第34話 これじゃ宣伝どころじゃないな……
波乱の幕開けで始まった絶叫大会。進行するにつれて担架で運ばれる人が続出する中、いよいよオレの出番が回って来た。
「タケルさん、ファイトです」
「ばっちり優勝かっさらってきちゃって!」
「おう。任せとけ」
パルとシャルの応援を背に舞台へと上がる。
『さ、続いての挑戦者は……なんと村外からの挑戦、顔面犯罪ことスライム王子さんです!』
色々突っ込みたいところがあるが、今は集中したい。だがあとで二人には話がある。
『では始める前に意気込みを聞きましょうか。どうです? スライムさん』
「そうですね、現在お金に困ってる方がいればぜひ私のところへ――」
『宣伝は優勝してからにしてください! それでは始めます!』
中々ガードが堅いようだ。他の参加者同様箱から紙を一枚ひく。ここで叫びにくい単語が出たらアウトだ。
「……ハゲ?」
それは全世界の不毛者たちを敵に回す単語だった。この村の6割がハゲ。その人たちに毒を吐くことになる。誰だ、こんな無慈悲な単語を入れたやつは。
「…………」
紙の下の方にシャルドネのサインがある。匿名性の投稿であったはずが名前を書くあたり確信犯くさい。まぁ、そんなものをピンポイントで引くオレも大概だが。
ふと、シャルの方を見る。
「……にやっ」
悪い顔してやがる。まるでオレが何を引いたか知っているみたいに。というか、これ絶対確信犯だろ。あいつが小細工をしたに違いない。
「あのヤロウ……!」
恨み節を吐いたところで今更どうしようもない。ここは覚悟を決める。そして司会者の合図とともに始まる。
『さースライム王子さん、張り切ってどうぞ!』
「……ゲ」
『……はい?』
「……ハーゲ」
「」
会場中が凍り付く。観客の中には青筋を立てる者、むせび泣く者、泡を吐く者など大ダメージを受けている人が多数みられる。早くも地獄絵図の様相を呈してきた。だが、こんな声では優勝など到底できない。オレは覚悟を決めて大声で放った。
「ハーゲ!!!!!!!!!!!!!」
「「ぶち殺す!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
観客が舞台に上がり込んできた。
『ちょ、みなさん落ち着いてください! まだ大会中ですよ!?』
「うるせぇ! あいつを毟らせろ! ハゲの苦しみを味わわせてやるんだ!」
「おれはなぁ……おれはなぁ……! ハゲたくてハゲたんじゃねぇんだよ!」
「誰か! ケインさんが泡吐いて倒れた! 医者の人呼んでー!!」
会場は大パニックとなった。
『さ、さーて、騒ぎもひと段落したことですし……ですが、残念なことに他の挑戦者に多数の負傷者が出てしまい、リタイアとなってしまいました……よって、この中から優勝者を決めます!』
どうやらオレ以降の挑戦者は巻き添えを食らってしまったらしい。なんだかとても悪いことをした気がする。
『では村長さん、優勝者の発表を――死んでる!?』
それはそれは穏やかな顔をした村長さんだった。地面に倒れ、傍らにカツラが落ちている。そう、彼も不毛者の一人だったのだ。
「……いや、死んでないから」
脈を診ていたパルからツッコミが入る。ただ気絶していただけらしい。
『ほ、それはよかったです……ですが、これでハッキリしましたね。村長に一番ダメージを与えた人は……スライム王子さんです! よって、スライム王子さんの優勝です!!』
会場からブーイングが沸き起こる。あれ、これって村長に一番ダメージを与えた人の勝ちだっけ? という疑問は解消されそうにないので胸に押しとどめておく。
舞台の真ん中に立ち、トロフィーと副賞の漬物を贈呈される。参加賞よりもしょぼい副賞である。そして優勝スピーチ。ここからが本当の目的と言って過言ではない。
「えー、みなさん。ハゲのみなさん。荒野頭皮のみなさんにお伝えしたいことがございます。現在お金に困っている方は――」
「うるせぇ! 高野豆腐みたいに言うな!」
「帰れ! ハゲの敵!!」
抜く毛も聞く耳も持たねぇ。
「これじゃ宣伝どころじゃないな……」
「ちょっと失礼」
と、見知らぬ女性が現れ、いきなりマイクを奪った。
「この場を借りて失礼します……みなさんに朗報です! ついに! 植毛の技術がこの地にもやってきたのです!!」
「「!?!?!?!?!?!?」」
「最新植毛技術ヘアフォー大分……この技術を使うことで髪が戻るんです! 大分戻るんです! 昔の頃の自分に!」
「「……!?」」
「通常1000本200シリルのところを……特別に! 今なら100本100シリルで提供します! お金が無い方でも大丈夫! ここにいるスライム王子さんが投資の話をしてくれます! さーみなさん早い者勝ちですよ! いますぐ契約!」
うおおおお、と歓声が上がる。なんだか助けてもらったみたいだ。
「あのー……」
「クガタケルさん。詳しい話は授賞式の後で」
女性はにやっと笑った。




