いつもの日々と素材の魔石
八月二十九日、星の日。
魔法使いギルド・ナナクシャール出張所はミノタウロスの討伐完了を宣言した。ギルドロビーに飾られていた巨大な角を目にした冒険者達は、半月もまともに稼げなかった鬱憤を晴らそうと酒を抜いて次々と森へ入って行った。
「ミノタウロスの角って大っきいんですね」
「持って帰るの大変だったんじゃないですか?」
「助っ人さんがスゲー怪力だったんだ」
誰も彼もが初めて見るミノタウロスの角に興味を示し、両腕を回しても手がつかないくらい太い角を叩いたり持ち上げようとする。
「そこの新入り、それに触るんやない! 傷つけよったら賠償請求したるで!」
そのたびにアレックスが叱りつけるので、注文品の受け渡しに来たタラが不快そうに眉をしかめていた。
「今回の注文品は多いのね」
「今日から新しいパーティーがいくつも島にやってきましたから。食材は多めに注文したつもりだったけど、不足するかもしれません」
注文品を載せた船で新しい冒険者達も島にやってきた。四パーティーの三十一人の入島手続きにギルド職員は総出である。
「コズエさんたちは森に入らないんですか? もしオークの討伐をするなら、肉を余分に持ち帰ってもらえませんか。予定していたよりも冒険者の数が多いので肉の在庫が心配なんです」
「んー、私たちオークは狙わないからなぁ」
コズエたちはシュウの魔武具の素材のためにオーガかヘルハウンドを狙う予定だ。どちらも可食部位は無い。町へ帰る際に遭遇すれば狩るだろうが、わざわざ狙うつもりはないと言うと、タラは残念そうに肩を落とした。
「ゴメンね、私たちあんまりオーク肉は好きじゃないんだ」
「あんなに美味しい肉なのに?」
あなた達の好みって変わっているのね、とタラは呆れたように肩をすくめた。
+
「オーク肉は、なぁ?」
「私は魔猪肉の方がいいです」
「角ウサギも淡白で好きですけど」
「暴牛のハンバーグがまた食いたい」
夕食の席で、昼間のタラとの会話を話して聞かせた皆の反応はコズエの予想通りだった。
「王都の食肉業界はオーク一強だったなぁ」
王都ではサハギン肉も評価は高いが、庶民も貴族も食卓にオーク肉さえ乗せれば満足していた。人気が高く高値がつくため随分稼がせて貰ったが、コズエたちは積極的にオーク肉を食べたことはない。
「不味くはないが、気分的にオークは避けたくならないか?」
「なりますね」
「あれ、肉食の魔物だもんなー」
魔物の大半は肉食だ。自分達よりも弱い魔物を襲い、冒険者が打ち捨てた死肉を食い、当然冒険者の死体も食う。それを知っていてもオーク肉を食べたいかと問われると、NOとしか答えられない。魔猪も角ウサギも草原モグラも暴牛も、基本は草食だ。
「ゴブリンとか大蜘蛛とかを食べてるオークは避けたいですよね」
「ワームと死肉を奪い合ってるの見たらなー、ちょっと遠慮してーよ」
それにオークは人型の魔物だ。たとえ見た目は二足歩行の豚だとしても、武器を持ち戦う人型の魔物は食べる気になれない。
この世界に転移して初めて、自分達の手で動物を殺して糧としてきたコウメイたちは、選択の余地がなければ魔物でも雑草でも食ってきたし、これからもそうするだろう。だが選べるならば、オークよりは魔猪を選びたかった。
「まあ、俺達は食わなくても金華亭が欲しいって言うんだ、帰りに遭遇したら狩ることにしようぜ」
ちなみにこの夜のメニューは、エトクル貝の香草焼きと蒸し野菜サラダ、燻製魔猪肉入りのスープと丸芋入りのパンである。
食後はいつものミーティングだ。テーブルを片付け、島の地図を広げた周りに集まって翌日の討伐計画を立てる。
「半月前とはだいぶ生息地や縄張りに変化があるみたいだが、ヘルハウンドはもともと行動範囲が広くて狙える魔物じゃない。巣の位置がハッキリしているオーガを目指すべきだ」
アレックスに確かめたところ、この島でヘルハウンドと同等クラスの魔石を持つ魔物はオーガだそうだ。ヘルハウンドの広い縄張りを探し歩くよりも、巣を強襲できるオーガの方が確実性は高いと狙いを変えたのだが。
「オーガは集団戦が確実だからなぁ」
ミノタウロスほどではないがそれなりに巨体で、棍棒のような武器を使い、仲間と連携をとれる頭脳を持つ人型のオーガは、大変やりにくい相手だ。
「角が弱点なんですけど、なかなか狙わせてくれないですもんね」
「頭いい奴は狙わせるフリして罠にかけるんだよなー」
額にある小さな一角はオーガの弱点だ。どういうわけか額の角を折ればオーガは弱体化するのだが、簡単には折らせない。
「巣の位置は二ヵ所ですね。東寄りの巣の方が規模が小さいんですよね」
「狙うならそっちだろうな」
「途中に人食蛙の目撃情報がある、できるだけ回避するルートで行こうぜ」
こちらの世界では巨大な人食蛙は珍味としてそれなりの需要があるらしいが。
「食いたくねぇし、食われたくねぇな」
「ですね」
+++
その時々に応じて武器を変えてきたサツキだが、ミノタウロス戦以降は自動弓に戻していた。補充の矢を取り寄せるのに時間はかかるが、パーティーでの自分の役割を考えると短剣やメイスよりも弓が相応しいと思っていた。
「コズエちゃん、一度戻って!」
二体のオーガに挟まれたコズエへの援護に矢を放つ。頭を狙った矢は苦もなく避けられたが、その隙にコズエは安全域まで後退できた。
「落とし穴っ」
コズエはオーガたちを土魔法で穴に落とし転ばせた。オーガが起き上がる前にヒロによって角を折られた。角を失ったオーガの動きは鈍くなるが、棍棒を振り下ろすその力は弱体化はしていない。
「はっ!」
身をかがめて棍棒を避けたヒロは、そのままオーガの懐に入り脇腹に剣を突き刺した。ぐっと斜めに刃を押し当て、そのまま胴体を押し切ろうと体重をかける。剣先が骨に当たり止まった。ヒロはそのまま反対側の脇腹へと剣を引きながらすり抜けた。
血で汚れた剣をそのままに、コズエが牽制するもう一体へと向かう。鈍化したオーガの攻撃を避けるのはそれほど難しくないが、重い一撃を槍で逸らし続けるのはキツイだろう。
「コズエ、左へ!」
オーガとの間に割り込んだヒロは棍棒を持つ腕に斬りかかった。硬い表皮を血に汚れた剣が滑った。オーガの手がヒロの頭を掴みかかる。
トス、トス、トス!
連続して聞こえた音と同時にオーガの動きが一瞬止まった。一秒あれば体勢は変えられる。ヒロは身体を捻ってオーガの背後へ回り込み、矢の刺さった背中に剣先ごと体当たりしたのだった。
「怪我はありませんか?」
手や服が血で汚れているヒロを心配したサツキが治療薬を手に寄ってくる。
「大丈夫だ、これはオーガの血だから」
「よかった。コズエちゃんは? 手に力が入ってないみたいだけど、どこか痛めてるんじゃない?」
「これは力を入れて握ってた反動みたいなもので、心配ないよ」
コズエたちがオーガの巣を発見した時、残っていたのは五体だった。見張りの二体をコズエたち三人が受け持ち、巣の中にいる三体をコウメイたちが片付ける役割を決めた。見張りをおびき寄せ巣から遠ざける事に成功し、なんとか屠ることができた。
「コウメイさんたち、大丈夫かな?」
「ミノタウロスを倒した人たちだ、オーガに苦戦するとは思えないな」
「魔石をとって、始末をしましょう」
血の臭いで魔物が集まってくる前に片付けてしまおうと、サツキの声でそれぞれが動き出す。ヒロとサツキがオーガの額を割って魔石を取り出し、コズエは墓穴を掘った。返り血や剣についた血も墓穴へと洗い流して埋め、三人は巣の方向へと慎重に足をすすめた。
オーガの巣の入り口はキレイなものだった。戦闘の痕跡もなければ、血の臭いもしない。岩を掘った暗い穴から、かすかに硬いものがぶつかるような音が聞こえた。剣を握りなおし、二人に少し離れるようにと手振りで伝え、ヒロは壁に隠れるように身を寄せた。
カチャカチャ、という金属音と、柔らかい靴底が石を踏む音。
「お、外のヤツ終わったのか」
最初に出てきたコウメイが抱えていたのは魔石ではなく数本の剣だった。
「それ、錆びてますけど、何処で拾ったんですか?」
「巣の奥に溜め込まれてたんだよ」
「オーガは中で始末した。魔石、預かっててくれ」
続いて出てきたアキラがヒロの手に魔石を渡した。拳サイズの魔石が四個と言うことは、予定より一体多くオーガがいたはずだが、コウメイたちには苦戦したような気配はなかった。
「アキラさん、戻るんですか?」
「片付けてくるだけだ」
硬い表情で巣の奥へと戻っていくアキラを見送ったコウメイは、黒く染みのついた剣を地面に降ろした。目を伏せ、丁寧に汚れを落としながら並べてゆく。
「まだ中にいくつもあるぜ。たぶん森で魔物にやられた冒険者たちのだと思う」
「それは……」
コウメイが運んできた剣は七本あった。剣鞘がそろっているものもあるが、鞘だけのものや抜き身で折れたものもある。どれもそれほど新しいものではない。
「その剣はどうするんですか?」
「町に持って帰るよ。アレックスに渡して、持ち主の家族に渡るならそのほうがいいだろ」
コズエとサツキも手伝って古い汚れを落としてゆく。黒い染みは元は血だったのだろう、変色しこびりついていて布でこすってもなかなか落ちない。
「疾風さんたちの剣は、回収できたんですか?」
「どうだろうな。戦斧たちがいくつか持ち帰ったらしいが」
パーティーが全滅した場合は、形見は故郷の地へと送り届けると聞いている。
「魔物の巣から剣を回収するのも辛いですけど、それを受け取る家族はもっと辛いですね」
「でも、何も残っていないよりは……私は、何か欲しいから、できるだけキレイにして届けてあげたいです」
サツキは兄の武器と同じ脇差を手に取り、錆の浮いた刀身をなでながら目を伏せた。
「これで全部だ」
「結構古いのもあるから、持ち主が判明しねーかもなぁ」
アキラとシュウがそれぞれに剣を持って巣から出てきた。オーガの巣から持ち出された剣は全部で二十三あった。簡単に汚れを落としてまとめて布で包み、コウメイが背負った。
「ゴブリンとかオークとかが棍棒じゃなくて剣を持っていることがあったのは、冒険者から奪った武器を使ってたんですね」
「だろうな。魔物に武器を作る技術はないと思いたいよ」
他のオーガたちが戻ってくる前にと、六人は急いで巣を離れた。
+++
「ご苦労やったなぁ。そこに並べて置いてくれるか? ロビンを呼びに行ってもろたから、くるまでに魔石の方見よか」
ギルドの広くはないロビーの床にコウメイたちが持ち帰った剣が並べられた。どの鞘や剣にも持ち主を特定できる紋や名は彫られていなかったが、武器は武器屋に聞けば分かると島唯一の鍛冶師を呼ぶことになった。
ヒロがカウンターに並べたオーガの魔石は、色の濃淡はあってもどれも女性の握り拳ほどの大きさだった。
「こっちの二つは五百ダル、これが六百五十ダルで、この二つが八百ダルやな。そんでこの一番色の濃いのが八百八十ダルや」
「値段はやはり魔力の含有量か?」
「せや。八百八十ダルんが一番重いねん」
「じゃあ俺の素材にはこの濃いヤツがいいのか」
「ワシの見立てやと、できたらもうちょっと濃いのがええんやけど」
むーん、と唸ったシュウは、一番濃い魔石を魔武具素材としてとりあえず確保し、帰り道に遭遇した魔物の魔石もあわせて他の五つを売却する事にした。
「シュウにはヘルハウンドの魔石の方がぴったりなんやけどな」
「そう言われても、そんなに簡単に遭遇できねーんだよ」
「呼び玉使うてみるか?」
疾風たちがミノタウロスを誘い出すときに使ったアイテム名を聞き、シュウの耳がピクリと跳ねた。
「それ、魔物の種類を選んで呼べるのか?」
「そない便利な事できるわけないわ」
「ふざけんなよっ」
虫獣魔問わずに呼び寄せるような物騒なアイテムを勧めるな。剣を並べていたコウメイたちも、査定票を確認していたコズエも、思わずアレックスを睨みつけていた。
「……アレックスさん、悪趣味な冗談は時と場合を選んでくださいね?」
コズエとサツキから怒気を向けられたアレックスは、助けを求めるように辺りを見回して、入り口で鍛冶師を見つけ歓喜した。
「待っとったんやでロビン!」
「ああ?」
「さっそく頼むわ」
カウンターを飛び出てきたアレックスに並べられた剣の前に押し出されたロビンは、戸惑いつつも検分を始めた。
「こいつとこいつは汎用品で、ちょっとわからねぇな」
よく似た片手剣を選び出して除けた。脇差を手に取り柄糸を確かめてアレックスに渡す。
「この刀は五年前の冬に島に来ていた剣士のものだ。赤い髪の、細身のヤツだったと思う」
「五年前というと……あったわ、ニーベルメアのオグデンやな」
「この短剣は去年の春にいた丸いヤツのだ、刀身の彫りは覚えてる。こっちの柄の紋様は一昨年の夏に全滅した奴らのものだな、そっちにあるやつもだ、共通した模様が入ってる」
武器の事は覚えていてもその持ち主のことは記憶にないらしい。ロビンが記憶にある武器の特徴から持ち主を思い出し、アレックスが記録簿から当てはまる冒険者を特定してゆく。
「この長剣の柄頭はアイツだ、森みてぇな色の目のでかいヤツ」
「髪の色は覚えてへんか?」
「やたら明るかったのは覚えているが」
「金髪で濃い緑の目の長剣使いは、クリフやな。そいつは生きとるで」
何人もの亡くなった冒険者の名前を聞いて塞ぎ俯いて見守っていたコウメイたちは、アレックスのその言葉に弾かれるように顔をあげた。
「生きてんのか?」
「去年の秋の初めに島を出て行った記録があるから間違いあらへん」
他にも二つの鞘の持ち主は生存していることが分かった。数年前の記録なので今はどうかわからないが、島を生きて出て行ったのは間違いない。
「よかったです」
持ち帰ったのが死者の形見だけでなかったと知り、コウメイたちは肩が軽くなったような気がした。
+++
「来たぜ、ヘルハウンドだ」
休養日の翌日、獲物を求めて移動していたゴブリンの集団を屠った後の魔石を取り出すわずかな時間に大型の獣が襲い掛かってきた。
「銀狼も連れてやがる」
「鼻のいい魔物は早いな」
ヘルハウンドはおそらく雌だ。まるで女王の護衛のように取り囲む銀狼は五匹。
ゴブリンの死骸を放置して新たな魔物に向った。シュウは脚力を活かしヘルハウンドの背後へと跳び越えた。
「よそ見するなよ」
シュウの軌道を追って顔をあげたヘルハウンドの喉をコウメイの剣が斬り払う。
銀狼が彼らの女王を助けようとコウメイの背に跳びかかろうとするが、ヒロとコズエによって次々と叩き落されていった。
「火を吐くぞっ」
チリチリとヘルハウンドの毛皮から火の粉が散った。体内の魔素を凝縮し吐き出そうと口をあける。ヘルハウンドの正面で牽制を続けていたコウメイは、炎を吐く寸前に身をかがめ横に跳び逃げた。
「水膜!」
コウメイの背後で隠れるように体勢を整えていたアキラが、ヘルハウンドの真正面で薄くて強固な水の幕を張っていた。
魔法の水膜で跳ね返された炎がヘルハウンドを包み込む。
「とおっ」
自らの炎に襲われ狼狽した女王の後ろ首を、シュウが一刀で斬り落としていた。
血飛沫を撒き散らしながら地を転がるヘルハウンドの頭。
棒のように固まったまま巨体を支える前足と、吹き出る血。
絶命と同時にヘルハウンドの炎が消えた。
「シュウ、やりすぎだ」
「……悪い、ここまでスッパリ切れると思わなかったんだよー」
正面にいて血の雨から逃れ損ねたアキラが責めるようにシュウを睨んだ。熊獣人に叩き込まれた戦い方は予想以上に威力があるのだとシュウ自身も驚いていた。以前は三人がかりで何度も切りかかりやっと屠っていた魔物が、あまりにも簡単に絶命する瞬間を見たコズエたちも言葉がなかった。
「へー、炎が焼いた部分が金色になってるぜ」
「燃えたというよりも、変色したという感じだな。銀と金が混じった毛皮か……良い値がつきそうじゃねぇか?」
五匹の銀狼もヒロとコウメイによって既に死骸となり転がっていた。ゴブリンも含めた魔石回収はヒロとサツキが、銀狼の毛皮を剥ぐ作業はコウメイとシュウが、死骸の始末はコズエとアキラが、それぞれ手早く作業を進めていった。
「ヘルハウンドの魔石、この前のオーガのよりも色が濃くないですか?」
「そうか? 少し小ぶりな感じはするけど」
水魔法のシャワーで頭からかぶった血を洗い流していたアキラが、シュウの手にある魔石を覗き込んで目を細めた。
「確かに少し小さいが、含有量は高いようだ。魔武具の素材には魔力量の高いほうが向いているはずだ。アレックスにも確認するが、多分この魔石で大丈夫だろう」
「よっしゃーっ」
手の平に乗せたヘルハウンドの魔石の魔力を測ったアキラがそう言うと、シュウが破顔し歓声をあげた。製作費用がなんとか都合できても、今度は材料がそろわないからとお預けの連続だったのだ、飛び上がって喜ぶシュウの気持ちも分かる。
自分の拳ほどの大きさの魔石を見ながらコズエはどんな魔武具になるのだろうかと想像した。
「ミシェルさんはどんな物を作るんだろうね。これだけ大きな魔石だと、アキラさんみたいなピアスじゃなさそうだし」
「コズエちゃんだったらこの魔石で何を作るの?」
手広くハンクラを楽しんでいたコズエから、ビーズアクセサリーを貰ったこともあるサツキは、コズエならどんな物を作るだろうかと尋ねていた。
「私は魔武具とかは作れないよ。そうだなぁ、これだけ大きな天然石だったら安っぽい装飾はつりあわないだろうなぁ。ペンダントにしてすごく豪華に仕立てあげるかな」
「豪華?」
「うん、金とかで縁を飾って重々しい感じに。彫金とかやったことないけど、アンティークっぽくゴテゴテな感じにすると魔石の大きさに負けないかなーって」
「嫌だぜそんなの」
シュウがそんな成金趣味な装飾品は絶対にお断りだというように呻いた。
「でも人族に見えるようにする魔武具だから、多分身につける物になるんじゃないですか? このサイズの魔石を怪しくないアクセサリーに仕立てようとすると、豪華絢爛な方向になるような気がするんだけどなぁ」
シュウは血の色に炎が散ったような色彩の魔石を嫌そうに見た。装飾品に関する知識のないシュウにはこの魔石がどのように加工されるのか全く想像ができない。コウメイは怖ろしげに顔を歪めたシュウに、アキラの耳飾を指差して宥めた。
「心配すんなって。ミシェルさんは趣味がいいから、シュウに似合う何かを作ってくれると思うぜ」
「何かって、何だよ」
「……冠、とか?」
「ぜってー嫌だっ」
そんな物を被っていたらケモ耳と尻尾よりも目立つじゃないか。
シュウは町に戻りアレックスの「ベルトになるて聞いてるで。多少派手でも上着で隠したらええんやない?」というアドバイスを聞くまで、真剣に魔武具を諦める事を検討していたのだった。




