約束
部屋に入ると、そこには上機嫌な様子のトラウムが待っていた。
「ホルス君!念願の来客者がやって来たぞ!」
「おぉ、町長の旦那も中々上機嫌じゃないか」
「まぁね、来客者達に君という優秀なケンタウロスを付けられて、私も一安心していたところなのだよ」
「そいつは良かったな、それで、その来客者はどこに居るんだ?」
「今は食堂で昼食をとってもらっているところだ。今のうちに、君には旅の準備をしてもらいたい」
「分かった」
「それと、私はもう行かなくてはならないから、今のうちに気になる事などは聞いておいてくれ」
その言葉を聞くと同時にホルスは直感した、このタイミングがトラウムとケンタウロス族の独立について話せる最後のチャンスだと。
「旦那、旅に出る前に一つ、俺の願いを聞いてくれないか」
「願い?なんだい」
「今、俺達ケンタウロス族は獣人の国から本気で独立しようとしているんだ。今回の件の見返りと言っちゃなんだが、ケンタウロス族の新たな町を作る際に、グリンティアから資金や物資などを支援して欲しいんだ」
「、、、」
突然の告白に驚いたのか、トラウムはしばらく黙り込んだ。しかし、すぐに優しい笑みをホルスに返したのだった。
「分かった、グリンティアはケンタウロス族を支援しよう。ただし、君は来客者達を外敵から守る事を私と約束してほしい」
「あぁ、約束する」
「交渉成立だ、少し待っていてくれ」
部屋を出たトラウムはしばらくした後、二枚の紙、そして小さな魔道具を手にして部屋へと戻ってきたのだった。そして、持っていた二枚の紙をホルスへと手渡した。
「これを君に授けよう、この紙にはグリンティアがケンタウロス族の独立を支援する旨が書かれている」
「ありがとうな、そのもう一枚はなんだ?」
「これは来客者に渡すようでね。それより、君にはもう一つ、この魔水晶を渡したい」
トラウムは手のひらサイズの小さな魔水晶をホルスに渡した。
「これはなんだ?」
「私がケンタウロス族の秘密を握る代わりに、私からも君に特別な物を託したくてね。それは今後、私の息子に出会った時に渡して欲しい」
「息子?これから旅をするっていうのに、会えるのか?」
「あぁ、君達はいつかこの町へと戻って来る、その時に会えるだろう」
「そうか、分かった、大切に持っておく」
「頼んだよ」
その後、ホルスは部屋にやって来た数人の職員と共に倉庫へ移動し、冒険の準備を整え、荷物を背負いながら指定の場所へ向かった。すると、そこにトラウムと共見覚えのある二人の姿があったのだった。
「なんだ、お前らだったのか、町長の旦那一推しの奴らってのは」
「ホルス!!」
なんと、トラウムが来客者と呼んでいたのは先程会った不思議な少年と騎士だったのだ。三人は再会を喜び合った後、トラウムに見送られながらグリンティアから旅立っていったのだった。




