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これはヒューマンドラマ要素はありません

 まずはこの話のジャンルを確認していただきたい。








 読みましたか?


 あるビルの一室に死体があった。加害者である彼は二ヶ所に電話をかけた。一つは依頼人、二つ目はクリーナーだ。殺し屋が出てくる作品に出てくる事後処理を行う組織だ。クリーナーと名の通り、死体や現場を現状復帰し、何事もなかったように証拠隠滅する。事件が明るみに出ないように隠蔽する為には欠かせない存在だ。


 この国の裏社会で葬儀屋と言われる組織がある。日本で最大手のクリーナーである。実際に葬祭業を行う会社であるが、古くから日本の権力者の汚れ仕事の隠蔽に関わる組織であり、今日においては公的な手続きに則って埋葬することで不都合な事実をなかったこときしてきた。事故、病気、自然死なで殺しではないと公式に記録される。政府との深い関わりにより、行政、司法、法的執行機関、医療機関などの繋がりにより、警察での死亡解剖や死亡診断書などは都合よく作成される。この国は原則火葬である為、再び遺体を解剖されることはない。パソコンデータ上の記録消去や改竄はもちろん、さらに物的証拠も、傘下の火葬場やゴミ処理場などを使いなかったことになる。


 ただここまでやると費用は、下手な殺しでは到底まかなえないレベルになる。よほどの大仕事になる。悪質な業者であるならば単に粗雑に死体を遺棄しかしなかったりする。さらにひどいと、臓器や遺留品を売ったりして、足がつきかねない事をする。


 そういった業者の牽制と秩序を守る為に、フランチャイズのように葬儀屋主催の組合に加盟して傘下になれざ一部システムやサービスを受けれるようになった。

 


 その中の一つである、わたしのいる葬儀会社は一般のお客様の他に特殊なお客様が客層にいる。


 だけど、わたしの部署は式の司会進行し、当家とメインで直接やり取りする葬祭ディレクターな為、仕事内容自体はあまりかわらない。…はずではあった。


 法要準備を終え、本部に用事があって戻る。


「プランナーから組合加盟の会員で火葬式入りました」


 事務に入るとどこかの殺し屋からの依頼が耳にはいる。怖いことをいえば、ターゲットは消されてもわかりにくい立ち位置の人物だからあっさりと処理されたのだろう。例えば、身寄りがない方が民生、つまり行政で葬儀が行われるのと同じだ。


 とはいえ、葬儀自体は一般的なものとは変わらない。まあ、裏方の処理を除けばではあるが…


 決定事項がプランナーから送られ、事務員がファックスを受け取り確認していく。組合とはの説明は一旦置いておこう。



 葬祭ディレクターのまとめ役の主任に今日の報告を終えたら、その上の部署長である係長から声がかかる。


「平原チーフ、明日出棺のお客様の締めの作業終わりに、例のお客様の対応をお願いしたい」


 わたしがやっと終業報告入れて、やれやれと思ったらこれだ。しかも、故人様本人の事前相談の時点でなかなかきつい仕事は確定していた。


 上司にわかりましたと社会人故に答えなければならない。

 明日、そのままこの仕事の担当になるだろう。

 

 末期がんになり、事前相談をしていたとある殺し屋が故人様でありこの件の依頼人である。前金で支払い済みになっている依頼がある。


 その依頼が問題で、娘さんの保護だ。カタギであり、さらにはまだ学生である。


 生前は組織との契約の元、カタギの娘と接触しないかわりに保護する話だったらしい。単純に言えば丁重に扱った人質だった。


 使い物にならなくなるまで働く約束で、組織から保護されていた。引退して娘と暮らすことも考えたらしいが、父である自分も含めて裏社会とは関わらないようにしたかったとのことだ。


 限界まで働き、組織に尽くしたが信用はしてなかったらしい。仕事の報酬は娘の為に残すつもりだったが、死後どうなるかわからない懸念があったとのことだ。


 死後、古巣の組織ではなく、中立組織であるこちらに彼女を守ると共に一般社会に居続けられるように仲介して欲しいと依頼が入った。


 遺産の引き継ぎこそ、裏方の仕事だが、わたしの仕事は彼女の警護をしなければならない。理由として、故人様の過去の仕事や組織の内情などが密かに娘に漏れていないかの懸念と引き継がれる遺産の相続相手がいなければ、組織の元に入る契約になっているからだ。不義ではあるが、咎めるものはおらず、残るのは事情のしらない娘になる。殺して、遺産を組織のものとして知らぬふりを通す可能性がある。


 裏社会は無法者と呼ばれることはあるが、無法者のなりのルールはある。不義は許されないが、一般社会と同じく、力のある者が裏で力を回しても、表で筋通ればよいのだ。


 依頼人は、名うての殺し屋だったらしい。穏当に死ねたのはその抜け目のなさによってなされた。まあ、生前はツテを使って娘に何かあれば不義として糾弾ができたが、自分の死後は他者に委ねなければならなかった。


 さて、私の仕事はあくまでもなにも知らない娘が行方しれずの実の父のささやかな家族葬を行う。つまり彼女に事情を知らせず、事後処理担当に引き継ぐまでワンオペで守らないといけないのだ。


 そもそも、一般の会社で行う家族葬であっても、規模によってはワンオペでやらなければならない。

まさにブラック企業もいいところだ。


 こちらの事情はさておき。なにも知らされずに遠方で疎遠になっているのが親亡くなって呼び出された娘として、どんな気持ちだろうか?


 なにも伝えられず、大金を引き継ぐ。


 親の資格がない自分はどう思われてもかまわないから、何も知らずに日の当たる場所で暮らして欲しい。せめて、何かあったときの為にお金を残した。


 これらの事情なんて、知る由もないのだ…


 娘さんは一体、何を思うだろうか…




 


 



 


 


 


 


 




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