屈辱の敗北
その場にいた全員がジャンケンの勝敗をしっかりと確認できる程の時が経った頃、ジャンケンの敗者が勢いよく膝から崩れ落ち、静まり返る部屋に「ドタッ」という鈍い音が響き渡った。
「そんな、、、バカな」
それと同時に、部屋の中は先程よりもさらに大きな歓声に包まれた。
「サリディの勝利だぁぁぁぁ!!!」
「おぉぉぉぉぉ!!」
「やったぁぁぁぁ!!」
その大きな歓声は、ウィンディの手の上に居るラオトが吹き飛ばされそうになるほどの迫力だった。ウィンディとラオトはその歓声に吹き飛ばされないように、一歩一歩慎重に部屋に入って行った。
「みんな、ただいま」
そのウィンディの声は歓声にかき消されてしまい、興奮している皆には届かなかった。しかし、負けてしまい、興奮するどころか、かなり落ち込んでしまっている様子のアレスには、ウィンディの声が聞こえていたようだ。
「おぉ、ラオトとウィンディが帰って来たぞ」
アレスはこの熱狂を早く終わらせたかったのか、ウィンディ達に気づいた瞬間、すぐに話題をウィンディ達の方に誘導した。その声に釣られ、サリディの勝利で盛り上がっていた皆も、少し落ち着いた様子でウィンディ達を出迎えた。
「お、戻ったな、ラオトとウィンディ」
「どうだった?魔道具は見つかったか?」
「おかえりー、随分遅かったねー」
「ってもう夜か、時間が経つのは早ぇな」
皆が各々ラオトとウィンディの帰りを労る中、アレスの負けが心底嬉しかったスティアは、場の空気を一切読まずに、大きな声で先程の勝負をラオトとウィンディに話し始めた。
「2人共聞いて!さっきね、イカサマで無敗記録を伸ばしてたこの不正悪魔がサリディに負けたんだよ!いやぁ、やっぱりイカサマじゃ努力には勝てないんだね」
スティアがバカにした態度でそう言った瞬間、部屋の中が悍ましい殺気に満ち溢れた。
「あ、、、」
「え?」
スティア以外の6人は急いで部屋の隅に避難し、部屋の中央にはスティアと、その背後に立つアレスのみが残された。背後から強烈な殺気を感じたスティアは、恐る恐る背後のアレスの方に振り向いた。すると、そこに立っていたアレスは、今までに見たことのないほどの、とても恐ろしい顔をしていた。
「あ、、、」
そのあまりの恐ろしい顔に、普段能天気なスティアも、動揺せざるを得なかった。
「え、えっと、どうしたの?そ、そんな怖い顔しちゃって」
「堕天使、今のは一線を越えているぞ」
「は、はひぃ!」
「少し懲らしめてやろう」
「ひぃぃぃ!!」




