誘拐未遂
仮面を着けた謎の男は、ラオトの目をじっと見つめながら、辺りに響く不気味な声で話し始めた。
「警戒しなくてもいい、私は君を傷つけるつもりは無い、ただ君と話がしたいだけだ」
「そ、そうか、それで、俺に何の用だ?こんな夜遅くに」
ラオトは、その男が着けているカッコいい仮面を見つめながら、男に自分に対する用件を聞き出した。
「君はキオンを倒したそうだな」
「まぁ、おかげさまでな」
「、、、随分と謙虚だが、何か理由があるのか?十災魔神を倒したというのは、誇るべき事の筈だが」
「あ、あぁ、キオンを倒せたのは他の皆んなのおかげだし、それに、第一キオンは俺達にやられたんじゃなくて、自ら降伏しただけだからな、キオンが本気を出せば、あの時の俺達なんて、一瞬で倒せたんじゃないかと思うようになってきてさ」
「、、、そうか」
仮面の男は、少しの間何かを考えた後、今度は別の質問をラオトに投げかけた。
「君は、今の自分にどう思っている?自分にどのような役割を感じているんだ?」
「えっ?」
ラオトは、突然投げかけられた難しい質問に、答えるのを戸惑った。ラオトがどのように答えようか迷っていると、不思議な事に、ラオトの心の中に段々と安らぎの感覚が芽生えていき、何故かこの仮面の男には全てを話しても良いと思い始めてしまった。
「、、、俺はこの世界において、使いこなせれば最強の武器になる知識を数えきれないほど持っているんだ、けどその知識のどれもが中途半端で、ヴェルンドを繁栄させたシンには遠く及ばない、キオンは本当に偶然上手くいったけど、この先、俺の曖昧な知識が役に立つかは分からない、俺の力不足が原因で、皆んなが危険な目に遭うのは、、、」
「そうか、それなら私から一つ提案があるんだ」
「提案、、、」
「君は、どうやら自分の事を低く見過ぎているようだ、君のもつ知識は替えの効かない素晴らしい物なのだよ、その知識を上手く扱えば、仲間も危険な目に遭わずに済むし、君が帰りたいと思っている場所にも帰れる」
「けど、、、俺に知識を活かす事なんて」
「君に出来ないなら、誰かに手伝ってもらえば良い」
「手伝ってもらう、、、?」
「そうだ、ちょうど私は君を求めている方を知っているのだが、どうだ?私と一緒に来ないか?」
「行ったら、どうなるんだ、、、」
「先程君が言った心配事は全てなくなり、君も帰るべき場所に帰れるだろう」
「帰れる、、、」
自身の不安が爆発したラオトに、もはや正常な判断は出来なくなっていた。魅力的な内容に唆され、思わず男に付いて行こうとした、その時、突如辺りにヘロヘロな声が響き渡った。
「あれぇ〜、ラオトじゃぁん〜、おはよぉ〜」
その声の主は、酔っ払いかつ寝ぼけているという、最悪な状況のスティアだった。スティアの声が聞こえたラオトは、ふと後ろを振り向き、目の前の男の仮面から目を離した、すると、先程までの弱々しかったラオトの心が、嘘のように元に戻ったのだった。それと同時に、先ほどまで話していた内容も忘れてしまった。
「あ、あれ、俺、何話してたんだっけ?」
「、、、チッ」
男が舌打ちをした直後、仮面から放たれていた禍々しい光が消え、仮面からは何の魔力も感じなくなった。光が消えた後も、男はスティアと話しているラオトを見つめ続けた。
「じゃぁねぇ〜、食堂で待ってるねぇ〜」
フラフラとしたスティアを何とか宿に帰したラオトは、再度男の前へと戻ってきた。
「ごめんごめん、うちの仲間が乱入しちゃったな、それで、何を話してたんだっけ?」
ラオトはもう一度男の仮面を見つめたが、今回は特に何も起こらなかった。
「、、、君は凄いな」
男がもう一度喋ったその声は、先程のような恐ろしい低い声ではなく、見た目通りの清々しい青年の声だった。
「あれ?そんな声だったっけ?」
「、、、気にしないでくれ」
そう言うと、その男はラオトに背を向け、どこかへと歩き出そうとしていた。
「、、、また会う時を楽しみにしている」
そう言い残し、その男はヴェルンドの暗闇へと消えていってしまった。
「、、、なんだったんだ?」
ラオトは去ってしまった仮面の男に疑問が残りつつも、流石の眠気には抗えず、宿へ戻るとすぐに眠りに入ってしまった。
祝100日達成!!
こんにちは、こんばんは、察知です!
今回のEPにて「科学の知識で異世界旅」は、なんとEP100を達成しました!!そして、それに伴い、100日の毎日投稿も無事に達成しました!!
ここまで来れたのは、この作品を見て頂いている皆様のおかげです!本当にありがとうございます!!
まだまだ完結には時間がかかりそうですが、今後ともこの作品をよろしくお願いします!
(記念すべきEP100が不穏なタイトルですみません)




