を誠心誠意迎える為、綺麗に整列するのだ!」
その声で兵士達は我に返り、崩れていた隊列を綺麗に整え、いつでもラオト達を迎えれる体制になった。




