反乱演説
皆の視線が集まる中、フィロスは堂々とした様子で演説を始めたのだった。
「仕事中にも関わらず突然の招集、誠に申し訳ない。既に知っている者もいるかも知れませんが、今、ここガデニダリア本部の前には獣人の国の調査官がやって来ています。目的は分かりません、しかし、なぜ今となって急に抜き打ち検査など行うのでしょうか?獣人の国側がガデニダリアに対して抜き打ち検査を行わないといけない、何か後めたい理由でもあるのでしょうか」
「そんなの、あの政策に決まってるだろ!」
静まり返る職員達の中から、一人のケンタウロスが声を上げたのだった。
「戦争中とはいえ、急に俺達ケンタウロス族だけの給料を取り上げやがって!どうせ俺達が反乱でも起こさないように見張りに来たんだろ!」
「えぇ、それが一番考えられる理由ですよね。自分達の収入源が無くならないように、そして、あなたのような正しき火種を消しに」
「お、おいおい、火種を消しにって、まるで俺達が本当に反乱を起こすみたいじゃないか」
「国が警戒するのも無理ありません、なぜなら、今回の件は他の町や種族だったらとっくに反乱が起きている程の一大事なのですから」
「な、なんだよ!俺達が国に従う事しかできない弱者だって言いたいのか!」
「えぇ、私はケンタウロス族なのでよく分かります、ケンタウロス族がいかに騙されやすく扱いやすい種族かを。私はガデニダリアの幹部として働く中で、幾度となく獣人の国の高官達と会議をしました。そして、その中で我々がいかに舐められているのかを痛感しました。我々の意見はまともに通さず、ケンタウロス族の不利に働く要求ばかり、それに抗おうにも脅され、幹部から追放されかねなかった事もありました。このような態度を我々ケンタウロス族の者達は幾度となく受けてきたのです。みなさんも、他の獣人から雑に扱われたり不公平な扱いをされた事などはありませんか?」
フィロスの問いに対し、集まった職員達はザワザワと周りの職員達と話し始めたのだった。どうやら皆、心当たりがあるらしい。
「皆さんも心当たりがありますよね?そうです、そのされてきた行動こそが獣人の国がケンタウロス族に対して抱く印象、自分達より格下の生物だと思われているのです」
「ふざけんな!アイツら俺達をなんだと思ってんだ!」
「そうだ!俺達が居なきゃ配達物は回らないんだぞ!」
「皆さん不満の気持ちがあるのはよく分かりました。しかし、なぜ反乱活動が起きないのでしょうか?」
「えっ、、、何でって、、、」
「答えは簡単です、ケンタウロス族は古より雑事をこなしてきた種族、今まで一度も種族のトップや何かのリーダーなどにはならず、ひたすら何かに付いていく姿勢を取り続けた為、リーダーシップのある者が居なくなってしまったのです。それによって、反乱する意思のある者がまとまりきれず、いつの間にか散り散りになってしまっているのです」
「、、、」
職員達はフィロスの発言が的を得ているのか、皆黙って下を向いていた。
「しかし、このケンタウロス族の弱点が分かった以上、それを克服すれば獣人の国に縛られず、ケンタウロス族が何不自由なく暮らせる世界を作る事も可能なのです!」
「リーダーか、、、なら」
頭の中で一人のケンタウロスを思い浮かべた職員達は、一斉にそのケンタウロスの方を向いたのだった。その光景に、ホルスはフィロスの言っていた知名度という言葉の意味がようやく理解できたのだった。




