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大事かと身構えたら、あっけなく話がついて杞憂で終わるにこしたことはありません

 フランチャイズみたいなもので、システムを使うだけで自己責任で、もしトラブルで本元に損害与えたら代償を払えと言われる世知辛い下請けであるわたしの会社。


 誰でも受けれる中立に含まれる組織は、保護されるためのルールがある。裏社会で武器調達、隠蔽や仲介などに関わる中立組合加盟組織は、依頼を受けた仕事によって他組織に不利益を被る仕事をした場合、その仕事が終わるまでに邪魔や敵対することは一向に構わない。だけど、仕事の完了後や過去に受けた仕事によって損害を受けたとかで終わったことで敵対した場合、中立組合からサービス停止の制裁がある。簡単に言えば、そちらが不利益被る仕事の邪魔をするのは勝手だが、終わった話で関係のない平常時に敵対するな中立組織一同総スカンと言うわけである。


 ちなみに仕事中でも、本元の通称"葬儀屋”はこの国の裏社会統括機関の直系に近い位置にいるから敵対は自殺行為である。



 さて、一ついい報せが入った。先方の組織より協議したいとのことだ。


 それは、夜に娘さんと顔合わせをして、式の流れの


 結果として、娘に手を出さないから守秘義務違反がないかの確認と一応葬儀の立会をさせて欲しいとのことだ。協議して、手打ちにした以上、破ったらもちろん中立組織組合全体を敵に回すことになる。


 聞くことによると車の奴ら他、何グループかの襲撃の機会をうかがっている連中にわたしが中心になって持ちまわりで連携して潰した結果、割りにあわないと踏んだらしい。


 娘さんの身の安全は保証され、何も知らないままこの案件は終わることになるのだ。


 だけど…やはり…血のつながりはあっても、物心つく前に離れ、一度もあったことのない知らない人同然の人の葬儀に参加するのは困惑しかない様子だった。


 組織監視のもと施設から里親に引き取られた。そして、ある日、亡くなったあと一人で葬儀に来るように報せを受けたのだ。


 昨晩に軽く打ち合わせしたときの娘さんの様子は、釈然としない様子で淡々とこちらの話を聞いていた。遺産のこともあるかも知れないが、産みの両親について得る物を期待してきたんだろうけど、こちらとしても教えれることは皆無である。その為、知りたいであろう母親のことすらまったくわからない状況なのだ。あくまでも、知っていることは故人様が表向きは人材派遣会社にいて、かろうじて娘の引き取られた先を知っていて、遺産を相続する条件が葬儀の参加…それだけなのだ。


 娘さんにとってはわけもわからないとしか言えないのでしょう。


 だけど、わたしは故人様が心を殺して娘さんを守る為にギリギリまで関わらなかったこと、自分の死後に身の安全を保証する為に動き、せめて我が子にあげられるものとして遺産を残したこと手腕は脱帽するばかりである。


 なぜ、裏社会に身を落としたかまではさだかではないが、自らの破滅どころ回りを巻き込む害悪でしかないはずが、最期は穏やかかつ身内も息災にやっていけるようにしたのだ。


 娘に罪はない。その上で裏社会との関わりを知らぬ間にたった稀有な話は、初めてだった。


 事前相談の段取り通り、無宗教の1日葬が行われた。娘をこちらで守りやすいように宗教関係者すら排除していた。


 無宗教はどのように告別式を行うのかは当家の自由に決めている。宗教的な慣習のかわりに故人様の思い出話に花を咲かせて偲んだり、ご馳走様を用意してまるでパーティーのようにして笑顔で見送れるようにしていた例がある。


 しかし、今回は一応自由に焼香の準備をしてあるくらいで、時間が来たら火葬場への出棺だけなのだ。


 式の1時間前に先方組織からお目付け役が一人来る。故人様の会社の関係者で来て見届けたいとの名目だ。


 黒縁メガネの中年男性でいかにもよく見るビジネスマンのような風貌。悪く言えば、特徴がなく、道端であっても知らぬ間にすれ違っているだろう。


 その男は軽く娘さんに挨拶をした。実の父について聞かれると淡々と真面目な仕事ぶりで幅広い分野で活躍していた方であったとあたりさわりのない人柄と会社として娘がいることはまったく知らなかったと言われた。 


 花束と枕花一対の注文が入る。枕花は、祭壇の左右に専用の台の上に配置する花飾りだ。基本的に当家が出す物だが、関係の深さを示したかったのでしょう。


 故人様の周りは華やかになった一方で、娘さんの表情は晴れなかった。父自身のことをまったく知らず、知りたかった自分を手放した理由もわからない。わからないづくめで不安に苛まれているのでしょう。


 不安、困惑、苛立ち…他にも思うところがある複雑な感情なのだろう。


 時は流れやがて出棺し、軽く娘さんに会釈をすると男はいなくなった。


 そして、全てが終わった。


 形だけの喪主…葬儀にただよくわからいままいるだけになった。


 彼女は最後まで故人様について、なにも知らず、わからずじまいとなった。今後、知る術も機会もないだろう。残されたのは大金だけだ。


 しかし…それは、故人様の一連のことは願いである。


 彼…いや、彼女の実の両親は彼女のことを愛していたのでしょう。


 彼が大切に持っていた写真…それは…娘にまつわる唯一のもの。


 写真には涙を浮かべながら喜ぶ父と生まれたばかりの我が子を愛おしそうに抱きながら微笑む母が写っていた。


 それは、わたしがひっそりと柩に入れ、故人と共に火葬された。




 

 

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