じゃあな
別れの朝がやってきた。ホルスに起こされたラオト達は、今日で最後となるこの部屋での身支度を終わらせ、部屋を名残惜しそうに見詰めながら物思いに耽っていた。
「この部屋ともお別れだな、、、なんだかんだ言って、この部屋には結構思い入れがあるよな」
「そうだね、みんなでどんちゃん騒ぎしたり、ブラキナの城から帰ってくる事を誓ったり、疲れた体をぐっすりと休ませてくれたり、、、別れとなると、やっぱり寂しいね」
「二人共、そのような調子ではこの先持たぬぞ」
「そうだぞ、旅をするには別れは付き物だしな」
「、、、そうだな、前にもそんな事を言われたし、もしかしたら俺は過去に固執し過ぎているのかもな」
「固執は良くないが、まぁ、楽しかった思い出として心に残して置くのが良いだろう」
「そうだね、、、それじゃあ、行こっか」
部屋での思い出を心に刻んだラオト達は、静かに部屋の扉を閉めたのだった。そして、一階のロビーへと向かうと、そこにはサリディ達と宿の店主が待っていた。
「おっ、来たな」
「皆様、ついにお別れなのですね、、、」
「そうだな。けど、宿の店主にとって客との別れなんて普通の事なんじゃないのか?」
「いえいえ!そもそもフェアリウムを訪れる方が少ないですし、皆様ほど長きにわたって滞在していたお客様などいませんからね。それに、皆様とは一緒にはしゃいだ仲ですし、、、くっ、寂しいです!」
「俺達も寂しいんだぞ、けど、俺達にはやらなきゃいけない事があるしな」
「分かっています!皆様を止めるような真似は致しません!ただ、、、」
「ただ?」
「記念として、皆様のサインをいただけないでしょうか」
「サイン?」
「えぇ、皆様との楽しい毎日を思い出せるよう、サインが欲しいのです!」
「そんなもんで良いなら、いくらでも書くぞ」
「ありがとうございます!少々お待ちを!」
その後、ラオト達八人は店主の持ってきた立派な紙にサインを書き記した。
「ありがとうございます!皆様との大切な毎日は絶対に忘れません!」
「あぁ、俺達も忘れないよ!それじゃあ、行ってくるな!」
「皆様、ご利用ありがとうございました!どうかお元気で!」
店主と別れたラオト達は、フェアリウムの入り口へとやって来た。そこには大量の荷物と共に、パドラ、ロメウス、ピメウスの三人、そしてフェアリウムの職員達が待っていた。
「皆様、お待ちしておりました。用意させていただいた荷物はこちらとなります」
ホルスとペトラが職員と共に荷物を背負っている間、ラオトの元にはロメウスがやって来ていた。
「ラオトおにいちゃん!あそこみて!」
ロメウスが指差した先には、見慣れた杖と布で包まれた何かが置かれていた。
「おぉ杖だ!それと、あの布は頼んだ魔道具か?」
「そう!あのぬのにたのまれたすべてがはいってるよ!」
「本当か!ありがとうなロメウス」
「うん!ちなみに、このまどうぐはごかいしかつかえないから、のこりのかいすうにはきをつけてね!」
「あぁ、分かった。あっ、それと、、、」
ラオトは大切に持っていた、羽の魔道具をロメウスに渡した。
「これ、本当に助かったよ。俺はもう使わなくても良くなったから、ロメウスが保管しておいてくれないか?」
「わかった!たいせつにとっとくね!」
「ありがとう、頼んだぞ」
そして、ホルスとペトラの準備が終わるまでの間、ラオト達は仲間達と共に最後の会話をしていた。
「サリディ達ともお別れだな」
「そうだな、まぁ、今回みたいに、またいつか会えるだろ」
「そういえば、ハルティ達ってどこに行くの?」
「私達は北の方に行くの、そっちに思考とかに詳しい人が居るんだって」
「思考って、、、まさかジャンケンの為か?」
「当たり前だろ、俺達はジャンケンの為に旅をするんだからな!」
「そうそう!次会った時はジャンケンで絶対に勝って見せるんだからね!
「そうか、再会が楽しみだな」
そんな事を話していると、先にペトラの準備が終わったようだ。
「俺は準備できたぜ」
「そうか、じゃあ、、、行くか」
フェアリウムの出口を背にしたサリディ達は、名残惜しそうにラオト達を見つめた。
「また、必ずどこかで会おうな。その時はそっちの冒険談を聞かせてくれよ」
「うん!みんなが活躍してる情報を聞くの楽しみにしてるね!」
「ホルス先輩、ケンタウロス族の代表として頑張ってください!そして、みんなも元気でな!」
「あぁ!じゃあなサリディ!ハルティ!ペトラ!」
「また会おうね!」
「安心してくれ!交渉は絶対成功させてみせるぞ!」
「じゃあね!今度は私が勝つからね!」
「我も勝って見せるぞ!」
「皆様の旅の無事をお祈りしています」
「ありがとうみんな!じゃあな!」
そうして、サリディ達一行はフェアリウムの出口を進んで行ったのだった。
「、、、さて、次は俺たちの番だな」
準備が終わったホルスと共に、ラオト達はフェアリウムの出口の前へと移動した。
「じゃあ、俺達も行くな」
「まっ、悪くない客人ではあったね。あんた達、それとサリディ達ならまた来ても良いよ」
「ピメウス様がこうおっしゃられるのは、とても珍しいのですよ」
「そうか、気に入ってくれてありがとうな」
「あぁ、もし全てが終わったら、、、またここに休みに来ても良いかもな」
「そうだね、こんどはゆっくり滞在したいね」
「そうだな、我としては、今度こそロメウス殿の魔道具作りを見てみたいものだな」
「私も見たい!」
「うん!みんながくるの、いつでもまってるね!」
「、、、それじゃあ、行くか」
「三人共、色々ありがとうね!」
「あぁ、またいつか会おうな!」
「じゃあねー!」
「さらばだ」
「みんなー!がんばってねー!」
「あんた達の噂、他の町長から聞くの楽しみにしてるからね!」
「皆様の無事、そして旅の成功をお祈りしています。どうかお元気で」
「みんな!じゃあな!」
パドラ、ロメウス、ピメウス、そしてフェアリウムの職員達に見守られながら、ラオト達は妖精族の町フェアリウムを後にしたのだった。
これにて、127話から成る「エントモス熱帯林編」は終了となります!最初から見ていただいた方も、途中から見始めた方も、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
そして、明日から新章が始まると同時にタイトルが変更されますので、見失わないようにご注意ください!
それと同時に、1〜240話のあらすじや、その間に出た情報などをまとめた新たな作品も公開予定ですので、宜しければ是非ご覧ください!




