調査
「それで?あなた達は何をしていたのですか?この時間に集会の予定はないはずですが」
職員達が言葉に詰まっている中、最初に言葉を発したのはフィロスだった。フィロスは先程の出来事を悟られないように、緊張感を感じさせない落ち着いた声で話し始めた。
「いえ、あなた方がわざわざ本部まで来なくてはいけない出来事を起こしてしまった職員が居ないか、皆を呼び出して問いただしていたのです」
「ほう、中々気が利くじゃないですか、我々に手間を取らせないよう心がけるその姿勢は褒めてあげましょう。しかし、そのようにアピールしても我々の検査が緩くなる事はないのですよ」
そう言うと、側近と調査官達はロビーの受付へと入って行き、荒々しく書類などを漁り始めたのだった。
「お、おい!あまり散らかすなよ!」
職員達の声が届く事はなく、受付は書類の山で溢れてしまった。調査官達はそれらの書類の中からガデニダリアの利用者リストと面会希望者のリストを選抜し、それらの書類を隈なく確認したのだった。
「ふむ、魔王軍や怪しい者との交流記録は無いようですね、では次はもっと本格的な書類の倉庫を調べましょう」
そう言うと、側近はガタイのいい獣人を数人残して建物の奥へと向かって行ったのだった。それからしばらくの間、職員達はガタイのいい獣人に睨まれながらロビーで待機していた。
「、、、はぁ、片付けが大変だな」
「そこ!勝手に喋るな!」
「はいはい」
「全く、貴様らはいつからこんなにも生意気になったのだ」
その場の誰もが「それはこっちのセリフだ!」とツッコミをいれそうになっていると、建物の奥から側近達が戻って来たのだった。
「怪しい記録はなし、今回は引き上げてあげるとしましょう。ただ、最近は魔王軍による工作活動も増えてきているとの事なので、皆様の為にこれからは一週間に一度検査に来て差し上げます。ありがたく思ってくださいね」
「(はぁ、やっと帰るのか)」
職員達が安堵の表情を浮かべていた。しかし、その様子を見ていた側近はとある事に気がついたのだった。
「おや、そういえばこの場にはホルスが居ませんね」
「、、、」
その言葉に職員達の安堵の表情が一気に引っ込み、再び緊張感漂う雰囲気となってしまった。
「ホルスは付近に居るとの情報がありましたが、ここには来ていないのですか?」
「、、、」
「なぜ黙るのですか?見ていないなら素直にそう言えば良い筈ですよね?それとも、何か言えない理由があるのですか?」
職員達はなんと言えば良いのか分からずに、ただ黙る事しかできなかった。そして、職員が黙る度に側近達は疑いの心を抱くようになっていった。この状況がマズいと思ったフィロスは、決して悟られないよう、落ち着いた自然な話し方で側近に話し始めたのだった。
「ホルスさんなら、もう荷物を持ってこの国を出ましたよ?いやぁ、彼の働きぶりは見習わなくてはなりませんね」
「、、、あ、あぁ!その通りだ!」
フィロスの提供した設定に職員達も乗っかり、皆でホルスの所在を誤魔化したのだった。
「ホルスって、あの勇ましいケンタウロスだろ?彼ならもう行っちゃったぞ」
その中にはハーピーの職員達も混ざっており、そのあまりの団結力には、側近も設定を信じざるを得なかった。
「そうですか、それは安心、いや感心しました。それでは我々はこれにて」
こうして、フィロスの構想における第一関門を、ホルスは無事に突破する事ができたのだった。




